【老後のお金に備える】高齢世帯の家計見直し術

定年後の期間は確実に延びています。ひと昔前の老後の資金設計は、既に通用しなくなりました。

長寿により、高齢者の中には資金が底を突き困窮するケースも増えているようです。老後を安心して過ごすためには、収入と支出のバランスを考えて生活していくことが何より大切です。

今回の記事では、豊かな老後を過ごすための、家計見直し術をご紹介していきます。

高齢者が負担に感じている支出ベスト5

高齢者世帯が家計管理をする中で、負担に感じている支出はいったい何でしょうか。内閣府が調査した「令和元年 高齢者の経済生活に関する調査結果」で確認してみましょう。

それによると、1番多かったのは「食費(59.4%)」 、2番目に多かったのが「光熱水費、保健・医療関係の費用(33.1%)」。

3番目が「交通費、自動車等関係の費用(25.7%)」、4番目は「住居費(20%)」、5番目は「趣味やレジャーの費用(19.1%)」と続いていました。

負担を軽減するためには、家計管理を徹底することはもちろんですが、支出を抑えるために節約術も取り入れましょう。
 

高齢者世帯の生活費の目安は「現役時代の7割」

老後の生活費や現役時代の約7割

高齢者世帯の支出は、現役世帯の支出と比べて、減っていくのが一般的です。

総務省の家計調査によると、勤労者世帯の1ヶ月当たりの平均支出額(二人以上の世帯)が30万5,811円 あるのに対し、夫婦高齢者無職世帯の支出額は22万4,390円です。

両者を比較すると、高齢者世帯は現役世帯の約7割の生活費で暮らしているということになります。

老後に生活資金が足りなくなる方は、現役時代の金銭感覚を引きずってしまっている人が多いように感じます。

今は現役で、これから定年を迎えようとしている方は、「現役時代の消費支出の約7割」を目安に、生活費のダウンサイジングをはじめましょう。

高齢世帯の平均的な生活費

生活費を見直す際に一つの目安となるのが、総務省から発表されている家計支出の平均額です。
 

ご自身の家計と上記の調査結果を比べてみて、お金をかけ過ぎている項目はありましたか?

もちろん、上記の調査結果はあくまで平均額であり、平均より高い家計支出があったとしても、収入の範囲内に収まっていれば問題ありません。

ですが、自分の家計支出が一般的な家庭に比べてどうかを知ると、さまざまな気づきが得られ、老後の家計をやり繰りする上で参考になるはずです。

今からできる!5つの家計見直し術

①家計費の予算は週単位で立てる

家計管理の基本は、「予算を立てることから」はじまります。家計簿をつけながら支出の傾向を掴み、費目ごとに1カ月あたりの予算を立ててみましょう。

ただし、1カ月単位にすると、早々に使い切ってしまう可能性もあるため、1カ月当たりの予算を週数で割って、1週間単位にするとうまく行きます。

週単位の予算を封筒などに小分けにし、その金額内で過ごすよう管理しましょう。

②無駄な買い物をしない

無駄な買い物は、できれば避けたいものです。そこで買い過ぎ防止の有効策をいくつかご紹介します。

  • 買い物前には、冷蔵庫と冷凍庫の中身をチェックする → 食材の重複買いを防止する
  • 買い物リストを作っておく⇒買い忘れと買い過ぎの防止になる
  • 買い物は週に3回程度にする → 買い物へ頻繁に行くより、無駄な買い物が減る
  • お財布には買い物代金以外の余分なお金は入れない → お金がなければ、無駄なものを買うことがなくなる

③固定費を見直す

固定費とは、毎月必ず出ていくお金のことを指し、保険料、居住費、通信費などが該当します。固定費の見直しは、実は目の前の節約よりよっぽど削減効果が望めるため、優先的に行いましょう。

家計の費目 見直し方
保険料 ・子どもが独立したら、死亡保障を減額する
・医療保険の保険料負担が重いようなら、解約して貯蓄に回すことを検討する
・保障や特約をあれもこれもと付けず、シンプルなものに絞る
・自動車保険や火災保険は、ネット申込みを中心とした損保を選ぶと保険料が大幅に減る可能性あり
居住費 <賃貸>
・今より家賃の安い物件や公営住宅などに引っ越す
・所得が一定以下の場合に、自治体から家賃の補助が受けられる「高齢者向け優良賃貸住宅」に住み替える
<持ち家>
・住宅ローンの借り換えを検討してみる
通信費 ・格安SIMに乗り換える
・使用頻度の少ない固定電話を解約する
・料金プランを変更する(かけ放題プランをやめてみるなど)
固定費となる趣味の費用 ・民間のスポーツクラブは退会し、公的なスポーツ施設を利用する
・お金のかかる習い事はやめて、公民館や地域の集いの場で開催されている教室に参加する

