
有料老人ホームと認知症対応型グループホームはどちらも高齢者向けの施設ですが、どんな違いがあり、それぞれどんな人に適しているのでしょうか。
それぞれの特徴やサービス内容の違い、費用、メリット・デメリットなどを解説します。
- 【目次】
-
有料老人ホームとグループホームの比較
|
有料老人ホーム |
グループホーム |
特徴 |
高齢者全般が対象。定員数は数名~100名以上と規模はさまざま |
軽度~中度の認知症高齢者が対象。定員数18人の小規模な施設 |
運営母体 |
主に民間企業 |
民間企業、社会福祉法人、医療法人、NPO法人など |
入居条件 |
施設によって異なる。「入居時自立」「自立~要介護5」「要支援1~要介護5」など |
要支援2以上で、認知症診断があり、施設所在地に住民票がある者 |
退去要件 |
長期入院、認知症の症状が進行した場合、など |
要介護度の重度化、長期入院、常時医療的ケアが必要になった場合、など |
入居者層 |
60歳代~100歳を超える方、介護度は自立~要介護5までと幅広い層 |
認知症と診断された高齢者で、身体状況は比較的お元気な方 |
雰囲気 |
ホテルのような雰囲気のところもある |
小規模で家庭的な雰囲気が多い |
待機状況 |
施設数が多いので、長期間待機することは少ない |
定員数が少ないため、数ヶ月の待機期間を要するところもある |
有料老人ホームについて詳しくはこちら グループホームについて詳しくはこちら
特徴
有料老人ホームは高齢者全体が対象となり、自立している方から要介護5までいろいろな状態に対応した施設があります。定員が数名程度の小規模なものから100名超の大きな施設までさまざまな規模となっています。
グループホームは認知症高齢者に対象を特化した共同生活住居であり、不穏な状態を安定させる、認知症症状の進行を遅らせるなどを目的として、入居者同士で家事を分担して生活します。
共同生活をする人数が1ユニット5~9名で、現在では新しく開設する際には1つのグループホームで2ユニットまでと規定されています。
小規模であるため変化の少ない環境を保つことができます。
運営母体
有料老人ホームは主に民間企業が運営しています。
グループホームの運営母体は民間企業が約50%を占めていますが、残りの50%は社会福祉法人、医療法人、NPO法人などが運営しています。
入居条件
有料老人ホームは施設によって「入居時自立」「自立~要介護5」「要支援1~要介護5」など入居条件が異なります。
グループホームは要支援2以上の認知症高齢者であることが条件で、医師による認知症の診断が必要です。
また、グループホームがある市区町村に住民票があることも条件となっています。
退去要件
有料老人ホームでは、長期入院や、認知症症状が進行し他の入居者への暴力行為があるなど共同生活が難しくなった場合に退去を迫られるケースがあります。
グループホームでは、有料老人ホームと同様長期入院や共同生活が難しくなった場合、また看護師がいない施設では医療的ケアが必要になった場合も退去要件になっていることがあります。
入居者層
有料老人ホームに入居している方は60代~100歳を超える方まで、介護度も自立~要介護5までと幅広い層になっています。
寝たきりや車いす、認知症の方もおり、さまざまな身体状況の方が入居しています。
グループホームには認知症で身体は比較的お元気な方が多く、寝たきりの方などは少ないです。
雰囲気
有料老人ホームは全体的にホテルのような雰囲気のところが多いです。
グループホームは小規模な共同生活住居なので、家庭的な雰囲気となっています。
待機状況
有料老人ホームは、低価格のところを除けば、空室がありすぐに入居できるところが多いです。
グループホームは、規模が小さいだけに満室となっていることが多く、数ヶ月の待機が必要な場合があります。
提供されるサービスの違い
|
有料老人ホーム |
グループホーム |
介護体制 |
- 常勤換算で要介護入居者:介護スタッフ=3:1の配置
- 看護師は1人以上配置
※介護付き有料老人ホームの場合(住宅型は上記規定なし)
|
- 常勤換算で入居者:介護スタッフ=3:1の配置
- 看護師配置は義務ではない
|
医療連携 |
- 協力医療期間と提携し、定期健診、訪問診療を実施
- 看護師による毎日の健康管理が行われる
|
- 緊急時の連絡先として協力医療機関と提携
- 病気になった時は各自の主治医が往診
- 看護師配置の状況で健康管理の頻度が変わる
|
レクリエーション |
- 集団で行なう体操や身体を動かすゲーム、手先を使う折り紙などの工作、漢字ゲーム、簡単な計算ドリル、カラオケなど
|
- 有料老人ホームとほぼ同じ 手先を使うものや回想療法や音楽療法、園芸療法、アニマルセラピーなど認知症に効果があるものが中心
|
自立支援・リハビリ・認知症ケア |
- 食事や清掃などの家事サービスを提供
- 入居者の状況に合わせたリハビリを機能訓練指導員が提供
- 認知症ケアの知識、経験を持つスタッフが対応
|
- 入居者がスタッフと一緒に買い物、食事の準備、清掃などの家事を行なうことで自立支援をし、リハビリも兼ねている
