認知症の一人暮らしの限界はいつ?リスクや限界時の対応、入居できる施設
認知症の方や認知症の疑いがある方の中には、一人暮らしをしている方もいらっしゃいます 。しかし、 進行により、ご本人やご家族が「このまま一人で暮らし続けられるだろうか」と不安に感じるタイミングがあるかもしれません。一般的に、どのような状態になると一人暮らしが困難になるのか、また限界を感じたときにどの施設を利用できるのかを解説します。
認知症一人暮らしの限界はいつ?
2020年の兵庫医療大学の堀口和子氏らによる独居高齢者を観察対象とした調査では、平均84歳で一人暮らしを中断しています。
また、アルツハイマー型認知症における限界の指標として参考になるのが症状の進行を7段階に分類した指標です。この指標によると段階4(中程度の認知機能の低下)では支払いの管理が難しくなり、段階5(やや重度の認知機能の低下)では気候に応じた服装を選ぶための助けが必要になり、さらに進んで段階6(重度の認知機能の低下)になると失禁や徘徊が増えます。
どのタイミングで一人暮らしが難しくなるかは、ご家族や地域のサポートやご本人の身体状況により異なり一概には言えませんが、認知機能の低下により犯罪や事故に巻き込まれる可能性が増してくる段階4は一つの目安として考えてもよいでしょう。
出典:J-STAGE「認知症の有無による高齢者の独居生活中断時の心身の状態と社会資源の利用」(PDF)老人ホーム入居の一番のきっかけが認知症
出典:LIFULL 介護「老人ホームの入居タイミングに関する調査」近しい方の老人ホーム入居を経験された方を対象としたLIFULL 介護の独自調査では、老人ホームへの入居を考えるきっかけとなった状況で、もっとも多いのが「認知症があった」であったことがわかりました。実に全体の約半数の方が、認知症をきっかけとして老人ホームへの入居を考えたようです。
なお、この調査は独居高齢者に限定して実施されたものではありません。家族と暮らしていても、認知症を発症したり症状が重くなったりすることで、一人暮らしが難しくなることがわかります。
老人ホーム入居のきっかけとなった認知症の症状
出典:LIFULL 介護「老人ホームの入居タイミングに関する調査」同調査で、入居のきっかけとなった認知症の症状についてたずねると、最も多かったのは「排せつの失敗」、次いで「お金の管理ができない」でした。一人暮らしに限った調査ではありませんが、一般的に排せつに失敗するようになる、あるいは金銭管理ができなくなる、などが自宅で暮らしを続ける限界点のようです。これは一人暮らしにも同じことが言えると考えられます。
認知症で一人暮らしを続けるリスク
認知症の方が一人暮らしを続けることには、さまざまなリスクがあります。主なリスクについて解説します。
事故や怪我のリスクが高い
認知症の症状が進むと記憶力や視空間認知が低下し、鍋を火にかけているのを忘れたり、危険な状況が迫っていることを感じ取れなかったりすることもあります。事故や怪我が起きやすい状況と言えます。
お金の管理や服薬管理などが困難になる
認知症の症状が進行すると、認知機能の低下により金銭管理が難しくなる場合があります。また、金銭だけでなく、食事の支度ができない、自身が飲む薬を管理できない場合もあります。薬の飲み忘れは病状の悪化につながることもあるため、介護者によるサポートが必要になります。
セルフネグレクトに陥りやすい
認知症により、セルフネグレクトの状態に陥ることもあるようです。排せつに失敗したまま放置する、食べることに意識が向かずに低栄養状態になるケースもあります。
一人で外出できない場合がある
認知症の症状が進行すると、一人での外出が難しくなることがあります。意欲が低下し、家にいるときもベッドで寝たまま過ごしたり、不安が強まって外に出るのがおっくうになったりすることも少なくありません。一人暮らしなら、外出しないことで家に食べ物がなくなり、生活が立ち行かなくなることも想定されます。
生活に必要な手続きができない場合がある
外出が難しくなることで、金融機関からお金を引き出せず、買い物や支払いができなくなることもあります。また、公的年金や個人年金の受給申請をせずに、本来受け取れるはずのお金を受け取れないこともあるようです。
認知症の一人暮らしが限界だと感じた時の対応
