【表で確認】薬の正しい保管方法と飲み忘れ対策
薬の飲み忘れは、高齢であることや認知症の有無に限らず、何気ない習慣で起こることもあります。
毎日のむ血圧の薬がなぜか残る、たまにのむ風邪薬はつい飲み忘れる、体調が良くなって飲まなくなった薬がそのまま…心当たりのある方はいませんか?
ここでは、薬に正しく向き合うと分かる飲み忘れないための工夫や、飲み忘れたときの対処法。そして、習慣づけておくと劇的に飲み忘れが減る3ポイントについて紹介します。
薬の正しい保管方法
おすすめの保管方法は、薬箱や缶などの密閉できる場所に乾燥剤も一緒に入れます。
その中に保管する薬は、透明な袋に薬情・薬袋・薬、それぞれが見える形でしまいます。
薬そのものが同じでも、もらった薬局や日付が違うなら、ひとまとめにしません。透明な袋をパッと見て「貰った日付」「効能のわかる薬情」「薬そのもの」が見える並べ方ができると、チェックする時にも手早くできます。
この飲み忘れた分を、きちんと把握していますか?次のような人は注意が必要です。
- ①薬袋のまま中身の薬が、見えない状態で保管している
- ②病院ごとに貰った薬で、保管場所を変えている
- ③同じ薬を混ぜてしまい、いつ貰ったか区別がつかない
薬の保管場所は、最低年に1回はチェックしましょう。そのとき、1年以上、手をつけていない薬は廃棄する方が安全です。そのためには、「いつ」貰った薬なのか、分かるように保管しましょう。
処方された病院ごとに保管場所を変えると、飲み忘れた薬に重複していても気付きにくくなります。
また、「同じ薬だから…」と、飲み忘れた薬と新しく貰った薬をひとまとめにすると、使用期限の異なる薬が混在してしまいます。
そして、薬をため込まない最大のコツは、飲み忘れの数がたまったところで、処方日数の調整をしてもらうことです。
目安は1シート以上(約10~14日分)。飲み忘れた数を瞬時に把握するため、必要以上に薬のシートは切り離さないようにしましょう。
飲み残し薬は捨てるべき!?正しい管理で医療費の節約も服薬管理ツールを使って飲み忘れを予防する!
「服薬管理」とは、一般的に医療・介護などの専門職が薬の量や時間、使う期間が処方どおりになされるようサポートし、経過を観察することです。
しかし、本来は専門職だけでなく、患者さん自身も意識する必要があるのです。
ここでは、服薬管理を必要とする段階をステップごとに分け、おすすめの服薬管理ツールを紹介します。
【Step0】薬と向き合う意識をもつ
飲み忘れないためのポイントは、「習慣化」と「ツールの活用」の2つ。
そして何より大切なのが薬と正しく向き合うことです。高齢であることや認知症の有無に関わらず、元気なうちから次のような習慣を身につけておきましょう。
【Step1】ピルケース
こんな人におすすめ:全年齢
飲み忘れの予防法として、1日ごとや飲むタイミングで仕切られた薬のケース(ピルケース)があります。1週間分ほどセットして1日一マスずつ飲む方法は、年齢を問わず誰でも分かりやすくて有用です。
ここで注意したいのが、一度にセットする日数分以上の数は、薬のシートを1錠ずつに切り離さないことが重要です。この理由は、急な入院や外泊、災害時の非難などで薬を持ちだすときに、1錠ずつバラバラだと数の把握に時間がかかるからです。
入院先や薬局では、持参された薬が使える薬かどうかすべて確認し処方数を調整します。このように、シートが切り離されているとその薬の使用期限も調べられず、余計に薬代がかかってしまうこともあります。
【Step2】ポケット付きカレンダー
こんな人におすすめ:加齢による物忘れがある方
一人で不自由なく生活できていても、加齢による物忘れのために、薬を飲み忘れてしまう人もいます。
そんなとき、薬を飲むタイミングごとにパックして服薬管理する「一包化」は、薬が複数種あっても取違えが起こりにくいことや、手先が不自由な患者さんにとっては負担を和らげるメリットでもあります。
