【認知症検査】VSRAD (ブイエスラド)とは?
VSRAD(ブイエスラド)とは、アルツハイマー型認知症の原因である脳の萎縮を調べるもので、特に発症早期に萎縮が見られる海馬傍回(かいばぼうかい) 、海馬、扁桃の萎縮度を痛みもなく簡単に調べられることが特徴です。
アルツハイマー型認知症の重症化を防ぐために重要な早期発見にも効果的なため、注目を浴びています。
「VSRAD」ってどんな検査?
VSRAD (ブイエスラド)とは?
MRIの検査データを使ってアルツハイマー型認知症の進行度合いを調べる診断支援ソフトの事です。大日本印刷株式会社とエーザイ株式会社が共同で開発し前:国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター長・松田博史氏総監修(現:南東北創薬・サイクロトン研究センター 院長)のもと作られました。
アルツハイマー型認知症の原因と考えられている脳の萎縮度を測定します。特に海馬傍回(かいばぼうかい)、海馬、扁桃と呼ばれる記憶に関わる部位に注目して萎縮度をみます。MRI検査データとVSRADソフトを使い健康な人の脳と比べた萎縮の程度から、アルツハイマー型認知症の可能性を数値で表します。
VSRADで何がわかる?
VSRADが検査する部位
アルツハイマー型認知症では、脳の中心に近い内側側頭部分(海馬傍回、扁桃、海馬)の萎縮が起こることがわかっています。そのため、この内側側頭部の萎縮度を評価することが早期アルツハイマー型認知症における画像診断のポイントになります。
内側側頭部の萎縮の強さを4段階の数字で表すのがVSRADです。
萎縮度が0から1の場合は脳の萎縮はほとんど見られず、萎縮度が1から2の場合は萎縮がややみられ、萎縮度が2から3の場合はかなりの萎縮がみられる状態です。
萎縮度が3を超える場合は、脳に強い萎縮が見られる状態で、アルツハイマー型認知症の可能性が高いと考えられます。
このように、脳の萎縮度が認知症の可能性を判断する基準となります。
MRI検査を受ける時の注意点
閉所恐怖症の方や脳クリップを入れている方、心臓ペースメーカーを入れている方などはMRI検査そのものができない可能性があります。(一部、対応可能なものもあります)
その他、検査中の体動などでもMRI検査ができないことがありますので、詳しくは医療機関にお尋ねください。
VSRADの注意点
VSRADで脳の萎縮度からアルツハイマー型認知症の可能性があるかはわかりますが、アルツハイマー以外の原因で脳が萎縮してしまう病気もあるため、MRI検査とVSRADの画像検査だけではアルツハイマー型認知症であると判断できません。
口頭による質問形式のMSSE(ミニメンタル・ステート)検査や長谷川式スケール検査などの結果もあわせて判断します。また、既に認知症を発症しているケースもあります。
最終的な診断には、症状や経過などをあわせた医師の総合的な診察も必要になります。
VSRAD検査の受け方や費用、検査にかかる時間は?
検査を受けるには?
医療機関を受診し、医師が必要と判断した場合にVSRADを受けることになります。
VSRADは脳のMRI検査とあわせての検査が必要となるので、基本的にVSRAD単独での検査はできません。
また、通常は50歳以上の方が対象です。50歳以下でも検査自体は可能ですが、解析結果が不規則な値になりやすく正確な診断は困難となります。
検査にかかる費用は?
保険適応の検査であれば脳のMRI検査とセットで数千円、脳ドック(自費)のオプション検査として受ける場合は数万円までと幅広く、検査を行う医療機関によって異なります。
検査にかかる時間は?
VSRADは通常のMRI検査のオプション検査です。通常のMRI検査時間に加えて約5分程度長くなり、トータルで約20~30分ほどになります。
結果が出るまでにかかる時間は?
検査当日に結果説明ができる医療機関や、次回の診察時に結果説明となる医療機関もあり、医療機関によって異なります。 検査した医療機関にお尋ねください。
まとめ
アルツハイマー型認知症は早期に診断・治療することで進行を遅らせて健康な時間を長くすることができます。
例えば、服用していた薬を飲み忘れることが多くなったためVSRAD検査を受けたところ、脳の萎縮がわかり、総合的な結果からアルツハイマー型認知症と診断。早期に治療を受けて、認知症の進行を遅らせることができた事例があります。このように、気になる症状やご不安な事がございましたら、認知症専門医の受診をおすすめします。
イラスト:坂田 優子
認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?早めのご相談を
認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせない、不動産を売却できないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。
備える方法を詳しくみる
この記事の制作者
著者:武末雅史(診療放射線技師)
2002年、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院に勤務。
2019年より川崎市立多摩病院に移動。
画像診断部・主事、診療放射線技師・放射線管理士・放射線機器管理士、超音波検査士・血管診療技師。
神奈川県超音波研究会幹事。
患者さま一人一人との検査を大切に、最高の医療の提供を心がけ日々勤務する。