【節税もできる】OTC医薬品のメリットと安全に購入する3つのポイント
スイッチOTCとは、処方薬(医師が処方した薬)のうち、副作用が少なく安全性が高いと認められたものが、市販薬(OTC)に転用(スイッチ)した医薬品のことです。ドラッグストアなどで気軽に購入することができるので、医師の診察や薬局の待ち時間がいらなくなるなど、多くのメリットがあります。
ここでは、その考え方やOTC薬の種類、購入時と使用するうえでの注意点を解説。また、節税対策にも活かせる「セルフメディケーション税制」などについて、未病の第一線をいく薬剤師が紹介します。
これまでの市販薬との違い
「スイッチOTC」と通常の市販薬とのちがいは何でしょうか?
OTC(over the counter)は、“カウンター越し“という意味で、薬局やドラッグストアなどで買える市販薬をさします。そして、「スイッチOTC」は、もともと医療用として長くつかわれ、副作用が少なく安全性の高い成分を一般向けに転用した薬をさします。
花粉症や風邪、肩こり、水虫、頭痛などの比較的軽い症状を、効き目のよい成分で早くから治療することができます。しかし、間違った使いかたや併用薬によっては、副作用や相互作用が出ることもあり注意が必要です。
スイッチされて原則3年間は、対面で薬剤師の説明をうけてから購入します。
どこで買えるの?OTCの販売区分とは
市販薬には種類や区分があり販売方法がことなります。スイッチOTCは、陳列棚のポップ(説明札)に「医療用と同じ成分」と書かれていたりしますが、買うにはある決まりがあります。
薬剤師がいないと買えない?陳列のちがい
要指導医薬品と第1類医薬品は、その性質と安全性のリスクから薬剤師による説明が必要で、情報提供するカウンター内や鍵付きのケースなどに陳列しています。
また、第2類医薬品は、薬剤師のほか登録販売者から、必要に応じ説明をうけてから買います。
この第2類医薬品のなかで、子どもや妊娠中の方にとって特に注意が必要だったり、依存性のある成分などは、「指定第2類医薬品」として、カウンターから7メートル以内に陳列しています。
指定をのぞく第2類医薬品と第3類医薬品には、陳列の決まりはありません。
調剤薬局のほかネットでも買える!
2014年6月から、すべての市販薬がネットでも買えるようになりました。スイッチOTCも3年間をすぎて安全性が確認されると市販薬の扱いとなり、ネットでも買えるようになります。
ネット販売をする薬局やドラッグストアは、販売サイトに加え、実在する店舗の運営もしています。これらは、厚生労働省の「一般用医薬品の販売サイト一覧」から探すことができ、お住まいの近くにある店舗の情報を知るのにも便利です。
安全に購入するための3つのポイント
スイッチOTCは効き目がよい反面、正しく使わないと思わぬ健康被害がおこることがあります。
かかりつけの薬局なら、患者さんの常備薬や病状なども考慮し、より安全に買うことができます。かかりつけ薬局がないひとも、薬の購入をきっかけに薬局を活用してみるのもよいでしょう。
安全に購入できるポイントは次の3つです。
①症状や状況などの情報を細かくつたえる
早く治したいと思うあまり、情報を伝えきれずに適した薬を選べないと、症状が悪化することもあります。専門家(薬剤師、登録販売者)は、症状、年齢、副作用や受診の有無とその内容、妊娠・授乳、その薬は初めて飲むかなどを質問したうえで薬を提案します。
面倒だなと思っても、きちんと答えることが安全です。
②信頼できる販売店か確認する
購入時には薬の情報のほか、担当した薬剤師または登録販売者の氏名や勤務表、店舗の営業時間外をふくめた連絡先や相談体制なども一緒にうけとります。いつでも相談できる体制があるか確認しておくと安心です。
またネット販売には許可が必要です。次のような掲載情報がない販売サイトや、あやしいと感じたら購入せずに、厚生労働省「あやしいヤクブツ連絡ネット」に連絡しましょう。
【ネットで薬を買うときはここをチェック!】
- 店舗の正式名称や住所
- 店舗の開設者など許可証
- 相談用の連絡先
- 実際の店舗の画像
- 勤務している薬剤師などの氏名
- 医薬品の画像や使用期限の表示
③ばくぜんと服用しない
たとえば、頭痛薬でイブプロフェンというOTC薬があります。「いつも使っているから大丈夫」といって安易に飲み続けると薬物乱用頭痛(※)を引きおこすこともあります。
また、かぜ薬の場合はおよそ3~5日間つかって治りが悪いときには受診することが基本です。「薬を変えたら治るかも」と次々に変えて試している期間に感染症にかかっていることもあります。
薬剤師などの専門家は、これらの重症化も視野にいれて薬を提案します。使用期間や症状の変化もつたえ、受診すべきかどうかのアドバイスをもらうことが安全です。
- ※頻繁な鎮痛剤の服用により、痛みに対する感受性が高まってしまうことで頭痛そのものが重症化してしまうもの
スイッチOTCのメリット&デメリット
医師の診療や薬局での待ち時間がないのは大きなメリットです。数々のメリットがある一方で、デメリットもあります。
たとえば、商品名が統一されていないこと。スイッチOTCの多くは、医療用としての認知度があり、その成分名が商品名の一部であることが多いです。
しかし、なかには既存の商品名のまま語尾が異なるだけ、といった類似品もあります。そのため、併用薬として診察時や薬局で医療従事者(医師や看護師、薬剤師など)につたえるときは、正式な商品名をつたえることが重要です。
【OTCのメリット】
- 診療や薬局での待ち時間がかからず費用も安くすむことも
- セルフメディケーション税制で節税になる
- 箱をみただけで何の薬か分かりやすい表記
- 処方薬と異なり、箱ごと買うので使用期限が分かる
- 再発した病気を早期に治療できる(花粉症、口内炎、ヘルペス、カンジダなど)
【OTCのデメリット】
- 商品名だけでは成分が分かりにくいことも
- 価格がメーカーごとにちがう
セルフメディケーション税制を活用した節税
2017年1月から始まったセルフメディケーション税制。これは、対象となる薬の購入額の合計が、1年間で12,000円を超えたときに、確定申告の対象となる所得控除の制度です。
対象薬の箱には『セルフメディケーション/税/控除/対象』というマークがあるほか、レシートや領収証に「★」「※」などのマークや対象であることが書かれています。このレシートや領収証を提出する必要はありませんが、捨てずに、1年間はとっておきましょう。
【対象となる人や条件】
- 所得税、住民税を納めている。
- 1年間に健康の維持増進および病気の予防(特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診断、がん検診)をおこなっている。
- 1年間で、12,000円以上の対象となるOTC医薬品を購入している(同一世帯で合算)
スイッチOTCをはじめ、市販薬を賢く安全につかうことで、セルフメディケーションを積極的に健康管理に取りいれていきましょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)
東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。