【令和最新】エンディングノートと遺言書との違いを専門家が解説!
エンディングノートとは、判断能力の低下や死後に備え、資産、介護、葬儀などご自身の希望を記し準備しておくノートのことです。
筆者はエンディングノートの書き方を分かりやすく伝えるセミナーを定期的に開催しています。そこで参加者からよく質問される「遺言書との違い」や、「スムーズに書くポイント」やその注意点、「定期的に見直す必要性」についてもわかりやすく解説します。
エンディングノートの役割
終活の一環として注目されているのがエンディングノート。NPO法人ら・し・さが行った終活意識全国調査によると、約8割の人がノートのことを知っていると回答。一方で、実際に書いている人は1割に満たないという結果でした。
エンディングノートは終活のきっかけとなるツールですが、所有率が低く書いている方が少ないのが実情です。
書けない理由は、考えがまとまらない。まだ元気だから必要ない。死を意識したくない、といったことが挙げられます。
しかし、改めてその役割を知ることで書く意欲が高まるのではないでしょうか。ここではノートのもつ2つの役割をお伝えします。
エンディングノートの2つの役割
エンディングノートには「情報の記録」と「思いを伝える」という2つ役割があります。
1.情報を記録する役割
- 自分のこと(基本情報・自分の歴史)
- 資産(預貯金・保険・年金・借入・不動産など)
2.思いを伝える役割
- 葬儀
- 供養
- 遺産相続
夫婦でも、きょうだいでも、葬儀や供養に対する考え方は人それぞれ。率直な気持ちを伝えられないときは、エンディングノートを書くことで思いを伝えることができます。
ノートの役割は少しずつイメージできてきたでしょうか。
そして気になるのが、ノートに書けば確実に実行されるかどうか。その法的効力について次の項で解説します。
エンディングノートに法的効力なし!遺言書との違い
エンディングノートと遺言書の最大の違いは法的効力の有無です。残念ながらエンディングノートに法的効力はありません。
その分、書き方も内容も自由度が高く、遺言書にはない医療や介護についての希望も書くことができます。それぞれの違いを表にまとめました。
エンディングノート | 遺言書 | |
---|---|---|
法的効力 | なし | あり |
書き方(形式) | 自由 (ノート・PC・スマホ等全てOK) |
規定の書式あり (書き方に誤りがあると無効の場合も) |
続財産の分割・手続き | お願いはできるが法的効力なし | 法的効力があり従わせることも可能 |
医療・介護 生前についての希望 |
書くことができる | 書くことはできない |
書く内容 | 自由 | 一般的には相続に関すること |
作成にかかる費用 | 数百円~数千円 | 数百円~数万円 |
開封のタイミング | いつでも開封できる (生前・死後問わず) |
家裁で検認後 相続人全員がそろった状態で開封 |
市販のエンディングノートの価格は500円~2,500ぐらいです。遺言書と違い開封についての制限もありません。
ノートを書く4つメリット
エンディングノートにはたくさんのメリットがあります。今回は特に大切な4つのメリットを解説します。
1.自分の人生を振り返ることができる
エンディングノートには自分について書く項目があります。自分史という半生を文章化したものを書くことで人生を振り返ることができます。
2.家族の負担を軽減できる
家族が介護や終末期に一番悩ましいのは「本人が何を望んでいたのかが分からない」ということです。逆に言えば「医療・介護・終末期に関する希望」がわかっていたら、悩まずにすみます。ノートに意思表示しておくことで、家族の負担をぐっと減らすことができます。
3.家族に思いを伝えることができる
お葬式の方法やお墓など埋葬に関すること。万が一のときに知らせてほしい友人・知人のこと。ペットを飼っている場合は、その後の世話など普段なかなか話さないことも伝えることができます。
4.資産の確認ができる
貯蓄・保険・年金・不動産・クルマ・その他の資産…と自分が思っているよりもたくさんの資産を所有している場合があります。
それらの確認と、さらに忘れてはならないのが借入れについて記しておくことです。
家族に内緒の借金がある。クレジットカードでの未払い金がある。消費者金融のカードがある場合も記しておきます。借金情報は残された家族が1番知っておきたい情報だからです。相続人が相続放棄をする場合は原則3ヶ月までに行なう必要があります。
いつ書けばいい?最適なタイミングは「今すぐ書く」
病気や天災など、いつ何があるのか分からず何歳まで生きられるという保障などありません。
「書いてみよう」と思ったときに書き始めるのが最適なタイミングといえます。
何歳までに書くべきか?年代に合った書き方がある
