質問

同居する義理の母について相談です。足腰が悪く、手すりを使ってやっとトイレまで移動できる状態で、最近トイレに間に合わず、粗相をしてしまうことが増えました。しかし付き添いもおむつも拒否し、前もってトイレに誘っても「私はいいわ」と行きたがりません。また、粗相をしてしまった時に私がお世話に行くと、不機嫌になることが多いです。どうしたらよいでしょうか?

回答
浅井 郁子

お母様のトイレがうまくできるようお世話してあげたいという質問者の気持ちが伝わります。トイレ介助はあらゆる介護の中でも、介護される側にとって最も羞恥心を伴うデリケートなもの。そのため、介護者は本人の尊厳を傷つけない配慮が必要です。

ここでは、自尊心を傷つけない心配りと、本人の自立意欲を高めるためのトイレ介助のポイントを解説します。 浅井 郁子(介護・福祉ライター)

【目次】
  1. トイレ介助を拒否する胸のうちは
  2. トイレに行きたがらない人をトイレに誘うには? 
  3. トイレ介助がうまくいくコツは、「信頼関係」
  4. 間に合わなかった場合の適切な対処方法
  5. まとめ

トイレ介助を拒否する胸のうちは

トイレに間に合わないことで起こる排尿・排せつの失敗は、本人にとっては相当なショックを受ける出来事です。しかし、トイレは非常にプライベートな行為であるため、ほんの少しでも誰かの手を借りることには抵抗感が伴います。トイレ介助はもっとも頼みづらい介助であることをまずは念頭に置きましょう。

しかし、まったくサポートをしないわけにもいきません。トイレの失敗を経験すると、高齢者は飲食を控えたり、外に出なくなったりして、次第に生活機能全般に影響を及ぼしていきます。粗相が続くようでしたら、何か良い方法を考えなければなりません。



トイレに行きたがらない人をトイレに誘うには? 

トイレに誘う時は、具体的な状況を指して言うとよいかもしれません。例えば、「食事」や「外出」の際に「その前に食事の前にトイレに行っておきましょうか」とさりげなく声をかけたり、毎日楽しみにしているテレビ番組があったら「テレビが始まる前にトイレに行っておきましょうか?」と聞いてみたりするのです。

本人の1日のスケジュールの中で、食事や外出の前など決まったタイミングでトイレに行く習慣を作ることができれば、失敗の回数を減らすことができると思います。

また、介護者が「私も食事の前にトイレに行きますから、お母さんも一緒に行きませんか」と誘うのもよい方法だと思います。

本人が安心して気持ちよく使えるように、トイレ環境を整えることも大事です。移動がスムーズにいくように、トイレへの動線で障害になっているものがあれば取り除きましょう。

また、トイレの中もこまめに掃除して清潔に保ったり、中と外の温度差が大きくならないように冬季は暖房を設置たり、トイレにも手すりを設置したりするなど、気を配るとよいでしょう。

家族の気遣いや協力のおかげで粗相することがなくなれば、拒否するよりも頼めることは頼んだほうがいいとお母様も思うようになると思います。



トイレ介助がうまくいくコツは、「信頼関係」

トイレの介助は、介護される人と介護する人の間に “信頼感”が生まれれば、だんだんと介助できる範囲が広がります。質問者様の場合も、信頼関係が築ければトイレに誘っても拒否をされることはなくなるかもしれません。

関係性を築くヒントをいくつか紹介しましょう。できそうな方法をトライしてみてください。


心がけたい、自尊心を傷つけない言葉や態度

家族という気におけない間柄であっても、普段見せることのないトイレに関する介助については、言葉や態度に、特に慎重になることが必要です。しかし、トイレのときにだけ優しい声かけをするのはかえってトイレが特別なことと思わせてしまいますから、できるだけ常日頃から表情や態度は柔らかくしたいものです。

