【知っておきたい】処方せんの読み方と確認したい4つのポイント

みなさんは処方せんの内容を読んだことがありますか?処方せんには、薬の種類や使い方について医師の指示が書かれています。最近は手書きの処方せんが減り、専門知識がなくても内容が分かるようになりました。

今回は、処方せんの見かたから、スムーズに薬を受け取るために、薬局でわたす前に確認しておきたいポイントと注意点について薬剤師が解説します。処方せんの知識をもつことで、より安全な治療へとつながります。ぜひお役立てください。
 

処方せんとは薬に関する指示書のこと

処方せんは、医師から薬剤師へ、薬に関する指示をするための文書です。最近は機械化が進み、手書きの英語や略語などが減って、読みやすくなりました。

決まりがわかると、薬局での待ち時間を少なくできることもあります。たとえば、初めてもらう薬とわかれば、前もって電話し、準備をたのむことも可能になるでしょう。これは、在庫していない薬の場合、数時間から2日間くらい時間がかかることもあるためです。

何度も足を運ぶより、一度ですませるほうがいいですよね。

処方せんがないと困ること

薬をもらうために病院のそとへ出るって少し面倒ですよね。現在の医薬分業(いやくぶんぎょう)が主流になる前は、病院のなかで薬を受けとることが一般的でした。

しかし、医療の発展とともに薬の種類も増えています。これにより、医師と薬剤師の両方の知見から、確認や情報提供をすることが重要になってきました。そこで、多くの院外(いんがい)薬局が登場することとなり、今では全国で6万件もの薬局があるといいます。

また、処方せんがないと、患者さんにとって次のような困ることがあり、意外と知られていません。

【処方せんがないと困ること】

  • 文書としての記録が残らないため、あとからの処方確認がむずかしい
  • 受診後に医師の指示を確認できるものがない
  • 薬局が選べないため、時間や情報収集する場所も限られてしまう
  • ※薬局で3年間の保存が定められています。

受けとったらすぐに確認したい4つのポイント

どの処方せんにも次の内容が書かれています。

  • 患者さんの情報(保険番号、氏名、生年月日、性別)
  • 医療機関の情報(名称、連絡先、処方医)
  • 処方の指示(薬の名前や量、使い方など)
  • ジェネリック医薬品(後発医薬品)への変更について
  • 残薬がある場合に薬局へもとめる対応の指示

処方せんを薬局にだして薬剤師から、「問い合わせのため、お待ちください」と言われたことはありませんか?この問い合わせでいちばん多いのは、用法や用量に関するもの。これについては、専門的な知識がないとわかりません。

一方で、そのあとにつづく、残薬の数合わせ、処方について安全性の確認、日数の過不足、カプセルや錠剤といった飲みやすさに関するものは、見かたを知るとわかります。これらについては、処方せんを受けとってすぐに確認しましょう。

病院内で気付いて申し出て、変更になれば、薬局での待ち時間も少なくなります。

次の4つのポイントは、とくに専門的な知識がなくても見やすい部分です。

【1:医師との会話にあっているか】

「その薬は残っているからいらないって言ったのに…」という経験は誰しも一度はありますよね。

問診時、医師との話にそった薬の内容であるか確認しましょう。薬そのものの、細かい変更については、見分けることが難しいかもしれません。しかし、「何日分」と書かれている日数や、「何回分」といった回数は、簡単に確認することができます。

【2:飲むタイミング】

介護のためデイサービスなどに通っていたり、保育園や小学校に通っていたりする子どもの場合は、飲める時間帯が限られていることもあるでしょう。「1日3回、毎食後」や「1日1回朝食後」といったタイミング(用法という)について、あらかじめ確認することが大切です。

【3:薬の形】

嚥下障害のある高齢者や、子どもで錠剤やカプセルがまだ飲めないとき、錠剤だと困りますよね。このとき、薬の名前にはかならず「錠」や「カプセル」といった記載があります。飲みづらい錠剤などを粉やシロップに変えることができる薬もあるので、注意してみましょう。

【4:ジェネリックの変更】

薬代の安いジェネリック医薬品(以降ジェネリック)を希望する場合は、「変更不可」と「処方医署名欄」を確認しましょう。医師によっては、何らかの理由があって「変更不可」とすることもあるようです。また、変更不可の記載がなく、処方が一般名※で書かれているときは、ジェネリックが優先されます。

  • ※一般名:薬の有効成分の名前で全国共通。薬品名とはメーカーごとに異なり、それぞれの商品名をさす。
ジェネリック医薬品は先発医薬品と何が違う?その特徴と選び方

処方せんの期限は4日間!期限を過ぎたら再発行が必要

処方せんには期限があります。間違えやすいのは、発行日を「ふくめて」4日以内ということ。土日祝日も関係なく4日間です。

期限を過ぎてしまったら、薬局から病院へ問い合わせをすることが多いでしょう。そこで、医師の許可が得られれば、薬を受けとることがでます。ただし、病状や薬の種類によっては、あらためて受診する必要があり、すべてが許可される訳ではありません。

また、最近では、お薬手帳アプリから処方せん画像を送信できるものも多くあります。しかし、薬局では、原本がなければ調剤はできません。つまり、アプリやFAX、コピーを送っても、期限は延長できないので注意しましょう。

お薬手帳アプリは機能より使いやすさで選ぶ

「再利用」できる処方せん|分割調剤とは

2018年、処方せんに一部の記載が加わった「分割処方せん」が登場しました。それは、紙面の上部に「分割指示に係る処方箋 _分割の_回目」と書かれた処方せんです。これは、3回を上限に再利用できます。ただし、外国で一般的な「リフィル処方せん」※とは異なることに注意しましょう。

分割処方せんは次のような場合があてはまります。

  • 長期処方された薬の保存が難しいとき
  • 初めてつかうジェネリックのため、短い期間で試してみるとき
  • 薬剤師のサポートが必要と、医師が判断したとき

症状が安定している患者さんは、診察回数を減らすことで、病院の待ち時間を減らすことが期待されています。このとき、処方せんとは別に受けとる「分割指示に関わる処方せん」も、一緒に薬局へ持参しましょう。

  • ※リフィル処方せん:一定期間内に繰り返し使用することのできる処方せんで、海外先進諸国では導入されていますが、日本では検討中です。

処方せんがなくても薬が買える?|零売薬局とは

処方せんがなくても、医師の診察がなくても、買える医療用の医薬品が一部あります。「零売(れいばい)薬局」といい、受診が難しいときに、やむを得ず買う場合に限り、薬局内で薬剤師が販売するものです。

しかし、保険が利かないため、価格は高く感じるでしょう。また、薬剤師が調剤用の薬の箱から、必要最小限の量だけを出して(分割といいます)販売するため、箱には入っていません。そして、購入できるのは、その薬をつかうひとに限られています。

いつもつかっている薬が次の受診まで、足りなくなってしまった人には便利でしょう。ただし、「受診しなくてもいいんだ」と思うのは間違いです。

長く同じ薬を続けていても、定期的に医師と薬剤師との両方から、情報提供を受けることが安全につながります。処方せんを受けとることでのメリットを活用し、よりよい健康管理につなげていきましょう。

薬の正しい保管方法と飲み忘れ対策

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

曽川 雅子

著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)

東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。

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