認知症は進行性の病気で、基本的に完治することはありません。身近に一人暮らしの高齢者がいる場合は、認知症の症状が進行した時に取るべき対応について理解しておきましょう。さらに、ご本人の意思決定の能力があるうちに、今後どのようにした方がよいかを確認をしておいた方がよいでしょう。
介護サービスや支援サービスを利用する
介護サービスや支援サービスにより、日常生活のサポートを受けられます。まだ要介護認定を受けていない場合は、市区町村役場の窓口で介護認定の申請をすることから始めましょう。要介護認定を受けると、要介護度に応じた介護サービスを受けられるようになります。
また、自治体によっては、見守りサービスや日常生活自立支援事業などの支援サービスを実施していることもあります。市区町村役場の窓口や地域包括支援センターで相談してみましょう。
親族などと同居する
親族などと同居するのも一つの方法です。しかし、同居する人が育児や仕事に忙しく介護の時間を捻出できないことや、疲労や気持ちのすれ違いから家庭不和につながることも想定されます。特に介護度が高くない状態で認知症を発症しているケースでは、ご自身で色々と動きまわることができてしまうため介護にも非常に体力を必要とします。
また、介護者が介護に専念するために離職することで、経済的に厳しくなってしまうケースも少なくありません。共倒れにならないためにも、親族内でしっかりと話し合ってから同居するようにしてください。
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老人ホームや施設に入居する
老人ホームへの入居も検討してみましょう。親族で限界になるまで介護を実施すると、介護者の精神的・身体的負担が大きくなるだけでなく、疲労や意思疎通の難しさなどから、認知症患者と介護者の仲がこじれてしまうこともあります。
お互いがお互いを思いやれる状態を維持するためにも外部の介護サービス、特に老人ホームや介護施設への入居を選択肢について考えてみてください。
認知症の方が入居できる施設
認知症の方が入居できる施設の一つ、グループホームは、認知症の方に必要な、専門的な支援を受けつつ、家庭的な環境で共同生活できる施設です。支援を受けながら身の回りのことができる方に向いている施設です。
また、サービス付き高齢者向け住宅はバリアフリー対応の賃貸住宅で、個別に契約すれば介護サービスも受けられます。認知症の方の入居も相談可能なことがあるため、一度検討されてみるのもおすすめです。
介護度が重い場合は特別養護老人ホームか有料老人ホームが候補になります。特別養護老人ホームは、原則として要介護度3以上の方を対象としています。身体介護も受けられますが、入居希望者が多いため、利用できるまでに時間がかかる点がデメリットです。
有料老人ホームには介護付きと住宅型があり、介護付きなら介護職員や医療職員も在中しているため、認知症が進行したときもそのまま暮らせます。
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まとめ
認知症は進行して症状が変化します。できていたことができなくなり、一人暮らしの継続が困難になるタイミングが訪れるかもしれません。事故や怪我が起きた、あるいは健康を損なってから慌てて施設探しをはじめてしまうと、十分に吟味した施設探しができない上に、ご本人も急激な環境の変化に戸惑うかもしれません。
認知症を持ちながら一人暮らしを続けられている方には、早いうちから施設での暮らしをご本人と話しあっておくと良いでしょう。 一番大事なことはご本人が今後どのように生活をしたいかを、認知症になる前に意思確認しておくことです。
家族、親族と同居する方法もありますが、今まで一人暮らしをしてきた方なら、ライフスタイルが合わずにストレスを感じるかもしれません。介護者と認知症を持つ人の双方が心地よく関わっていくためにも、施設への入居を検討してみてはいかがでしょうか。
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【無料】プロのスタッフに入居相談を行うこの記事の制作者
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。