【はじめての方へ】心疾患(心臓病)は生活習慣の見直しで予防する

心疾患(心臓病)とは

65歳以上の死因の第2位の心疾患(心臓病)は、加齢に伴って増加する傾向にあり、90~94歳では死因の第1位となります。心疾患は年をとれば誰でもかかる可能性がある病気ですが、食事や運動などで予防できる病気でもあります。

ひとくちに心疾患といっても多岐に渡りますが、ここでは高齢期に特に多い3つの疾患と、症状や予防法について解説します。

なぜ年をとるほど心疾患は増えるのか?

心疾患をもつ患者さんが急激に増えている理由の一つとして、日本の高齢化が進み老年人口が増えたため、それに比例して有病者の数が増えたことも影響しています。

心臓は握りこぶし大の大きさの臓器で筋肉や心臓弁などから構成されており、毎日休むことなく全身に血液を送るポンプの役割をしています。

年を取っていくにしたがって心臓も老化したり病気になったりしていくので、これは誰もが避けられない生理的変化といえます。老化や病気によって正常な心臓の機能が障害された状態を心疾患(心臓病)といいます。
 

高齢者に多いのは、心不全、虚血性心疾患、心臓弁膜症

心疾患のなかでも特に高齢者に多いといわれるのが心不全、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、心臓弁膜症です。この3つの疾患についてメカニズムと特徴を紹介していきます。

心不全

心不全とは、心臓を動かすポンプ機能が低下し悪化することで生じます。どの心疾患であっても、増悪すると最終的には心不全になってしまいます。

たとえば虚血性心疾患や心臓弁膜症や不整脈といった心疾患はもちろんですが、高血圧や糖尿病など生活習慣病などが原因で心不全になることもあるのです。

心不全の症状

初期症状は「疲れやすくなった」「少し動いただけでだるくなる」というものです。

夜間に突然息苦しさが現れて、最悪の場合、死に至るような急激な経過をたどることもありますが、多くの場合は足のむくみなどが現れ、体重が増加したり階段や坂道を上っただけで息切れを生じたりする慢性的な症状でしばらく経過することがほとんどです。

さらに心不全が悪化していくと階段や坂道を昇っただけで症状を自覚するようになり、最終的には安静時にも呼吸苦を感じるようになっていきます。

特に階段や坂道をのぼったときの息切れやむくみは高齢者が自覚することが多いものですが、この症状が見られたら年齢のせいにせずに必ず循環器内科を受診するようにしましょう。

虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)

老化や生活習慣病を背景として、心臓の筋肉(心筋)自体に酸素と栄養を送っている冠動脈に血流障害を生じるものを虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)といいます。

この病気では冠動脈が、動脈硬化やコレステロールの蓄積(プラーク)によって狭くなったり、詰まったりするため、心筋に血液を供給できなくなります。

この状態を虚血と呼びますが、一定時間が経過すると心筋の動きが悪くなり最終的には心筋が壊死(えし)してしまいます。

患者さんの背景は、男性では60代以降に多く、女性では70代以降に多いのがこの疾患の特徴です。心筋梗塞は血管内のプラークが壊れて血栓ができることで冠動脈が完全に閉塞することで起こります。

また、狭心症は動脈硬化やプラークによって血管が狭窄することで血流が悪くなって生じます。

心筋梗塞や狭心症では急激な胸痛を生じるような印象があるかもしれませんが、高齢の患者さんは疲れやすさやだるさとして感じることもあります。

そのため、これらの症状を年齢のせいだと勘違いしてしまうことがありますのでご注意ください。

急性心筋梗塞の症状

急性心筋梗塞の典型的な症状は胸が苦しいという症状ですが、自覚症状はさまざまで「ゲップがでる」「食後の胃もたれ」などを訴える患者さんもいます。急性心筋梗塞の治療をせずにそのままにしておくと死に至ることもありますので注意が必要です。

急性心筋梗塞について詳しく見る

狭心症の症状

狭心症は最初に疲れやすさやだるさ、運動すると息切れするといった症状がですが、その状態が進行すると少し動いただけでも息切れし、最終的には安静時であっても胸痛や息苦しさを感じるようになります。

狭心症について詳しく見る

心臓弁膜症

大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁の4つの心臓弁のどれかが、老化や変性により機能障害をきたして生じる疾患を心臓弁膜症といいます。

機能障害とは心臓弁がうまく閉まらなくなる(閉鎖不全)ことで血液が逆流したり、開かなくなる(狭窄)ことで血液が心臓弁を通過することができなくなったりして、心臓に負荷がかかった状態を指します。心臓弁膜症が進行すると最終的には心不全を合併します。

75歳を超えると、高齢者の10人に1人が心臓弁膜症といわれています。特に高齢者に多い心臓弁膜症として大動脈弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜん)の二つがあげられます。

大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症の症状

大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症の初期症状は疲れやだるさ、息切れです。進行すると少し動いただけでも息切れ、疲れやすさがでてくることになり、最終的には心不全となります。大動脈弁狭窄症では進行すると失神、胸痛といった症状が現れることもあります。

心疾患の予防に必要なこと

高血圧や心臓に生じた雑音などの異常を認めた場合はもちろんですが、息切れや疲れやすさといったありふれた症状でも、年齢のせいにしないで、循環器内科で心エコー検査をはじめとした診察を受けることおすすめします。

また正しい血圧の管理も必要です。1回だけ測って高い、低いと判断するのではなく、最低でも2週間程度、毎日朝と夜の2回測定し記録しましょう。

75歳以上の方では上の血圧(収縮期血圧)が135mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が85mmHg以上であれば高血圧である可能性があります。その場合は循環器内科を受診しましょう。

今日からできる心臓に負担をかけないための生活改善法 

生活習慣を改善すると早い人の場合、2週間~1か月程度で血圧やコレステロール値、体重に変化が現れはじめます。

適度な運動
ラクからややきつい運動(有酸素運動)を週に3日、30分以上しましょう。散歩やウオーキングがおすすめです。
無理せず減塩する
高齢の方であれば高血圧などの重症化の予防を目的として、塩分は1日6g以下がすすめられています。味付けを工夫することで無理なく塩分を減らせます。

【簡単な減塩法】
・ゆず、しそ、レモンなどを使って風味を変えた味付けでの減塩。
・ポン酢、減塩しょうゆを調味料に加えることでの減塩。
・うどんやラーメンなどの汁もののつゆは残すことでの減塩。
などがおすすめです。
 塩分制限について詳しく見る

心臓に負担をかけない入浴法
お湯の温度は40~41℃で、湯船に入ってからでるまで長くても10分以内にしましょう。10分以上の入浴は心臓に負担がかかります。
ヒートショックを防ぐために

まとめ

高齢になるほどリスクが増えるのが心疾患です。疲れさすさやだるさを感じたら年齢のせいにせず、病院を受診しましょう。また心臓に負担をかけないために生活を工夫することも大切です。週3回、1日30分程度の散歩や無理のない減塩、40~41℃の湯船での10分以内の入浴がおすすめです。

イラスト:坂田 優子

この記事の制作者

橋本 優子

著者:橋本 優子(看護師編集者)

大学卒業後、出版社にてビジネス誌の編集に携わる、その後、出産をきっかけに看護師資格を取得。病院勤務後、「看護」「医療」の知識を活かした情報発信をするため、現在は健康に関する記事の企画、取材、執筆、編集までを行う。

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監修者:柴山 謙太郎(東京心臓血管・内科クリニック 院長)

厚生労働省 臨床研修指導医
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・内科指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本超音波医学会 超音波専門医・超音波指導医

HP東京心臓血管・内科クリニック

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