④クルマを処分する

自動車を保有している限り、税金、ガソリン代、駐車場代、自動車保険代などの維持費は、必要な出費となります。

当然自動車を手放すと、大きな経済的効果が見込めます。しかし、場所によっては、自動車を手放してしまうと、移動手段がなくなるなどの問題も生じてきます。

そこで地方自治体による、高齢者の移動を支援するさまざまなサービスが登場しています。

例えば東京都では、主に70歳以上の方を対象に、負担金を払うことで東京都区間内のバスを利用できる「シルバーパス」 を発行しています。

このようなサービスは全国に存在し、香川県高松市にも、70歳以上の方を対象に、電車やバスの運賃が半額になるサービス「ゴールドIruCa」があります。

愛知県田原市では、鉄道・バス・タクシーの中から利用のニーズに合わせて選択可能な助成券等を交付しています。今後は乗合タクシーも含め、高齢者の移動支援は、拡大していくでしょう。

さらに、免許証を自主返納することで、自治体によっては公共交通機関の料金が割引される特典があります。

長年使い慣れたクルマの処分は、決して簡単には決められないでしょう。そのため、保有した場合のコストと、手放した場合の自動車に代わる移動手段の利便性などを勘案して決めるとよいでしょう。

⑤交際費を抑える

定年後の家計では、交際費が増える傾向にあります。交際費を抑えるポイントは、人との付き合い方を見直すことです。

金銭的に余裕のある友人と頻繁にお付き合いをすると、どうしても出費が増えてしまいがちです。

金銭感覚の異なる友人とは、会う回数を減らし、自身の生活を最優先に考えることが大切です。

健康寿命を伸ばすことが医療費削減のカギ

健康寿命を延ばそう

誰もが、健康で長生きすることが理想なのではないでしょうか。しかし実際は、平均寿命と健康寿命(日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自立した生活ができる生存期間)との間に、解離が生じています。

例えば男性の場合、2019年時点の平均寿命は81.41歳であるのに対し、健康寿命は72.68歳です。要介護状態など、健康でない期間が9年近くあるということです。

また女性の場合は、平均寿命が87.45歳であるのに対し、健康寿命は75.38歳となっています。健康でない期間を12年近く過ごしていることになります。

健康である限り、医療費や介護にかかる費用を抑えることができます。また、自分らしく生き生きとした老後を過ごすためにも、健康寿命を延ばすことが重要なカギとなります。

平成26年の厚生労働白書によると、日本では、毎年5万人が「運動不足」 で亡くなっています。そこで近年、「ロコモ対策」がうたわれるようになりました。

ロコモとはロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略で、「運動器の障害のために自立度が低下し、介護が必要となる危険性の高い状態」と定義されています。ロコモ対策には、運動が何より効果的です。

関連記事【あわせて読みたい】ロコモティブシンドロームとは

また、厚生労働省では健康寿命を延ばす取り組み として、「適度な運用」「適切な食生活」「禁煙」を推進しています。具体的には、「毎日10分の運動」「1日にあと70グラム野菜を多く摂ること」「禁煙」を推奨しています。

その他にも、検診を受けることは、重症化や介護の防止にもなります。

最近は、高齢者が短時間で気軽に運動できるスポーツクラブが増えています。さらに地域では高齢者向けの体操教室なども、公民館や地域包括支援センターなどで頻繁に開催されています。気軽に参加してみてはいかがでしょうか。

また、医療費の削減は、健康を維持する以外にも、医療費そのものを節約する方法があります。医療費の節約術については、以下のコラムをご参照ください。

医療費の節約

関連記事【ここがポイント】今日からできる医療費の節約方法

おわりに

今回ご紹介した節約術は、既に老後を迎えている方はもとより、これから定年を迎える現役世代の方にも、参考にしてもらいたいと思います。

定年と同時に、急に生活レベルを落とすことは、難しいものです。ぜひ今日から実践してみてください。

この記事の制作者

小沢 美奈子

著者:小沢 美奈子(ファイナンシャル・プランナー/ライター)

K&Bプランニング代表
大学卒業後、損害保険会社にて社員教育、研修講師などを経験。約12年間勤務後、外資系損害保険会社で営業に従事。2012年ファイナンシャルプランナーとして活動開始後は、Webや書籍などで記事執筆、セミナー講師、家計相談などを行う。シニアや生活困窮者のライフプランにも力を入れる。フォトライターとしても活動。
ホームページ http://kandbplanning.org/

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