【はじめての方へ】かかりつけ薬剤師を活用する3つのメリットと選び方

かかりつけ薬剤師とは2016年から始まった制度で、患者さんが一人だけ指名する薬剤師のことです。

処方薬や市販薬など薬の知識だけでなく、健康食品や介護用品など幅広い知識と経験をもとに、患者さん個々に寄り添い健康をサポートします。また24時間いつでも連絡できるほか、必要に応じて医師へ処方提案することもあります。

ここでは「かかりつけ薬剤師/薬局」のメリットや活用法、必要な手続きと費用、そして選び方について解説します。健康に関する相談ができる身近な存在として、かかりつけ薬剤師をぜひ活用してみましょう。
 

かかりつけ薬剤師制度を活用するメリット

「かかりつけ薬剤師」は、薬や病気、健康管理や介護のことなどを幅広くサポートできる、知識と経験が豊かな薬剤師のことです。このかかりつけ薬剤師がいて、処方せんのほかにも健康について相談できる薬局のことを「かかりつけ薬局」といいます。

薬や体調変化で不安なとき、気軽にいつでも聞ける環境があったら安心ですよね。加えて、自分の薬をすべて把握している薬剤師なら、より安心して相談できるでしょう。

この制度には、患者さんが安心して薬をつかえる3つのメリットがあります。

かかりつけ薬剤師3つのメリット

1.異なる病院の薬もまとめて把握し、副作用や相互作用などのリスクにもいち早く対応
2.24時間いつでも連絡がとれて在宅医療のときにもつづけてサポート
3.ほかの医療機関とも連携がととのっている

ほとんどの薬局にかかりつけ薬剤師は在籍している

多くの薬局に在籍していますが、すべてではありません。かかりつけ薬剤師になるには薬剤師免許を取得するだけでなく、さまざまな条件があります。

  • 例、
    ・3年以上の薬局勤務経験がある
    ・当該薬局に12カ月以上在籍している
    ・研修認定薬剤師を取得している

※2020年8月時点

このように、薬剤師としての経験が豊富で、専門的な知識を有していないと「かかりつけ薬剤師」になることはできません。

かかりつけ薬剤師はこんな人におすすめ!

どんなひとが「かかりつけ薬剤師」を利用しているのでしょうか?

活用事例としては、休日や夜間などの薬局が締まっている時間でも、急な体調変化や薬が処方されたときは、電話での相談のほか、実際に薬をお渡ししたりします。(処方せんは必要です)

急に生じるものに限らず、長く飲んでいる薬については薬学的知見からその必要性を確認し、医師へ減量または中止などの提案もおこなうこともあります。

また、薬のほかサプリメントや健康食品、食事や運動、介護に関することなどもアドバイスをしてくれることもあり、そのサポート内容は多岐に渡ります。

 

【こんな人におすすめ】

  • 24時間いつでも健康相談にのってほしい
  • 複数の医療機関にかかっている
  • 6種類をこえる薬を飲んでいる
  • 薬の副作用に敏感またはアレルギーがある
  • サプリメントや健康食品をよくとる
  • 在宅医療を検討している
  • 子育てや介護など急な病態変化が心配
  • 抗がん剤などリスクの高い薬をつかっている

 

利用手順|まずは同意書に署名 費用は1会計60円~100円

かかりつけ薬剤師は、「かかりつけ薬剤師指導料」といって、処方せん1回の受けつけあたり、60円〜100円※ほど追加でかかります。(3割負担のとき)
これは、処方せんのお会計に合算して支払います。

※2020年8月時点での調剤報酬点数表にしたがい計算しています

利用手順

まずは薬局で「かかりつけ薬剤師」を申し込み、同意書などの手続きをします。いつも丁寧な対応と、このひとなら信頼して薬のほかにも相談をしたいという薬剤師に、かかりつけ薬剤師になってほしいとつたえましょう。