つい「また間に合わなかったの?」「それじゃダメでしょう」などと言ってしまうかもしれませんが、こうした反応はご本人の自尊心を傷つけしまうため気をつけましょう。

また、嫌な表情を見せてしまうと、本人が「申し訳ない」という気持ちになってしまうので、お世話できるようになってからも、排泄物の量やにおいについて口にしないように気を付けながら、臭いなどという態度を出さないよう心掛けます。介助中は、普段通りの楽しい会話を心がけるとよいでしょう。

介助するときは、できるだけ本人が自分で行えるように、最小限の援助を心がけます。例えば、ちょっと足を支えてほしいなど本人が手伝ってもらいたいことに協力するようにすれば、本人の尊厳が保たれます。本人が、私のプライバシーを守ってくれていると感じられれば、拒否をしなくなっていくと思います。


無理強いをせず、受け入れてもらえるまで見守ることも大事

いくらご本人のためを思った介助でも、無理強いはしないこと。無理強いをすれば介護を受ける側にも拒否が生まれます。

拒否感が強くなると「トイレ」という言葉だけで反応し、介護者が何気なく言った「トイレに行きますか?」の一言を聞いた瞬間に機嫌を損ねるケースも。トイレ介助で心がけることは、受け入れてくれるまで焦らずゆっくり接することです。

質問者のケースでは、「足腰が悪く、手すりを使ってやっとトイレまで移動できる状態ということなので、最初はトイレまでの誘導を最初の目標にするとよいと思います。少し離れて見守り、移動にどれくらい時間がかかっているかを把握します。

移動までのお世話ができるようになったら、次に便座に腰を下ろすなどの準備までを目標にします。この時もトイレのドアは閉めて外で待つようにしてください。人は排泄中に話しかけられたくないものです。ドアの外からの声かけはなるべく控えます。

このような見守り介助を受け入れてくれれば、信頼感が生まれ始めていますから、次第に本人からちょっと困っていることや手助けしてほしいことを言ってくれるようになってきます。

トイレのドアを開けたままの見守りや拭き忘れている部分だけのお手伝い、着脱のお手伝いなどができるようになると思います。



間に合わなかった場合の適切な対処方法

トイレに失敗したことを知られることは、繰り返しになりますがご本人にとってはとてもショックなもの。気恥ずかしさや、片づけてもらう辛さから、粗相して汚してしまった下着などを隠す人も多くいらっしゃるくらいです。

ですので、失禁した時は本人の気持ちを察して「大丈夫ですよ、すぐきれいにしますから」「私に任せてください」「服が汚れているので着替えましょうね」と明るく声をかけて、本人の精神的な負担を和らげるように心がけます。

外出時や夜間などに尿取りパットや失禁パンツを上手に使い分けるのも一つの方法です。中高年の人も尿漏れ防止のパッドを普段から使用している人はけっこういるでしょう。「私も使っているんですよ」と気さくに話しかけて、お母様には中量~長時間用の尿漏れパッドを使用してもらえると、安心でしょう。

また、ポータブルトイレを寝室に置いて夜間だけそれを使用する方法もあります。ポータブルトイレを使用する場合は、カーテンや衝立などの仕切りを設け、プライバシーを保つようにしてください。



まとめ

トイレ介助では、けっして介護者が率先せずに本人ができることは可能な限り任せて自立を促すことが信頼関係を作る上で大切なポイントになります。信頼関係が成り立てば、拒否されることが少なくなり、「この人になら介助してもらっても構わないわ」という思いをもってもらうことができます。

この信頼関係が成り立つまでには時間とテクニックが必要になりますが、とにかく焦らないことです。尊厳を傷つけない接し方ができれば、次第に受け入れてもらえるようになっていきます。


このQ&Aに回答した人

浅井 郁子
浅井 郁子(介護・福祉ライター)

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。
高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。
東京都民生児童委員
小規模多機能型施設運営推進委員
ホームヘルパー2級