【実例を見る】民間介護保険|保険料と保障内容をタイプ別に解説
一般的に保険商品は、生命保険のベースとなる「主契約」と主契約にプラスして保障内容を充実させるオプション的な「特約」で構成されています。
民間介護保険(以下、「介護保険」)も、主契約もしくは特約として契約することができ、その保障内容や保険料はさまざまです。
今回は、タイプ別に具体的な介護保険の保障内容と保険料の例をみてみたいと思います。
具体的な保険料と保障内容
ケース1:所定の要介護状態である限り介護年金を受け取れるタイプ(解約返戻金・死亡保障あり、介護一時金併用、終身型)
契約 | 主契約 |
---|---|
保険期間 | 終身 |
払込期間 | 終身(短期の選択も可) |
公的介護保険連動 | 要介護2以上 |
保障内容 | 終身 |
介護年金の受取期間 |
・介護年金:60万円 |
支払条件 |
公的介護保険で定める要介護2以上となった場合 |
保険料払込免除 | ・高度障害状態 ・不慮の事故による所定の身体障害 ・介護一時金の支払事由に該当した場合 |
解約返戻金 | あり |
保険料例 (保険料払込期間65歳まで) |
40歳男性:13,500円、40歳女性:15,420円 50歳男性:23,100円、50歳女性:26,220円 55歳男性:34,680円、55歳女性:39,660円 |
- 保険料等は、2018年12月20日現在
ケース1は、主契約で、所定の要介護状態(要介護2以上)となった場合、介護年金(1回目)と介護一時金が受け取れ、要介護状態が継続しているとき、介護年金(2回目)がそれぞれ受け取れる商品です。
介護年金を重視しながら、初回の年金と同時に一時金も支払われますので、何かとおカネがかかる介護のスタート時期に備えることができます。
また、死亡給付金があるため、万が一の死亡保障を確保できますし、介護の必要がなくなったなど契約を解約した場合でも、所定の解約返戻金が受け取れますので、老後資金の不足分を補うことも可能です。
ただし、保障が手厚くなっている分、保険料は安くありません。
上記の契約例の場合、介護保障のニーズが高くなる50代後半ともなれば、とくに女性は月額保険料約4万円もの負担がかかることに。
掛け捨てでないとはいえ、何かとおカネがかかる時期に、家計への影響は大きいと言えるでしょう。
ケース2:所定の要介護状態である限り介護年金を受け取れるタイプ(解約返戻金なし、終身型)
契約 | 主契約 |
---|---|
保険期間 | 終身 |
払込期間 | 終身(短期の選択も可) |
公的介護保険連動 | 要介護1以上 |
保障内容 | ・基準介護年金額:60万円 ・年金額は、要介護度に応じて変動する 要介護5:基準介護年金額、要介護4:基準介護年金額×5/6、 要介護3:基準介護年金額×4/6、要介護2:基準介護年金額×3/6、 要介護1:基準介護年金額×2/6 ・死亡給付金:60万円 |
介護年金の受取期間 | 終身 |
支払条件 | 公的介護保険で定める要介護1以上となった場合 |
保険料払込免除 | ・高度障害状態 ・不慮の事故による所定の身体障害 ・要介護1以上 |
解約返戻金 | なし |
保険料例(保険料払込期間65歳まで) | 40歳男性:4,038円、40歳女性:6,546円 50歳男性:5,310円、50歳女性:9,156円 60歳男性:8,274円、60歳女性:14,772円 |
- 保険料等は、2018年12月20日現在
ケース2は、ケース1と同じく主契約で、所定の要介護状態(要介護1以上)になった場合、要介護度に応じた介護年金を受け取れる商品です。
支払条件は、ケース1のような公的介護保険連動型ですが、「要介護1以上」とハードルが低くなっている点や、受け取れる介護年金の額も、要介護度に応じて変動する点などが特徴的といえます。
介護保険の給付条件については、「要介護2以上」とする商品が多いなか、最近は、「要介護1以上」など、要件を緩和し、差別化を図る動きも目立っています。
また、介護状態が重症化すれば、住宅のリフォーム費用や介護施設への入居費用など大きな費用がかかる可能性も高くなりますので、要介護度に応じて年金額が変動するのは、合理的です。
ケース3:特約で、介護一時金を受け取れるタイプ
契約 | 特約 |
---|---|
保険期間 | 終身 |
払込期間 | 終身(短期の選択も可) |
公的介護保険連動 | 要介護1以上 |
保障内容 | ・介護一時金:100万円(1回のみ、年金での受取り選択可) |
介護年金の受取期間 | 終身 |
支払条件 | ・公的介護保険で定める要介護1以上となった場合 ・満65歳未満の被保険者が所定の要介護状態に該当し、 その状態が180日以上継続した場合 ・所定の高度障害状態に該当した場合 |
保険料払込免除 | ・医療保険に付加する場合は、所定の高度障害状態 |
解約返戻金 | なし |
