【はじめての方へ】パーキンソン病│4つの症状と治療法
神経性疾患の中でも特に高齢者に多いとして知られるパーキンソン病。その患者数は日本全国で約11万人にのぼり、65歳以上の100人に1人がかかる病気といわれています。
要介護状態を引き起こす疾患としても知られていますが、適切な治療を行えば症状は改善され、毎日の生活を送りやすくなります。
ここでは、パーキンソン病の発症のメカニズムから症状、治療法までを紹介していきます。
パーキンソン病はドパミンの減少により起こる
人の体が筋肉を使ってスムーズに動くのは、脳の大脳基底核というところからそれぞれの筋肉に指令を出しているからです。
この司令を伝える役割をしているのが神経伝達物質「ドパミン」です。このドパミンは大脳の下にある中脳の黒質という場所で作られています。
パーキンソン病は中脳の黒質が変性することで、神経伝達物質であるドパミンを作ることができなくなります。そのため筋肉への指令がうまく伝わらなくなり、思うように体が動かせなくなります。
4つの特徴的な症状
パーキンソン病は10年以上の長い年月をかけて症状が進行していくのが特徴です。脳の大脳基底核の機能が働かなくなると「ふるえ(振戦)」「筋固縮」「無動」「姿勢反射障害・歩行障害」という四大症状があらわれます。
ふるえ(振戦)
じっとしているときにふるえが止まらなくなり(安静時振戦)、動作時にふるえが消えるというのが特徴的な症状です。初期は体の左右どちらかにふるえがでますが2~3年後には反対側にもふるえの症状があらわれます。
親指と人差し指をすり合わせて薬を丸めるような「丸薬丸め運動」や踵で床を細かく打つような動き「タッピング様振戦」が見られます。
筋固縮
筋肉の緊張が進むことで、筋肉の収縮と弛緩のバランスがくずれ、関節のこわばりや脱力感の症状がみられるようになります。
「鉛管現象」といって、患者の手足を動かそうとすると抵抗感を感じたり、「歯車現象」といってガクガクと歯車のように引っかかるような抵抗が断続的に見らえたりします。
このようなパーキンソン病による体全体の筋肉の硬直を「筋固縮」といいます。
無動
動作が遅く、動きが少なくなり、何をするにも時間がかかるようになるのが特徴です。
顔の筋肉がこわばりはじめると「仮面様顔貌(かめんようがんぼう)」とよばれる無表情で一点だけを見つめるような顔つきになります。
ほかにも字を書くとだんだん文字が小さくなっていく「小字症」が見られたり、声が小さくなるといった症状が見られます。
姿勢反射障害・歩行障害
立つ、歩くときにバランスがとりにくくなり、体が傾いたときに体勢をととのえにくくなります。転びやすくなるため、見守ることが必要となります。
歩行時は前傾姿勢で、歩幅が小刻みとなます。手の振りが乏しくなり、一度歩き出すとどんどん早くなる「加速歩行」という歩き方になるのも特徴です。
その他の症状
発症初期から起立性低血圧、排尿障害、発汗障害、脂漏性顔貌といった自律神経症状やうつ病、認知症などの精神症状が見られます。
パーキンソン病4つの治療法
パーキンソン病の治療は、以下の4つの方法により行われます。病気の進行や患者本人の状態などを考慮して治療法が選択されています。
- 薬物療法
- レポドパ(L-ドーパ)とドパミンアゴニストなどを組み合わせて処方します。
- 脳深部刺激療法
- 脳の深部に電気刺激を送る脳深部刺激療法。この療法は脳内に電気刺激を送るため、脳に電極を埋め込むための手術が必要となります。
- 経腸療法
- 最近はチューブを介して腸に直接L-ドーパを投与するのが経腸療法。この治療も内視鏡手術で胃ろうを増設する必要があります。
- 運動療法
- 何もせずに動かないでいると症状が進行してしまうため、運動療法(リハビリテーション)によって、現状を維持するための個別性のあるプログラムを行います。
特定疾病に該当し介護保険の対象となる
進行のスピードの個人差、発症年齢にもよりますが、治療を適切に行うことで天寿を全うできる疾患です。またパーキンソン病は介護保険制度の特定疾病に指定されています。
40~64歳未満でも特定疾病であるパーキンソン病のある方は、介護保険の「第2号被保険者」として。身体介護や生活支援が必要な場合にサービスを受けることができます。
介護保険制度の仕組みについてくわしく見るまとめ
神経伝達物質「ドパミン」が産生されなくなることで、大脳基底核から筋肉への指令がうまく伝わらなくなり、思うように体が動かせなくなるパーキンソン病。
「ふるえ(振戦)」「筋固縮」「無動」「反射姿勢障害」の4つの特徴的な症状のほかにも精神症状、自律神経症状が現れます。薬物療法で症状は改善され、毎日の生活を送りやすくなります。
介護が必要となった際には介護保険サービスを活用したり、将来的に介護施設への入居を検討してみるのもよいでしょう。
イラスト:坂田優子
この記事の制作者
著者:橋本 優子(看護師編集者)
大学卒業後、出版社にてビジネス誌の編集に携わる、その後、出産をきっかけに看護師資格を取得。病院勤務後、「看護」「医療」の知識を活かした情報発信をするため、現在は健康に関する記事の企画、取材、執筆、編集までを行う。
監修者:伊東 大介(慶應義塾大学医学部神経内科・准教授)
1967年生まれ。1992年、慶應義塾大学医学部卒業。
2006年より、慶應義塾大学医学部(内科学)専任講師。総合内科専門医、日本神経学会専門医、日本認知症学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本医師会認定産業医。
2012年、日本認知症学会学会賞受賞。