【薬別】薬の使用期限をご存知ですか?劣化が進む3つの原因
薬の使用期限は3~5年間くらいが一般的ですが、中には半年~1年間と短いものもあれば、使用期限に関わらず「開封後は一ヵ月程度」と設定されているものもあります。
ここでは、薬の自宅保管における使用目安となる期間や、薬の使用期限の決まり方、薬局で調べてもらう方法、期限が短い薬の特徴などを紹介します。ご自宅で保管するお薬を安全に使用するためにぜひお役立てください。
薬は温度・湿度・光の3要素に影響されやすい
食べ物の消費期限と同じく薬にも安全に使える使用期限があり、未開封の状態で3~5年くらいが一般的です。ドラッグストアなどで買える市販薬には外箱に期限が書いてあります。
一方、処方せんをもとに薬局で調剤する処方薬は、錠剤やカプセルなどのシートでもらうことが多く、外箱がないので期限が分かりません。ご家庭のお薬箱の中で長く経過することで、保管方法の複雑化にもつながっています。
薬の使用期限を左右するのは「温度・湿度・光」の3つです。薬は、患者さんに処方・調剤されるまで、この3つの条件を満たしつつ保管されています。この条件は、製薬会社が定期的に品質や安全性の確認試験を行い、ときには使用期限そのものを見直すこともあります。
見た目が同じでも、成分や効能・安定性が保たれていないと期待する治療ができません。そのため、「まだ処方されて1年くらいだから大丈夫」などと思わず、安全に使える期限の考え方を身に付けましょう。
薬の正しい保管方法限られた情報から薬の使用期限を調べる方法
処方薬の期限は受け取った薬局で調べてもらうのが基本です。しかし、どこの薬局か分からなかったり、病院内の処方で薬局を通していない、というケースもあるかもしれません。そういった場合でも、薬局では大きく2つの方法で調べることができます。
①薬の包みに記載された情報をもとに調べる
薬局では通常、次のようなポイントから薬の期限を調べます。ただし、この方法は、「その薬局でもらった薬であること」、「シートが1錠ずつ切り離されていない」という条件のときに、調べることが可能です。
薬剤師は下記の情報から使用期限を調べる
- 薬のシートに記載された製品番号やLOT番号、バーコード
- 薬のパッケージに記載の使用期限
- 薬の在庫管理システムなどのデータ
- 患者個々の調剤監査システム(薬を渡す前の投影画像など)
- 薬局に薬を納品したときの納品伝票または請求書
②色や形など限られた情報から調べる
どこの薬局でもらったのか分からないときや、薬局を通していない場合でも、調べられる可能性がまだあります。
薬剤師は、薬そのものの印字や大きさや色、シートデザインなど、直近で変わった部分などのヒントから、医薬品メーカーへその変更時期と出荷時期がいつ頃だったかを確認します。
一般の人が同じように調べたとしても、専門用語や聞きなれない表現が多いため、専門家に調べてもらう方が安全です。
①②どちらのケースでも、まずは薬局へ気軽に相談してみると良いでしょう。
処方薬は処方日数内で使い切る
市販薬とは違い処方薬には外箱がついておらず、ほとんどの薬のシートにも使用期限は明記されていません。例外として1錠ずつに期限が書かれているものは、心臓発作などに使用する緊急時の薬くらいです。
冒頭で述べたように、薬の期限は工場から出荷されて3~5年くらいが大半です。しかし、温度や湿度など家庭と薬局での保管条件は異なるため、おおよその処方日数で使いきることが基本になります。
もし、いったん使わなくなったときなど、保管する場合の期間は、以下の表を目安にしましょう。
処方薬の保管期間の目安
- 錠剤・カプセル剤→6ヵ月~1年
- 散剤・顆粒剤(薬局での分包品)→3ヶ月
- 散剤・顆粒剤(メーカー個装品)→6ヵ月~1年
- 点眼薬(開封済)→1ヶ月
- 点鼻薬(開封済)→1~2ヵ月
タイプによって異なる薬の使用期限
前項でもお伝えしましたが、薬のタイプによっては、使用期限が記載によらないものもあります。また、使い方によっては、使用期間の目安が短くなってしまう薬もあるので注意が必要です。
細菌の繁殖が心配な薬
軟膏などのチューブや、薬局で混ぜられ容器に入っている塗り薬、子ども用のシロップなどは、使用方法により雑菌が入りやすくなるため注意が必要です。
塗り薬は、良く洗った手で取り、再び取るときは、患部をさわった手では取らないようにします。シロップは、スポイトやカップなどで一度取り分けたら、子どもが飲めなかったとしても、再び容器に戻すことは避けましょう。
開封後の目安期間が設定されている薬
目薬や点鼻薬、インスリンや骨粗しょう症などで処方される皮下注射は、薬本体に書かれている使用期限に関わらず、開封後28日、長くても1ヵ月間が目安です。さらに皮下注射は、期間に加えて温度管理も重要です。
これらは、見た目には変わりなくても、抗菌性や薬の成分が変化することがあるので注意しましょう。
湿気を帯びやすい薬
1回に服用する薬がパックに包まれた「一包化」や、薬局内の機械により包まれた粉薬「分包散剤」は、包まれるときに空気にふれています。つまり、袋の中にも僅かながら湿気が存在しているのです。
薬局では、薬一つ一つについて、一包化して問題ないか、何日間分まで一包化できるかを確認した上で調剤しているので、もらった日数を大きくこえて飲むことは避けましょう。
保管条件で有効成分が変化する薬
温度や湿度、光によって、有効成分が減ってしまう薬もあります。薬局で「遮光保存してください」と説明された薬については、日光だけでなく、自宅の照明器具の光にも注意は必要です。
実は、有効成分の安定性における試験では、「25℃・湿度60%・遮光」というように細かい条件で行われています。そのため、薬剤師から保管方法を細かく説明された場合は、保管場所について相談してみるのも良いでしょう。
使用期限が短い薬の特徴
ここまで、自宅で保管するときの使用期間について解説しました。実は、薬局で保管している段階ですでに使用期限が迫っている薬も一部あります。
工場出荷の時点で、使用期限が1年しかないものであったり、もともと使用期限が3~5年だったとしても、処方される頻度の少ない薬などが当てはまります。
薬局により状況や理由は様々ですが、次のようなものが代表的です。
期限が短くなりやすい薬の特徴
- 経管栄養剤など、からだの状態変化で、処方内容の変わりやすい薬
- 珍しい病気(希少疾病)のために、備蓄数や回転数の少ない薬
- 抗がん剤や肝炎治療薬など、治療費だけでなく、薬そのものも高額な薬
- インフルエンザ治療薬など、決まった時期に偏ってたくさん出る薬
その他、一部の先発医薬品は、ジェネリック(後発医薬品)よりも使用期限が迫っていることがあります。その理由は、ジェネリックを選ぶ人が昔よりも増えてきているからです。
2009年には35.8%だったジェネリックの利用割合が、10年間で76.7%まで増加しました。この結果、先発医薬品の回転数が低くなり、期限切迫のリスクが高くなりやすいことがあります。
ただし、期限が迫っているからといっても使えない訳ではなく、効能はしっかり保たれています。当然、期限内なら安全に使えますし、適切に管理された薬をもらうことの方が重要といえるでしょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)
東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。