何歳までに書いておくという決まりはありません。ただ、気になることがある方や持病がある方は書ける箇所からすぐにでも書き始めると良いでしょう。年代別に書くべきタイミングがあります。世代別に見ていきましょう。
- 20~30代
- 「まだ若いしエンディングノートなんて不要では?」と思われそうですが、自分の基本情報や資産を書き記し「情報ツール」として用いる方もいます。使い方は人それぞれです。
- 40~50代
- まだまだ元気で気力に溢れた世代です。終活の準備には時間的に余裕があるこの年代こそ、ゆとりをもって資産確認をする。今後の医療・介護についての希望を書いておくことができます。
- 60代以降
- セカンドライフが始まります。振り返りをして、今後の人生へのTo Doリストの代わりに書くのも良いでしょう。70代以降の方は残された家族が困らないように医療・介護のことを。死後はこうして欲しい、といった具体的な願いを書いておきましょう。
若年層のエンディングノート活用例
- 20代 男性消防士
- 基本情報と手書きメッセージをコピーし財布に持参。万が一のときに家族と連絡をとるツールとして使用している。
- 30代 女性会社員
- 年1回資産の増減を記入し、加入保険を書き出して「資産を見える化」するツールとして使用している。
エンディングノートの内容は?書いておくべき必須事項
ではエンディングノートの内容を見ていきましょう。
ノートによって項目が違う!自分に合うものを選ぼう
書店などに並ぶエンディングノートの種類も増えてきました。
シンプルで項目の少ないものから、ページ数が多くあらゆる項目を網羅しているもの。パソコンで入力ができるもの。自分史や家系図に重点が置かれたものなど実に様々です。
最近は100円ショップで販売されている1項目に特化したエンディングノートなどもあります。
ここではノートの「必須項目」と「あった方がいい項目」を表にまとめてみました。
必須項目 | あった方が良い項目 |
---|---|
基本的な情報 | 書き方例・ヒント |
資産・財産 | パスワード・契約情報 |
家族の相関関係図 | 相続・遺言のガイド |
医療・介護情報 | ペットに関すること |
葬儀・お墓 | 処分してほしいものリスト |
連絡先(家族・知人の情報) | 死亡後の手続きリスト |
親しい人へのメッセージ | 自由記述欄 |
ノートの選び方
ネット購入も可能ですが、できれば手に取って選んでみてください。紙の質、罫線の太さ、めくりやすさ。さらにノートを見て男性なら「書けそうだな!」と思えるか。女性なら心がときめくかどうかがポイントです。
その上で必須項目をチェックし、自分が書いておきたい項目が入っているモノなら間違いないと言えます。
デジタルで書くエンディングノート
筆者は今年1月にネットでダウンロードしたエクセル形式のエンディングノートを作成しました。紙と違い入力や訂正も簡単で、サクサク書けたと実感しています。
画像を添付できることや、デジタル遺産の管理が楽なのはメリットです。
書いて終わりじゃない!定期的な見直しを
エンディングノートは書くこと自体が目的ではありません。その先の行動のきっかけ作りです。また状況(健康状態、資産状況等)は日々変わっていきます。数か月~1年ごとに定期的に見直すようにしましょう。
ノートは誰に伝えるべきなのか、誰に託すのか
ノートを書いていることを家族に伝えておくと良いでしょう。せっかく書いても家族が知らなければ意味がありません。託したい相手がいる場合はノートをきっかけにこれからのことを話してみるのもいいです。
ノートの保管方法
保管場所はノートの中身にもよります。ノートに詳細な資産情報を記している場合は金庫など防犯性の高い場所を選びましょう。
また、防災グッズにいれておけば、いざというときも持ち出せるようになります。
家族のため、自分のために書く
エンディングノートとは、残された家族が判断に困らないように情報や思いを記し準備しておくものです。決まった形式がないので自由に書くことができます。
状況に合わせて書き直すことができることも魅力です。ページを埋めていくことで人生の棚卸しができ、やりたいこと、伝えたい事、残したいことを気づかせてくれるツールになります。
エンディングノートがきっかけで遺言書を作成したという方もいます。書いて見ようと思った時に書き始めてみるのが良いでしょう。
この記事の制作者
著者:馬渡 初代(1級ファイナンシャルプランニング技能士・AFP)
ファイナンシャルプランナーとして、一人暮しの高齢者の方の傾聴ボランティアと見守り活動をしています。人生100年時代。自分らしい老後を過ごすための終活セミナーやエンディングノート書き方ワークショップを実践中。
「独居老人を一人にさせない」をモットーに社協の方と連携で地域福祉を推進しています。