【50代からでも間に合う】民間介護保険|加入のタイミング

公的介護保険・受給者数の割合

公的介護保険を補完する役割を持つ民間介護保険(以下、介護保険)。将来の介護にかかるお金が心配な方は、加入しておいた方が安心です。

しかし、悩ましいのが加入の時期。若く健康な内から加入しておけば、保険料も割安ですし、何か病気にかかって入りたいときに入れないリスクも回避できます。

その一方で、保険料負担が長期にわたりますし、他の保険ニーズとの優先順位やバランスも考えなければなりません。

今回は、介護保険の加入の時期の考え方と早く加入するメリット・デメリットを考えてみました。

要介護リスクが高まるのは80代以降

介護保険に限らず、保険商品のセオリーは、「必要な時(保険期間)に必要な分(保障額)だけ加入する」ことです。

なぜなら、例えば、一家の大黒柱が、亡くなったり、病気や介護状態になったりして、経済的に困窮する事態を心配するあまり、死亡保障や医療保障を過大にかけてしまうと、保険料で家計を圧迫しかねないからです。

要介護リスクが高まるのは80代以降

万が一の状態になる可能性が、現時点でどれくらいあるかを考えることが重要です。

そして介護保険であれば、「要介護状態のリスクがいつから高まるか?」を知っておく必要があります。

厚生労働省のデータによると、65歳以上の公的介護保険の受給者数の割合は、男女とも80歳代前半から増え、それ以降は年齢が高くなるにつれて右肩上がりに上昇します(図表参照)。

公的介護保険・受給者数の割合

もちろん、相対的に少ないと言っても、早い時期から要介護状態になり、介護にお金がかかるケースも当然あるでしょう。

ただし、このデータを見る限り、一般的に60歳代後半から70歳代にかけては、まだ要介護のリスクが高くないと言えます。

民間介護保険の加入は50歳台がピーク

では実際、介護保険に加入している人は、いつ加入しているのでしょうか?

生命保険文化センターが実施した平成30年度の調査によると、介護保険・介護特約の世帯加入率を世帯主年齢別にみると、「50~54歳」(20.6%)、「55歳~59歳」(20.9%)と2割を超えピークを迎えています。

介護の備えに対する意識の変化

前述の生命保険文化センターの前回調査(平成27年)と比べると、介護への備えに対する考え方の3つの変化が読み取れます。

  • 前回29歳以下の加入率が23.4%だったのに対して、今回12.2%と大幅に減少。30~40歳代の加入率が低下している
  • 加入率のピークが前回「45~49歳」(24.3%)だったのに対して、今回50歳代にシフトした。
  • 前回と今回で「85~89歳」と「90歳以上」の加入率がほぼ逆転している。

同調査で、介護保険等の加入率自体は、14.1%で前回調査の15.3%とほぼ変わっていません。しかし、介護に対する意識の変化に応じて、介護保険の加入意向が高まる年代も変化しているようです。

前述の調査では、最近は、40歳台以下など若い世代の加入割合が低く、50歳台で最も高いということ。

また、「人生100年時代」を反映して、90歳以上も加入を検討する人が増えているということが伺えます。

そして、若い世代の加入割合が低い要因としては、保険料負担も大きいことが挙げられるでしょう。

また、同調査の介護保険等の世帯加入率を世帯年収別にみると、加入率は年収が高くなるにつれ上昇し、「1,000万円以上」が22.4%と最も高くなっているからです。

実際に、FPとして介護費用や老後の保障などに関するご相談を受けていても、介護保険を検討 or 加入される方は、ディンクスカップルや子どもの教育費負担がある程度終わった50代後半~60歳台を中心に、男性よりも長生きする可能性の高い女性が多い印象を受けます。

20代~30代の加入はおトク?早期加入のメリット・デメリット

前述のデータなどから、若い世代が介護保険に加入することはFPとしてお勧めをしていません。

20~30代は、これからキャリアアップ、結婚、出産、育児、子どもの教育、マイホーム購入等々。さまざまなライフイベントをクリアしていかなければならない年代であり、介護よりも働けなくなるリスクや死亡、病気、ケガなどのリスクの方が優先順位は高いためです。

それでも、早く加入するメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

早期加入のメリット

公的介護保険対象外の年代や原因でも、介護への備えを確保できる
公的介護保険の加入は40歳からなので、公的介護保険が適用されない40歳未満でも介護リスクに備えることができます。※40歳以上であっても、65歳未満の第二号被保険者は、特定疾病が原因でなければ公的介護保険の対象にならない。交通事故などで要介護状態になった場合にも備えられる。
保険料が割安である
相対的に若い方が介護リスクは低いので、毎月の保険料が安く抑えられる。
病気で民間介護保険に加入できなくなる前に介護保障を準備しておける
介護保険加入の際には健康状況などの告知が必要で、加入前に持病などが発症していると加入できない可能性もある。

このようなメリットの反面、もちろんデメリットもあります。

若いうちに介護保険に加入するデメリットとしては、以下の3つが考えられます。

デメリットと考えられること

保険料負担がかかる
介護保障が必要になる時期まで、長期にわたって保険料負担が続くことになります。
インフレに対応できない
民間介護保険は「現金給付」が原則のため、将来インフレが起きて物価が上昇した場合、加入時の保険金額では必要な介護費用が不足する可能性があります。
医療・介護の環境が変化する可能性がある
保険ニーズは、医療や介護の環境や状況によって変化するため、将来的にその保障ではその時点の介護に対応できない可能性もあります。

若いうちに加入するならどんな商品が良いか?

そこで、若いうちに介護保険に加入するのであれば、「有期型(定期型)」を選択し、保険料負担を抑えつつ、更新時や状況が変化する都度、見直しをしていくのが良いでしょう。

とにかく、死亡保険や医療保険などに比べると、介護保険はまだまだ発展途上で、新しい保障や商品が出てくる可能性の高い分野です。

近い将来、介護保障が必要になりそうな60代後半などを除き、見直しのしやすさという観点からも保険を選ぶことが大切だと思います。

まとめ

若い世代は貯蓄や投資で資産全体をふやすことや、他に優先すべき保障ニーズがあります。

介護リスクへの意識が高まり、まだ加入しやすい60代以降になったら介護保険に加入するという考え方でも、決して遅くはありません。

公的介護保険や公的医療保険の改正などで、医療や介護に対する自己負担が増え、民間保険に対するニーズも高まってきています。

保険を選ぶ際には、今後も頻繁に改正が行われる可能性を考え、それに対応する保険商品も見直しが必要だということをきちんと理解しておきましょう。

イラスト:上原ゆかり

この記事の制作者

黒田 尚子

著者:黒田 尚子(ファイナンシャル・プランナー)

CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1998年FPとして独立。2009年末に乳がんに告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。著書に「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)などがある。

合わせて読みたい関連記事

この記事と関連するQ&A

すべてのQ&Aを見る

老人ホーム・介護施設を探す

希望エリアをクリックしてみてね!

お役立ちガイド

介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、その他介護施設や老人ホームなど、高齢者向けの施設・住宅情報を日本全国で延べ57,000件以上掲載するLIFULL 介護(ライフル介護)。メールや電話でお問い合わせができます(無料)。介護施設選びに役立つマニュアルや介護保険の解説など、介護の必要なご家族を抱えた方を応援する各種情報も満載です。
※HOME’S介護は、2017年4月1日にLIFULL 介護に名称変更しました。

情報セキュリティマネジメントシステム 株式会社LIFULL seniorは、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27001」および国内規格「JIS Q 27001」の認証を取得しています。