保険料例(終身払い) | 30歳男性:670円、30歳女性:760円 40歳男性:920円、40歳女性:1,040円 50歳男性:1,380円、50歳女性:1,570円 |
- 保険料等は、2018年12月20日現在
ケース3は、特約として、同社の提供する終身保険や医療保険に付加するタイプです。
所定の要介護状態(要介護1以上)になった場合、まとまった介護一時金(10~500万円)を受け取ることが可能です。
介護一時金の請求時に年金(確定年金)での受取りも選択することができますので、ニーズに応じて使い分けられます。
また、保険料の払込免除は、所定の高度障害状態や不慮の事故による所定の身体障害のほか、特定疾病(悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中)で、診断もしくは所定の状態が一定期間継続した場合に免除される特約も付加できます。
重篤な病気になると、健康な時と同じように保険に加入できない上、医療費に加えて保険料支払いも大変です。
実際に病気になった方からも「保険料免除特約を付けておいて良かった」という声は良く聞かれます。
保険料は、介護年金が受け取れるタイプに比べて割安ですし、医療保険や終身保険なども併せて必要な方は、それぞれの保険に加入するよりも割安に保障を確保できます。
その一方で、特約ですので、主契約となる保険商品の保険料も別途必要になるほか、将来的に介護保障のみ必要になったとしても、主契約を解約すると、特約も消滅してしまうなど、見直しの柔軟性に欠ける点も否めません。
関連記事【介護負担を減らす】民間介護保険加入のメリットと注意したいポイント
保険料を安く抑える方法
平均寿命の延びなどによって、2018年4月に標準生命表が11年ぶりに改定され、予定死亡率(保険料や責任準備金の計算に使用する死亡率)も引き下げられました。
これによって、掛け捨ての定期保険などの保険料は大幅に安くなっていますが、医療保険やがん保険、介護保険などの「長生きリスク」に対応した保険商品は、値上げの傾向が強くなっています。
ただし、保険会社によって、販売戦略的に、保険料を据置きあるいは値下げするなど、値上げと値下げが混在しているのが現状です。
また、このタイミングで、新商品や保障内容を改定するなどして、消費者に保険料アップをあまり感じさせないようにしている商品も見受けられます。
そこで、介護保障を準備したいけれども、できるだけ保険料を抑えたい場合、①保険会社や商品を選ぶ、②保険料の払込み方法を工夫する、③介護保険以外の保険商品で介護保障を確保する、という3つの方法が考えられます。
1.保険会社や商品を選ぶ
前掲の通り、介護保険は保険会社や商品によってさまざまです。保険料を抑えたいのであれば、同じような保障内容の商品を比較して、より割安な方を選ぶことです。
また、同じ保険会社の商品でも、「終身型」ではなく「定期型」、「年金型」ではなく「一時金型」、「返戻金あり」ではなく「返戻金なし」を選ぶなど、保険料重視の商品を選べば良いでしょう。
2.保険料の払込み方法を工夫する
保険料の払込み方法は、60歳満了、65歳満了などの「有期払い」よりも、ずっと払い続ける「終身払い」の方が毎月の保険料負担は軽くなります。
一方で、保険料総額を抑えたいのであれば、「有期払い」や「年払い」など、まとめて保険料を払う方がオトクです。それぞれニーズに合わせて払込み方法を選びましょう。
3.介護保険以外の保険商品で介護保障を確保する
介護保障は、介護保険以外でも備えることができます。
例えば、ご夫婦の場合、一般的に、妻の方が夫よりも年下で長生きですので、夫の死亡保障を多めに準備しておき、夫死亡後は、その死亡保険金で妻の老後資金や介護資金に充当する方法があります。
既契約の保険商品で、介護保障を代替できないか検討してみましょう。
自分に合った保険を見極める
介護保険に関わらず、日本では生命保険は「終身型」が主流ではありますが、公的医療制度や公的介護制度などは改正も多く、医療や介護環境が大きく変化する可能性もあります。
介護保険など、いわゆる第三分野商品は「古いタイプの保障でイザというときに対応できなかった」ということのないように定期的な見直しも必要です。
とくに最近の介護保険は、給付条件が緩和した商品や、認知症など対象を絞った商品、シンプルな保障設計で保険料を抑えた商品など、多様化してきています。
関連記事【自分に合うタイプが分かる】民間介護保険の種類
この記事の制作者
著者:黒田 尚子(ファイナンシャル・プランナー)
CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1998年FPとして独立。2009年末に乳がんに告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。著書に「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)などがある。