【知っておきたい】お薬手帳の活用法|医療費節約などのメリットも
薬局でお薬手帳を何となく提示していませんか?お薬手帳は処方された薬を記録するだけでなく、実は多くの活用法があります。処方薬や市販薬はもちろん、病状や説明を書き込んで記録を積み重ねることは、健康管理をするうえで大切です。
ここでは、お薬手帳の正しい使用方法や従来の紙の冊子と、スマホで使えるお薬手帳アプリとのちがいとそれぞれのメリットについて薬剤師が解説します。ぜひご家族みなさまの健康管理にお役立てください。
お薬手帳とは
お薬手帳とは、いつ、どこで、どんな薬が処方されたかを記録する手帳のことです。2000年度より全国の薬局で制度化され、2017年には、薬局を利用するひとの94%が保有するまでに浸透しました。薬局ならどこでも無料でもらうことができ、費用はかかりません。
東日本大震災では、これにより飲んでいる薬や治療の経緯が確認できたとして、国も利用を勧めています。また、複数の病院を受診するときや、旅行先での体調不良、市販薬を買うときなど様々なシーンで役に立ちます。
【お薬手帳に記録されるもの】
- 処方薬について:調剤日、薬の名前と飲みかたや用量、注意事項など
- 患者さんについて:氏名、生年月日、連絡先、アレルギーや副作用歴、病気など)
薬局での会計が安くなる!お薬手帳のメリット
最近では、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の普及が進み、似たような薬の名前が多くて覚えづらくなりましたね。そんなとき、この手帳があれば、薬の名前のほか、mg数などの規格も正確にわかります。また、特別にお願いをしなくても、提示するだけで飲み合わせや相互作用を調べてもらうことができます。
加えて、副作用の既往やアレルギーの情報、これまでの治療の経緯がわかることにより、災害や移転、突然の救急診療時も、安全でスムーズな治療がうけられることでしょう。
単に、医療機関が一方的に記録を積み重ねていくだけではありません。そのときの体調の具合や、直接言いづらい希望や不安なども書き込んで、医師や薬剤師にその内容をくみ取ってもらうこともできます。
メリットは治療に関すること以外にもあります。2020年4月からは、3ヶ月以内に同じ薬局へ手帳を持っていき利用すると、3割負担のひとで、40円ほど会計が安くなることになりました※。
そのほか、ドラッグストアなどで市販薬やサプリメントを買うときにも、手帳を見せることで薬剤師や登録販売者に確認が得られ、安全に薬を選ぶことができます。
- ※お薬手帳をふくめた制度(調剤報酬)は、2年ごとの4月に見直されます。2020年3月までは、薬局の規模や届け出の状況により、安くならないケースもありました。2020年4月からは、ほとんどの薬局で統一されています。
意外と知らない?お薬手帳の正しい使いかた
「お薬手帳は一人1冊」と聞いたことはありませんか?しかし、ひとによっては、病院ごとに別々の冊子だったり、家族分を1冊にまとめていたり、処方が変わったときだけ記録を追加する、といった間違った使いかたをしているひともいます。
今つかっている薬やその治療が、どのくらいの期間続けているかどうかも記録することが大切です。ある調査では、約8割もの薬局が「かかりつけ薬局」に選ばれるよう取り組んでいることとして最も多いのが、「お薬手帳を1冊にまとめる」というものでした。
緊急時など、ご自身が話せないときでも、お薬手帳で細やかな情報が伝わるよう、次の表を参考にして使いかたを確認してみましょう。
かかりつけ薬剤師を活用する3つのメリットと選び方豊富な機能で利用者も増加中!お薬手帳アプリ
2012年から始まったスマホ版お薬手帳アプリは、スマートフォンの普及にともない多くの手帳アプリが登場しています。どれも基本的には無料で利用することができ、紙の冊子よりも携帯性にすぐれ便利な機能も多いため、ダウンロード数も増えています。
手帳アプリを開発する企業によって様々ですが、具体的には次のような機能が備わっています。詳しくは、手帳アプリ内の情報で確認するか、よく利用する薬局でおすすめのものがあるかなど、相談してみると良いでしょう。
【お薬手帳アプリの便利な機能】
- 薬の情報が簡単に検索できる
- 家族や介護している人の分もまとめて管理
- アラーム機能で、薬の飲み忘れ予防になる
- 事前に処方せん画像を薬局に送信することで薬の受取り時間を短縮
- 自宅の最寄りや条件にあった薬局を検索
- 血液検査の値や血圧などを記録・グラフ化
- 市販薬やサプリメントなどを記録
- 体調変化のメモなどを記録
※すべてのアプリで共通ではありません。一部機能がない、もしくは有料サービスとなるものもあります。
冊子とアプリそれぞれメリットがある
結局、どっちがいいの?と疑問に思いますが、どちらにもメリット・デメリットがあるので、迷ったら冊子とアプリの両方を利用するのもよいでしょう。その際は、薬局で薬を受け取るときに、両方とも利用していることを伝えましょう。ただし、どちらも時間にそった継続的な記録であることが大切です。
お薬手帳アプリは、国がIT化を推進するなかで研究も進み、患者さんの情報が安全なネットワークをつかい共有できるシステムも登場しています。いずれ、災害時でも安全で素早い医療を受けることが可能になる日がくるでしょう。
昔は、スマートフォンの画面を直接、医師や薬剤師などに見せる必要がありました。しかし、2016年4月から、「e薬Link(イークスリンク)」(提供:日本薬剤師会)という、異なるアプリどうしの情報を薬局が一元管理して閲覧できるシステムの導入が始まっています。(患者さんの同意が必要。閲覧は一時的。ワンタイムパスワードを利用して情報セキュリティに配慮)
このシステムを導入しているかどうかは、薬局によって異なるため、気になるひとは、よく利用する薬局で聞いてみましょう。
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お薬手帳は冊子・アプリのどちらを選んでも、さらにはどのアプリを選んだとしても、その機能に大きな差はありません。大切なのは、継続的な記録として、無理なく長く管理をしていきやすいものを選ぶことです。
また、自分だけでなく、家族や介護をするひとと必要な情報を共有することで、もしものときに役に立ちます。より安全な健康管理をするためのツールとして活用していきましょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)
東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。