しかし、安易な一包化は、薬の正しい知識や理解を失うこともあります。
例えば、飲むタイミングの同じ薬が5個づつ包まれているとします。最初は「これは降圧剤だな」など気にしながら飲んでいるつもりでも、いつしか、パックを開けたら、一つ一つの薬を見ることもなく、いっぺんに口に運んでしまうようになるからです。
そして段々と、薬の効能や㎎数などを忘れていき、「医師に処方されたから飲んでいるだけ」と感じるようになります。
年相応の物忘れがあっても、最初から一包化するのではなく、まずは、 ポケット付きのお薬カレンダーに1回分ずつ切った錠剤を、シートごとに入れておく方がおすすめです。
お薬カレンダーは薬局で購入できますが、100円ショップで販売しているウォールポケットでも代用できます。使いやすい物を選んでみましょう。
【Step3】 一包化・カセットタイプの薬箱・カレンダー
こんな人におすすめ:ご自身での服薬管理が困難な人
服薬の自己管理が難しく、在宅療養や老人ホームなどで暮らす人に多い服薬管理方法には、前述の一包化が一般的です。
一包化した薬を、ポケットつきのカレンダーにセットして、決まった時間に介護者が飲ませることで、本人以外でも飲み忘れに気付くことができます。
Step3では、本人が慣れ親しんだ服薬管理ツールを使うのか。または介護者が使いやすいツールを導入すべきか判断が分かれます。
どちらが正しいとは一概に言えませんが、馴染みのあるツールの方が本人と一緒に服薬管理をしていこう、という一体感が生まれます。
飲み忘れにすぐ気付く3つの習慣
- ①「まだ大丈夫」といわず、元気なうちから「飲み忘れ予防ツール」に慣れ親しんでおく!
- ②「便利だから」が理由の一包化は、本当に必要か見極める!
- ③ 薬のシートは必要以上に切り離さず、緊急時に備える!
飲み忘れた薬は気付いた時に飲むべきか?
飲み忘れた時にどうすれば良いかは、1日何回飲んでいるかによって対応が違います。
認知症を患っていたり、自分で薬を管理することが難しいケースを除き、大抵は以下のように飲んでかまいません。高齢者の飲み忘れに対しても基本となる考え方です。
決められた服用回数 | 飲み忘れ時の対応&その次までに必要な間隔 |
---|---|
1日3~4回 | 気付いた時に、すぐ1回分を飲みます。4時間以上の間隔が空いていれば飲んでかまいません。 |
1日2回 | 気付いた時に、すぐ1回分を飲みます。8時間以上の間隔が空いていれば飲んでかまいません。 |
1日1回 |
気付いた時に、すぐ1回分を飲みます。 |
1週間または1ヵ月に1回 |
薬の成分が長く身体の中に保たれるので、数日間のむ日にちがずれても問題ありません。 |
頓服 | 薬によって次に飲む時間まで必要な間隔が違います。 片頭痛の薬や解熱剤など、1日に飲める回数の最大量にも違いがありますので、医師または薬剤師へ確認しましょう。 |
- ※表では、食事影響のない薬や、医師から細かい時間指定で服用指示のない薬であることが前提です。不安な方は予め、薬をもらう時に確認しておきましょう。
飲み忘れたからといって、一度にまとめて数回分を飲まないことが大切です 。抗生物質などは、飲むことを中断すると治療に支障をあたえる可能性があります。飲み忘れたとしても再開して最後まで飲み切りましょう。
また、次に飲む時間までの間隔が短くなると、効き目が強く出すぎる場合があります。不安な人は、24時間いつでも相談できる、「かかりつけ薬局」を普段から決めておくとよいでしょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)
東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。