【図解】薬の飲み間違いが起こる3つのNG!その対処法とは

多くの人はご自身で薬を管理していると思いますが、薬の量や回数を飲み間違えた経験はありませんか?

飲み間違える原因は、無意識にあるNG行動をとっているからかもしれません。高齢であるかどうかに関わらず、いつもの生活リズムが崩れたときなどに飲み間違いが起こったりもします。

「自分はしっかり管理できている」と過信をせずに、飲み間違いが起こりやすい3つのNG習慣をよく理解し、元気なうちから長く続けられる対策をしていきましょう。
 

副作用や内臓への負担も!飲み間違いが身体にもたらす悪影響

薬を飲む回数や量を間違えて多く飲んでしまうと、目的とする薬の効能が強くなるだけでなく、様々な悪影響がでることがあります。

例えば、副作用が出たり、腎臓や肝臓などに負担がかかって、薬の成分を身体から取り除く特別な処置が必要な場合もあります。飲み薬だけでなく、糖尿病の人ではインスリン注射を過剰に打ってしまうと、低血糖で昏睡状態に至ることがありとても危険です。

対して、回数や量を間違えて少なく飲んでしまうと、血液中にある薬の有効成分(血中濃度)が一定量に保たれず、期待する治療が進められないこともあります。

大切なのは薬に対する理解力

最近は製薬技術の発展に伴い、薬の種類だけでなく、その飲み方も複雑になってきました。

例えば、持続性のある薬は、「1日1回服用」だったものが週に1回や、4週間に1回など、飲む回数が減るものもあり、「薬を飲まないと…」というストレスが軽減されるので画期的です。

しかし、飲み間違えたときの対処方法は薬ごとに異なる場合が多いため、病気そのものだけでなく薬に対する理解力も必要になります。

飲み間違えたときの対処法は、飲み方とセットで覚えておくことが大切です。

飲み間違いのNG習慣①服薬目的を考えずに飲む  

薬への興味が飲み間違いの予防に

自分の薬について、興味の持ちかたは人それぞれです。

避けたいのは「私は医者じゃないから薬のことはよく分からない。処方されたから飲んでいるだけ」と捉えてしまうこと。

例えば、血圧を下げる薬とコレステロールを下げる薬の2種類を飲んでいる人が、2つの有効成分がセットになった(配合剤)1種類に処方が変わったとします。

その薬に興味をもち理解していれば、手元に残っている薬をあわせて飲むことはありません。しかし、なぜ処方が変わったのかを理解していなければ、追加の治療薬だと思い込み、残っている薬もあわせて過量に飲んでしまうことがあります。

説明書を見ながら薬を飲む

薬の有効成分のほかに、服用方法への思い込みも要注意です。以下は、もらった薬袋から薬だけ出して保管したときに起こる飲み間違いの事例です。

「1日に飲む回数や1回の錠数を読み間違えてしまい、そのまま飲み進めてしまった。」
→これは薬のなくなるタイミングが、他の薬や受診の予定日と合わないことで発覚します。

この対策としては、薬袋や薬の説明書(薬情)を見ながら薬をのむ習慣をつけることです。薬を飲むときに、その薬は何の治療で飲んでいるのか、本当にこの用法で正しいのか、再確認しましょう。毎日繰り返すうちに、薬の名前や規格mg数などが、空でスラスラ言えるようになるでしょう。

災害時やもしものときに「飲んでいる薬の名前も規格も分からない」というリスクも避けられて一石二鳥ですね。

飲み間違いのNG習慣②予備数が薬ごとにバラバラ 

災害など非常時に備えて、手元に1週間分程度の常備薬をもっておくことは有用です。

しかし、薬が何種類もあるときに、それぞれ予備の数が違うと飲み間違いに気づきにくくなります。また、飲み間違いが起こったときに、後追い確認をするのは難しいものです。   

この対策としては、常備薬の予備の数を複種類の薬ですべて同じにしておくこと。ピルケースを使うなら、直近で飲む予定の1~2週間分だけをセットします。このとき、すぐに飲まない予備分は、1錠ずつ切り離さずシートのまま保管しておくと、数がパッと見て分かり、飲み間違えたとしても後追い確認がしやすくなります。

飲み間違いのNG習慣③飲んだことを記録しない 

薬の「飲み忘れ」と「飲み間違い」は、別問題のようですが、実は近い関係にあるトラブルです。

飲み忘れていると勘違いして、重ねて同じ薬を飲んでしまうと、それは明らかな「飲み間違い」になります。

注意したいのは、「飲んだら絶対に忘れない」と自信をもっている人でも、飲んだことを記録する習慣のない人が大半です。

今は大丈夫でも、加齢とともに認知機能や身体機能が衰えていくと、その自信が同じ薬を再度飲んでしまう「二度飲み」を招く危険性があります。

これには以下のような対策が効果的です。自分の生活スタイルにあった手段から試してみましょう。

  • 飲んだ殻を次に飲む時間まで捨てずにとっておく
  • 薬のシート(PTP)に直接、飲む日付を書いておく
  • 飲んだらカレンダーに印を付ける
  • 飲んだ記録のできるスマートフォンお薬手帳アプリを使う
  • ピルケースやお薬管理ボックスで、1日分ごと管理する

「飲み間違い」は「飲み忘れ」の延長線上にあることを意識しつつ、続けられる対策方法を知っておくことが大切です。

飲み間違えたときのチェックと対処法  

飲み間違えたときから、どのくらい時間が経過しているかによってチェックする事柄が変わります。

飲み間違いが分かってすぐ~数時間

薬局にくる問合せの中でも比較的多いのが、自分や子供が薬を飲み間違えてしまいその対処法を聞かれるものです。

薬剤師はまず、すぐに受診を検討すべき状態かどうかを確認します。次に、その薬に特徴的な中毒症状や、過量にのんだ時のデータが製薬メーカーから公開されているかどうかを調べて、当てはまっている不調があるかどうか質問します。

そして「受診勧奨」か「経過観察」すべきか。次に薬を飲んでよい時間などを説明します。

いつ飲み間違ったか分からないとき

まず、直近の体調変化がなかったか振返ってみましょう。発疹やめまい、血圧低下や疲労感、食欲不振など何か変わったことはありませんでしたか?

次に、手持ちの薬の数が把握できているなら、何をどの期間で、どのくらい間違えて飲んだ可能性があるのか、メモやお薬手帳に書き起こします。そして次回受診のときに医師に伝えましょう。

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

曽川 雅子

著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)

東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。

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