歩行器を選ぶときのポイントと安全な使い方
歩行器は種類が豊富になり、公的介護保険でレンタルできたり、デパートやホームセンターで安く買えたりします。しかし、広く普及した一方で、体や用途に合わせた歩行器選びの大切さはあまり知られていません。
ここでは、体の状態や用途に合わせた歩行器の選び方、安全に使うためのポイントを解説します。
歩行器の種類
歩行器にはいろいろな製品がありますが、まとめると次の3種類になります。
1.歩行器
- 固定型(持ち上げ式、ピックアップ式)
- 両手で持ち上げて前方に運んで使います。
- 交互型
- 左右のフレームを交互に動かして前に進みます。固定型より早く歩くことができます。
- キャスター付き
- 前輪付きと前輪・後輪付きがあり、持ち上げずに前に進むことができます。
2.歩行車
- サークル型(アーム付き四輪歩行車)
- 腕や肘を乗せ、体重をかけて使うことができます。
- 四輪歩行車
- 四輪とブレーキが付いて幅も広く、体重をかけて使うことができます。腰かけることもできます。
3.シルバーカー
ハンドルが真っ直ぐの形状で、次の3つの種類があります。
- コンパクトタイプ
- 軽量でコンパクトなタイプです。
- ミドルタイプ
- 適度な収容量と安定感があります。
- ボックスタイプ
- 安定感があり、座面も広くて腰かけることもできます。
体の状態に合った歩行器の選び方
体の状態に合わせた歩行器の選び方は、次のように整理することができます。
手すりや歩行器に体重をあずければ、ゆっくり歩くことができる | 固定型歩行器 |
手すりや歩行器に体重をあずければ、ゆっくり歩くことができる 左右のフレームを交互に動かすこともできる |
交互型歩行器 |
手すりや歩行器に体重をあずければゆっくり歩くことができる 歩行器を持ち上げることが難しい |
キャスター付き歩行器 |
入院中などで体力が低下したので歩行訓練を始めたい | サークル型歩行器 |
歩きがやや不安定なので安心のために歩行器を使いたい 屋外でも使いたい |
四輪歩行車 |
パーキンソン病などで歩くスピードのコントロールが難しい | 自動抑制ブレーキ付きの四輪歩行車 |
歩行器を使わなくても安定して歩けるが、 荷物を収納したりときどき腰かけたりしたい |
シルバーカー |
こうして整理してみると、歩行器は種類によって機能が違うことがお分かりいただけると思います。
なお、脳血管疾患で片麻痺がある方は、歩行器を操作しにくいかもしれません。この場合は、杖の方が安定することがあります。
用途から歩行器を選ぶ
次に、用途ごとの歩行器の選び方をご紹介します。
屋内で使いたい | 固定型歩行器、交互型歩行器、 キャスター付き歩行器、四輪歩行車 |
病院や施設などの広い環境で使いたい | サークル型歩行車 |
屋外でも使いたい | 四輪歩行車、シルバーカー (短距離であれば固定型歩行器、交互型歩行器も可) |
食器や食事などの荷物を運びたい | トレイ付きの四輪歩行車 |
坂道のある環境でも安全に歩きたい | 電動アシスト付きの四輪歩行車 |
環境によってはこの限りではありませんが、用途から歩行器を選ぶ際の参考にしてみてください。
歩行器とシルバーカーの違いは?
ところで、歩行器・歩行車とシルバーカーには大きな違いがあるのですが、みなさんご存じですか。
歩行器・歩行車は、ハンドルがコの字型で体重をかけることを想定したつくりになっています。
一方、シルバーカーはハンドルが真っすぐで体重をかけるつくりではなく、あくまでも荷物を収納したりときどき腰かけたりするための物です。
加えて、シルバーカーには長く使っていると背中が曲がりやすくなるという欠点があります。
歩行器・歩行車は公的介護保険の対象(レンタル)です。
しかし、シルバーカーは荷物の収納や腰かけのためのものであり、公的介護保険の対象ではありませんのでご注意ください。
安全に使うために気をつけたいポイント
最後に、歩行器を安全に使うために気をつけたい3つのポイントを解説します。
1.ハンドルは力を入れやすい高さに設定する
大転子という、足の付け根の骨が出っ張ったところと、ハンドルの高さが合うように調整します。こうすると、握ったときに肘が少し曲がって力を入れやすくなります。
2.前輪の設定を生活環境に合わせて調整する
四輪歩行車やシルバーカーには、前輪の動きが固定されて回転しないもの、120度回転、360度回転のように段階的に調整できるものがあります。
狭い環境で方向転換をするときは360度回転できるものが便利ですが、自由に動く分、不安定にもなりやすく注意が必要です。
一般的には120度回転くらいの設定が安定します。
3.ブレーキがしっかり効くか確認する
長期間の使用でブレーキの位置がずれてくることがあります。
この場合、立ったり座ったりするときに歩行器が動いて転倒につながる危険があるため、注意が必要です。ブレーキの効きが弱いと感じたときは、福祉用具業者さんに相談しましょう。
まとめ
歩行器を持ち上げるのに苦労されている方を見かけます。歩行器の高さが合わず、前屈姿勢が習慣になってしまっている方を見かけます。
ここでご紹介した内容が、体の状態にあった歩行器を選ぶ際のヒントとなり、皆さんにとって少しでも快適で、安全な生活につながることを願っています。
最近はスタイリッシュなデザイン、男性にも好まれるデザインの歩行器も出てきています。ぜひ、カタログなども覗いてみてください。
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この記事の制作者
著者:安藤 岳彦(介護老人保健施設ひまわりの里 リハビリテーション部長)
認定理学療法士(地域理学療法、健康増進・参加)、中級障がい者スポーツ指導員
1999年秋田大学医学部付属医療技術短期大学部理学療法学科を卒業。
医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院に勤務。介護老人保健施設ライフプラザ鶴巻、医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタル、医療法人社団佑樹会・介護老人保健施設めぐみの里の開設を経て、現職。療養・生活に寄り添うリハビリ専門職として、日々の業務に従事しています。