- スタッフは認知症ケアについて理解が深い
|
個別対応 |
可能 |
スタッフが少ないので難しい |
生活の自由度 |
安全が確保されれば外出や外泊などは比較的自由 |
認知症の進行度合いにより1人での外出は安全面を考え制限される |
介護体制
介護・看護スタッフの人員配置基準は、有料老人ホーム(介護付きの場合)・グループホーム共に要介護入居者3人に対して1人以上のスタッフを配置する(3:1)と決められています。
看護師配置については、有料老人ホームは(介護付きの場合)1人以上の配置を義務付けられているのに対し、グループホームは義務付けられていません。
医療連携
有料老人ホーム・グループホーム共に、協力医療機関と提携し緊急時の対応や定期健診、訪問診療などを行っています。
日常的な健康管理については有料老人ホームでは看護師が行いますが、グループホームでは介護スタッフが行います。
しかし、医療連携加算を取っているグループホームでは、看護師を雇用したり訪問看護事業所と提携することで日常的な健康管理や医療処置が必要になった場合に適切な対応が取れる体制を整えています。
レクリエーション
有料老人ホームでは、集団で行なう体操や身体を動かすゲーム、手先を使う折り紙などの工作、漢字ゲーム、簡単な計算ドリル、カラオケなど、安全に楽しみながら行えるものをスタッフが用意しています。
グループホームでも同様のレクリエーションが行われています。
手先を使うものや回想療法、音楽療法、園芸療法、アニマルセラピーなど脳に働きかけ認知症に効果があるものが中心となっています。
自立支援、リハビリ、認知症ケア
有料老人ホームでは食事や清掃などのサービスを提供しており、入居者がそれを行なうことはありませんが、グループホームではスタッフと一緒に、能力に応じて食材の買い物や食事の準備、部屋の掃除などを行います(必須ではありません)。
それがリハビリにも繋がり、認知症の進行を和らげることが目的です。
有料老人ホームでのリハビリは、専門的な訓練を受け資格を持った理学療法士や看護師などの機能訓練指導員が、入居者の状況に合わせて提供しています。
認知症ケアについては、グループホームではスタッフに認知症の理解を深めるための研修を実施しています。
有料老人ホームでも認知症の方は増えているので、認知症ケアについて理解のあるスタッフは多くなってきています。
また、認知症入居者専用のフロアを整備している有料老人ホームもあります。
個別対応の有無
有料老人ホームでは、スタッフの人数に余裕があるところは、外出付き添いやリハビリなどの個別の要望に応えるサービスを提供しています。
グループホームは施設の規模が小さいためスタッフも少なく、個別対応ができるまでの余裕がないのが実情です。
生活の自由度
有料老人ホームは身体状況にもよりますが、比較的自由度の高い生活を送ることができます。
歩行に危険がなく道に迷うことがなければ、1人での外出も許されます。
グループホームの入居者は認知症の方なので、歩行がしっかりしていても道に迷う恐れがあることから、1人での外出はできなくなっています。
費用の違い
|
有料老人ホーム |
グループホーム |
初期費用 |
0~数千万円 |
0円~百万円程度 |
月額費用 |
15万円~40万円 |
5万円~30万円 |
初期費用(入居金)
有料老人ホームの初期費用は0円~数億円と、施設の特徴や入居年齢などで大きな幅があります。有料老人ホームの入居金には返還金制度があり、償却期間が設定されています。
グループホームは、概ね数十万円の初期費用で、高くても100万円を少し超える程度です。グループホームの初期費用は保証金などとして返還金がないもの、敷金として支払い退去時には必要経費を差し引いて返還されるもの、有料老人ホームと同様に入居金として支払い、返還金制度が設定されているものがあります。
月額費用とその内訳
有料老人ホームの月額費用は15万円程度から40万円くらいまでで、やはり幅があります。
内訳は家賃相当分・管理費・食費などです。初期費用に家賃分をまとめて払うことによって(前払い家賃)、月額費用を調整できるところもあります。
別途費用としては、介護保険負担分、水道光熱費、オムツなど日用品代、レクリエーション参加費などがあげられます。
グループホームは5万円~30万円くらいで、内訳は基本料金(家賃)・管理費・食費、水道光熱費などです。
別途費用として、介護保険負担分があり、体制を充実させているところは、その加算(医療連携加算、看取り加算など)がプラスされます。
その他、オムツなど日用品代、レクリエーション参加費などがあります。
以下に、有料老人ホームとグループホームの料金例を挙げます。
有料老人ホームの料金プラン例
|
入居金0円プラン |
入居金プラン |
初期費用 |
0円 |
780万円(前払い家賃) |
|
返還金制度・償却期間 |
– |
有・60ヶ月 |
月額費用 |
347,819円 |
217,819 |
内訳 |
家賃相当分 |
130,000円 |
0円 |
管理費 |
151,819円 |
151,819円 |
食費 |
66,000円 |
66,000円 |
グループホームの料金プラン例
