リロケーションダメージとは?症状や対策・予防まで詳しく解説
リロケーションダメージは急激な環境変化に適応できずに、心身に不調をきたす状態。とくに高齢者が施設入居や転居、入院などをする際に起こりやすいものです。ご本人が無理なく生活できる環境の施設を探すなど、予備知識があれば十分に対策や予防が可能です。
リロケーションダメージとは?
リロケーションダメージとは、施設入居や引っ越しなどによる急激な環境変化でストレスがかかり、心身に悪影響を及ぼすことです。高齢者はとくに環境変化の影響を受けやすく、不安や混乱につながりやすいです。
しかし、高齢になると施設入居や入院など、環境を変えざるをえないケースもあるでしょう。そのため、リロケーションダメージを適切に対策・予防することが大切です。
リロケーションダメージの原因
原因を把握しておけば、転居や施設入居、入院などの際にも配慮しやすいです。とくに認知症の方の場合、記憶力や思考力の低下によりリロケーションダメージが起きやすいので注意しましょう。
居心地の悪さ
リロケーションダメージの大きな原因に、慣れ親しんだ生活環境が変わることによる居心地の悪さが挙げられます。
新しい場所では部屋の間取りや物の配置などを覚え直す必要があります。高齢になると記憶力が低下するため、新しいことを覚える負担は多大です。生活に慣れるまで居心地の悪さが続くことで、ストレスを溜め込みやすくなります。
生活リズムの変化
入院や施設入居などの場合、生活リズムの変化でリロケーションダメージを受けることも考えられます。
病院や施設では起床や食事など、決められた時間に合わせて生活する必要があります。長年の生活習慣やリズムを変えるのは容易ではありません。とくに一人暮らしで自由度の高い生活をしていた方の場合は、ストレスが大きいでしょう。
人間関係の変化
転居や入院などに伴う人間関係の変化も、リロケーションダメージの原因になります。
施設や病院ではスタッフや利用者が常にいるため、ご本人の性格によってはストレスを抱えることも。見ず知らずの人と関わることで、緊張したり居心地の悪さを感じたりするケースもあるでしょう。
リロケーションダメージで起こる症状
リロケーションダメージによってさまざまな症状が起こる可能性があります。これらの事態が発生しないように、あらかじめ概要の把握に努めましょう。
せん妄
せん妄とは、軽度の意識障害の一つで下記のような症状が現れます。リロケーションダメージがきっかけとなり、せん妄を誘発するケースがあります。せん妄は一時的な症状のため、ご本人のストレスを緩和できれば改善すると考えられています。
せん妄による主な症状
- 集中力の低下
- 幻覚や妄想
- 昼夜逆転
- 興奮状態
- 情緒不安定
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認知症
リロケーションダメージが認知症を引き起こしたり、症状を悪化させたりすることもあります。認知症は物忘れなど、日常生活や社会生活が困難になる状態の総称です。症状はせん妄と類似しています。
しかし、原因を解消することで治せるせん妄に対し、認知症は徐々に進行していき現在の治療法では完治はしません。
認知症の症状例
- 記憶力の低下
- 日付や時間、場所がわからない
- 幻覚や妄想
- 暴言、暴力
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うつ病
リロケーションダメージがきっかけにうつ病が発症するケースもあります。高齢者の場合は、身体的な不調が現れやすいのが特徴です。とくに下記のような症状が見られる場合は、うつ病の可能性も考えられるため、直ちに医療機関を受診しましょう。
高齢者のうつ病に多い症状
- 頭痛
- 胃痛
- 息苦しさ
- 身体のしびれ
- めまい
リロケーションダメージの対策・予防方法
リロケーションダメージは適切な対策を打つことで、発症のリスクを下げることができます。環境が変化する場合も、ご本人が元気で過ごせるように配慮しましょう。
早期に転居や施設入居する
心身に健康上の問題が起こってからではなく、ご本人が元気なうちに転居や施設入居を決断しましょう。認知機能や身体機能が衰えていると、リロケーションダメージも大きくなります。環境変化がある場合は早期に決断し、転居先に慣れるための時間を確保しましょう。
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ショートステイを利用する
施設入居を考えている場合はショートステイを利用して、施設に慣れるのがおすすめです。ショートステイとは、施設に短期間宿泊できる介護サービスです。施設スタッフと顔見知りになったり、施設内の様子を覚えたりすることで、急激な環境変化を防ぐことができます。
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ご本人に合った施設を選ぶ
ご本人に合った快適に過ごせる施設であれば、リロケーションダメージのリスクも軽減できます。
内向的な性格の方であれば個室のある施設を選んだり、社交的な方ならレクリエーションが充実した施設を探したりするなどです。ご本人のご希望をくみ取り、負担が少ない環境の施設を選びましょう。
リロケーションダメージが起きた場合は?
リロケーションダメージが起きた場合は、ご本人が安心できる居場所やスペースを作ってあげましょう。個室を用意したり、馴染みの家具や持ち物を近くに置いたりするのがおすすめです。
ただし基本的には、事前に対策してリロケーションダメージを防げるに越したことはありません。ご本人がお元気なうちに施設入居を検討するなど対策しましょう。
リロケーションダメージを防ぐためにも、ご本人に合った施設選びを
急激な環境変化が原因で心身に悪影響を及ぼすリロケーションダメージ。避けられない変化がある場合は、元気なうちに行動したり、徐々に慣らしたりすることで対策できます。施設に入居する場合は、ご本人が無理なく快適に過ごせる環境を慎重に選びましょう。
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イラスト:安里 南美