エンディングノートと遺言書の法的効力

エンディングノートと遺言書の違いは法的効力の有無です。

ご自身の死後、残された人に法的効力をもって実行してもらいたいのであれば、遺言書を作成する必要があります。

ここでは、エンディングノートと遺言書の4つの違いと、法的に有効な3種類の遺言書についてわかりやすく解説します。

エンディングノートと同様の意味を持つ、遺言書の付言事項(ふげんじこう)についても見ていきましょう。

エンディングノートと遺言書の4つの違い

まずは、エンディングノートと遺言書の4つの違いを見てみましょう。

1. 法的効力

エンディングノートには、原則として法的効力がありません。

何を書いても自由なので、財産の分割方法や手続きについて詳細にノートに記入する人もいますが、書いたとしても、それは遺族に託す希望となります。法的効力がないため、相続人に確実に実行させることは難しいでしょう。

一方遺言書には法的効力があり、原則として遺言書の内容が法的相続よりも優先されます。

2. 書き方

エンディングノートには決まった書き方がありません。医療や介護について記すこともできるため、自分に万が一のことが起きたときに、家族に自分の意思表示をすることができます。

一方、遺言書には決まった書き方があります。法的効力のある遺言書は、規定の形式に沿って作成されていない場合、無効になってしまうことがあります。

昨年7月より法務局で遺言書を保管できる制度(自筆証書遺言保管制度)がスタートしました。この保管制度の対象となる遺言書は所定の要件をクリアしたものです。この自筆証書遺言書の様式を参考に「自筆証書遺言」の書き方を見てみましょう。

【自筆証書遺言の書き方】 民法第968条

1. 手書き(自書)で作成する。(財産目録のみパソコン作成・代筆可。登記簿や通帳のコピーもOKだが、記載のあるすべてのページに署名+押印が必要)
2. 「相続させる」または「遺贈する」とはっきり記載。
3. 遺言書を作成した年月日を記載。
4. 署名と押印が必須。(認印可能、スタンプ印は避ける)
5. 内容を訂正、変更した場合はその箇所に押印。変更がわかるように付記をして署名。
6. ボールペンなどの消えない筆記用具を使う。(鉛筆や消えやすい筆記用具は避ける)

一部参考:法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」

<遺言書の記入例>

出典:法務省:参考資料「自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例」

3. 開封のタイミング

エンディングノートに開封という概念はありません。いつでも自由に何度でも書き直しができます。

一方、遺言書は勝手に開封してはいけません。遺言書を見つけた人、保管している人は家庭裁判所で検認手続きをし、申立人及び申立人以外の相続人のもと開封します。

法務局保管制度を利用している場合や、公証役場で原本が保管される公正証書遺言は検認が不要です。

4. 目的

エンディングノートは、年代別にさまざまな目的で使用できます。若い世代なら資産情報の確認ツールとして、働き盛り世代なら生活に備えるための資産・保険の確認リストとして、60代以降なら医療や介護の希望を書いておくこともできます。

一方で、遺言書の目的は、遺言の内容に沿って相続手続きを執行することです。

エンディングノートについて詳しく見る

法的に有効な3つ遺言書

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれメリット・デメリットがありますので、自分に適した遺言書はどのタイプなのか、比較してください。

自筆証書遺言
(民法第968条)
公正証書遺言
(民法第969条)
秘密証書遺言
(民法第970条)
作成者 本人 公証人 本人が望ましい
(制限なし)
署名・押印 本人 本人
証人
公証人
本人
(封紙には本人、公証人証人)
検認手続き 必要
(法務局保管の場合は不要)
不要 必要
メリット ・作成が簡単
・遺言書の存在を秘密にできる
・何度でも書き直しができる
・紛失、偽造、変造の危険がない
・不備による無効がない
・自筆できなくても作成が可能
・内容の秘密保持ができる
・代筆やパソコンでの作成も可能
・低料金
デメリット ・不備があると無効になる
・紛失、偽造、変造の危険がある
・訂正方法が厳格
・費用がかかる
・手続きが煩雑
・自分で署名ができない場合は利用できない
・内容に不備があると無効になる

自筆証書遺言

自分で書く一番手軽な遺言書です。費用もかからず、紙とペンがあれば作成できます。

先述の通り、遺言の内容は全文自筆です。書き方に不備があると無効になる恐れがあるので、形式に沿って作成しなければなりません。

開封時は家庭裁判所の検認が必要ですが、2020年7月よりスタートした法務局での保管制度を使えば検認は不要となります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が話した遺言内容を公証人(法律のプロ)が正確に文章にまとめ、作成します。自筆が困難な場合にも遺言をすることが可能です。

公証人が作成するため内容に不備がなく、原本は公証役場で保管されるため検認の必要もありません。

相続開始後すぐ、遺言の内容を実行に移すことができます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、公証人の前で本人・証人が封紙に署名・押印することで、被相続人が作成した遺言書が間違いなく本人のものであることを明確にしたものです。

遺言は自筆でという決まりはありません。パソコンで作成したものや、第三者が筆記したものでもOKです。

ただし、署名・押印には決まった形式があります。また公証人が内容を確認しているわけではないので、法的に有効な遺言書だという証明にはなりません。遺言書は家庭裁判所の検認が必要となります。

エンディングノートと遺言書の「付言事項」

遺言書には「付言事項(ふげんじこう)」という、被相続人が自由に書くことのできる項目があります。

法的効力はありませんが、長年の感謝や相続財産の分け方に不公平感がある場合は、その理由などを書くことができます。相続が「争族」とならないためにも、思いを付言事項で伝えましょう。

付言事項がある遺言とない遺言では、受け取った側が感じる思いが全く違うといっても過言ではありません。

エンディングノートも同様に、故人の思いが伝わってくるものなら、家族を不要な争いや摩擦から守ってくれる一冊になります。

エンディングノートをめくるたびに故人を思い出し、残された家族が笑顔になるようなものとなれば、最高のエンディングノートといえるでしょう。
 

まとめ

遺言書には3つの種類があり、形式やルールが定められています。

遺言書が無効になってしまわないように不安があるなら専門家に相談すると良いですね。作成するなら付言事項も入れておくといいかもしれません。

エンディングノートにはそれぞれの年代に合った使い方があります。特に医療や介護のことはいつかではなく、いつ始まっても不思議ではありません。家族の負担を減らすためにも元気なうちに自分の希望を書いておくことをおすすめします。

エンディングノートも遺言書も、どちらもあなたと残された家族をつなぐ大切なものです。法的効力はなくても、エンディングノートや付言事項を活用しながら、家族が不要なトラブルでもめることのないようにしたいですね 。

この記事の制作者

馬渡 初代

著者:馬渡 初代(1級ファイナンシャルプランニング技能士・AFP)

ファイナンシャルプランナーとして、一人暮しの高齢者の方の傾聴ボランティアと見守り活動をしています。人生100年時代。自分らしい老後を過ごすための終活セミナーやエンディングノート書き方ワークショップを実践中。
「独居老人を一人にさせない」をモットーに社協の方と連携で地域福祉を推進しています。

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