ただし、指名できる薬剤師は、すべての薬局を通じて1人だけです。

もし、引越しやそのほかの理由で、かかりつけ薬剤師を変更や取り消したいときは、いつでも申し出ることができます。

かかりつけ薬剤師がいなくても薬はもらえる

かかりつけ薬剤師が不在のときは、その薬局に勤務するほかの薬剤師が、かかりつけ薬剤師の記録した情報をもとに対応します。この場合、追加の費用はかかりません。

また、薬局内では、その後、担当のかかりつけ薬剤師に情報が共有され、必要があれば電話で連絡をもらえるなど、継続的にサポートをしてくれます。

「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」のちがい

「かかりつけ薬剤師指導料」と似たような名称で、「かかりつけ薬剤師包括管理料」というものがあります。これは、医療機関において認知症などで特別な管理や診療を受けている患者さんが対象で、医師と随時、こと細かに情報共有がおこなわれます。

ムリに薬剤師を指名しなくていい

  • お気に入りの薬剤師がいないときは、ムリに指名する必要はありません。そのときは、いつも行く馴染みの「かかりつけ薬局」を決めておくことが、安全に薬をつかうためにも大切です。困ったときには、すぐに薬局へ相談できるような環境を、普段からととのえておきましょう。

健康・医療に関して幅広い知識を持つ薬剤師

かかりつけ薬剤師は、健康に関するあらゆる相談内容にも適切に応えられるように、経験や知識のほか、積極的に地域の医療についても活動している薬剤師です。

手続きをするときに、24時間連絡のとれる電話番号や勤務表をうけとります。週32時間をこえて勤務している薬剤師のため、電話だけでなく、直接、薬局に行って相談することもできます。

そして、薬はもちろん、災害対策や医療にかかわる制度、公衆衛生などの知識もつねに研修を重ねているので、「薬とは関係ないかも」という内容であっても相談してみるとよいでしょう。

また、「かかりつけをお願いして断られる場合もあるのでは?」という疑問を持つ方もいらっしゃいますが、通常お断りすることはほとんどありません。強いていうなら、かかりつけ薬剤師としての条件をクリアした人員が在籍していないことが考えられます。
 

かかりつけ薬剤師・薬局の探しかた

では、どうやって、かかりつけ薬剤師・薬局を探せばよいのでしょうか?具体的な方法をあげてみます。

店舗にかかりつけ薬剤師制度を掲示している

薬局の店頭や店内にわかりやすくかかりつけ薬剤師のステッカーやポスターを掲示しているところもあります。

また、薬剤師から「かかりつけ薬剤師制度を利用してみませんか?」と声かけやアンケートを行うこともあるので、興味をお持ちであれば話を聞いてみるとよいでしょう。

薬局イベントに参加してみる

薬局が地域の一般の人むけに、健康イベント(薬の相談会、栄養相談会など)を開催するときなどは、かかりつけ(薬剤師・薬局ともに)を探すチャンスです。かかりつけ薬剤師を指名できる薬局は、店舗内に掲示物などでお知らせが貼ってあります。

処方せんのほかにも薬局を活用してみる

特別なイベントがなくても、サプリメントや一般用医薬品などを薬局へ買いに行ったとき、または相談しに行ったとき、丁寧に対応してくれた薬剤師がいたら名前を聞いておきましょう。

薬局を選ぶコツ

薬局を利用するときには、ひとりの薬剤師だけでなく、周りの勤務するひとにも注目して見ることが大切です。

なぜなら、かかりつけ薬剤師の業務は、その薬剤師ひとりの力で患者さんをサポートするのではなく、ほかの薬剤師やスタッフとも連携をとりながら、総合的におこなうものだからです。

在籍するスタッフをふくめて薬局内の雰囲気がよく、きちんと整理整頓されており、掲示物などの患者さんに対するお知らせも随時おこなっている薬局を選びましょう。

公的な情報サイトから薬局を探す

すべての薬局が、毎年かならず更新する厚生労働省の「薬局機能情報提供制度」というものがあります。

これは、一般のひとが医療機関を簡単に検索できるようにつくられたシステムです。このサイトから、地域や営業時間のほか、特定の病気や通じる言語など、かかせない条件を入力し、近くの薬局を探すことができます。

長く通える条件でいくつか検索してみてから、実際に足を運んでみるのもよいでしょう。

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いかがでしたでしょうか。かかりつけ薬剤師は必ず指名しなければいけないといった決まりはありません。「この薬剤師に相談したい!」と感じることが重要です。いつでも相談できる薬剤師・薬局をみつけ、継続的なサポートを得ることで、安全な健康管理につなげていきましょう。

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

曽川 雅子

著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)

東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。

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