|
例1 |
例2 |
初期費用 |
0円 |
36万円 |
|
返還金制度 |
– |
有(敷金として) |
月額費用 |
177,300円 |
147,300円 |
内訳 |
基本料金 |
86,000円 |
56,000円 |
管理費 |
19,800円 |
19,800円 |
食費 |
49,500円 |
49,500円 |
水道光熱費 |
22,000円 |
22,000円 |
※グループホームの例は、別施設です。
【はじめての方へ】リバースモーゲージ|自宅を活用して入居資金を準備しようメリット・デメリット
有料老人ホームのメリット
- 入居者の人数が多いので、相性が合わない入居者がいても調整をつけることが可能
- 医療ニーズや個別対応など要望に合った施設を見つけることができる
- 低価格のところを除いて、空室がありすぐに入居できる場合が多い
グループホームのメリット
- 小規模の施設で利用者もスタッフも顔馴染みでアットホームな雰囲気で、認知症高齢者が混乱することが少ない
- 認知症ケアの専門知識を持ったスタッフが対応する
- 家事をスタッフと一緒に行なうことで、生活そのものが認知症のリハビリにつながり、進行を遅らせることができる
- 有料老人ホームと比べると低価格
有料老人ホームのデメリット
- 入居者やスタッフの人数が多く、認知症高齢者が混乱することがある
- 認知症ケアの専門知識を持たないスタッフが対応することがある
- 家事はサービスとして提供されるので、生活は認知症のリハビリにつながりにくい
- 初期費用、月額費用ともに費用がかかる
グループホームのデメリット
- 要支援2以上、その地域に住民票がある人しか入居できない
- 少人数なので入居者同士の相性が合わない場合、移動などの調整がしづらい
- 看護師配置が義務ではないので、医療的ニーズへの対応に限界がある施設が多い
- 入居待ちが多く、すぐに入れないケースが多い
有料老人ホームとグループホームではその特徴によるメリット・デメリットがあります。
まずは規模によるものですが、グループホームは小規模の施設なので、利用者もスタッフも顔馴染みでアットホームな雰囲気で、認知症高齢者が混乱することが少なくなるというメリットがあります。
一方で、相性が合わない入居者がいた場合に、移動するなどの調整がしづらいというデメリットがあります。
それに対して、有料老人ホームは規模が大きく、相性が合わない入居者がいても顔を合わせない部屋に移動するなどの調整をつけることが可能です。
しかし、入居者やスタッフの人数が多く、認知症高齢者が混乱することがあるというデメリットがあります。
また、グループホームは認知症高齢者に特化した施設で認知症ケアの専門知識を持ったスタッフが一緒に家事などを行い、生活そのものがリハビリにつながるような工夫をしていますが、有料老人ホームはさまざまな状況の高齢者が入居しており、スタッフも全員が認知症ケアの専門知識を持っているとは限らず、家事はサービスとして提供され、認知症のリハビリにはつながりにくい一面があります。
しかし、グループホームは看護師配置が義務となっておらず、医療ニーズには対応できないケースが多くなりますが、看護師が必ずいる有料老人ホームではある程度の医療ニーズには対応できるというメリットがあります。
このように、それぞれのメリット・デメリットは背中合わせになっており、施設を考える場合は入居希望者の状況に照らし合わせて選ぶ必要があります。
まとめ
認知症高齢者が入る施設として考えた場合、有料老人ホーム、グループホームともに一長一短があることがわかりました。
認知症症状がまだ軽く初期の段階であれば、進行を遅らせる効果がより期待できるグループホームが適していると言えるでしょう。
しかし、持病を持っている場合はそれがどう進行するのかを予測する必要があります。
場合によっては、看護師がいる有料老人ホーム等に移り住む必要性が出てくることを視野に入れておきましょう。
寝たきりなど身体状況の介護度が進んでいる方は、グループホームでの生活リハビリがあまり期待できず、スタッフも少ないために十分な身体介護が受けられないことがあります。
身体介助が多く必要な方は、有料老人ホームの介護体制のほうが適しているでしょう。
【はじめての方へ】リバースモーゲージ|自宅を活用して入居資金を準備しよう
【PR】憩いとやすらぎの老人ホーム、介護事業40年の創生会グループ
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)
学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。
監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
11年医療ソーシャルワーカーを経験後、介護支援専門員(ケアマネジャー)として相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。最近では、新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活躍。