【はじめての方へ】薬剤師の服薬指導で薬の悩みを解消しよう!

服薬指導とは、薬剤師が患者さんに対し、処方薬の正しい使い方や効能、副作用、飲み合わせや保管方法などについて情報提供をおこなうことをいいます。

みなさんも処方薬を受け取る際に、薬剤師から薬の説明を受けたことがあると思います。これは薬剤師法で定められている業務のひとつで、処方薬と一緒に手渡される薬の説明書(薬情)を確認するだけでなく、いくつかの方法があります。

ここでは、服薬指導の目的や流れ、薬剤師が服薬指導をするときに心がけている3つのポイント、近年スタートしたオンライン服薬指導について専門家が解説します。
 

薬の不安は服薬指導のときに確認する!

薬情(薬の説明書」を見れば、薬の服薬方法や効能といった一般的な内容は誰でも分かるようになっています。しかし、正しく使うにはそれだけで十分とはいえません。なぜなら、薬はいくつもの作用や効能を持つことがあり、患者さんごとに使用目的や注意点が異なるからです。

薬情には、患者さん個人に向けた情報まで記載されていないので、「服薬指導」という形で個別の情報提供をする場が必要となるのです。

また、指導といっても薬剤師による一方的な説明の場ではありません。ふだん医師には聞きづらいことや、薬に関する悩みなどを相談しても大丈夫。早く治したい気持ちは薬剤師も同じです。ぜひこの機会を有効活用してみましょう。

服薬指導の流れ|薬剤師が症状を聞く理由

薬剤師から薬を受け取る際に色々と質問をされて、こんな風に思ったことはありませんか? 

「なぜ医師でもないのに症状を聞いてくるの」
「検査結果や血圧などの値を聞き出そうとする」
「薬の説明書に書いてあることを読み上げるだけ。聞いても意味がない」

服薬指導にも費用がかかっていますが、それは薬の説明をするだけではありません。薬剤師は処方せんを受け取った瞬間から、その患者さんの薬歴を見て病状や副作用の既往、年齢や体重にあった処方なのかを客観的に評価します。

同じ処方内容が続くときも、正しく安全につかえているかどうか、期間や季節、定期的に必要となる確認をおこないます。そして、会話の量にかかわらず評価した内容を薬歴に記し、その後の治療につなげます。
 

服薬指導でおこなう内容と方法

服薬指導で行う情報提供の内容と方法は様々です。

短時間で薬の説明をするだけでなく、患者さんが薬を飲むことに賛同しているか、正しく服用しているかといった確認も行います。

服薬指導で行う内容

服薬指導は効能や飲みかたの説明だけではありません。薬情に書ききれない副作用の兆しや、患者さんごとにちがう目的の効能と薬への向き合いかた、患者さんに不安や不都合がないかなど、薬学的な知見をもとに会話や記録をします。

服薬指導で行うこと

薬の説明
効能、飲みかた、保管方法、副作用、相互作用、ジェネリック(後発医薬品)の有無や差額などを説明することです。
アドヒアランスの確認
聞きなれない言葉ですが、患者さんが賛同し積極的に薬をつかっているかを確認することです。
アセスメント
薬学的な知見から客観的に調査や評価をおこなうことです。

服薬指導の方法

方法としては、渡す書類のほかデモ器(練習用の器具、見本)などのツール、電話やパソコンによるオンライン服薬指導に加え、医師や看護師たちとの連携も服薬指導のひとつです。

服薬指導の主な方法

  • 薬情(薬の説明書)
  • お薬手帳(薬の重複や相互作用、服薬期間などを確認します)
  • 製薬メーカーのつくる指導せん
  • デモ器をつかった吸入薬などの方法を指導する
  • 通信機器をつかうオンライン服薬指導
  • 電話などで薬を使っている期間を通しておこなうフォロー(継続的に薬の使用状況を 把握し、不安や不都合があればすぐに対応します)
  • 医師や連携する医療スタッフへ情報を共有する。

薬剤師が心がけている服薬指導3つのポイント

医師から薬を処方されても、心のなかで次のように思っていたりしませんか?

「本当にこの薬は必要なの?」
「薬が多くて飲みたくない」
「食生活が不規則で薬を飲むタイミングに困る」
「薬には興味ない。医師のいうとおりに飲んでいるだけ」

患者さんが安心して正しく薬をつかえるように、薬剤師が心がけている服薬指導のポイントは大きく3つあります。これらは薬局のほかドラッグストアや病院の薬剤師も同じく努めていることです。

【3つのポイント】

  • ① 信頼関係を築くコミュニケーション
  • ② 薬学的知見から患者さんを支援する
  • ③ 良い治療につなげるため記録を残す

薬剤師は、患者さんが薬に対して抱く理解や意識により添い、生活リズムや希望に可能なかぎりあった提案を薬学的知見からさがします。

医師にうちあける際の言葉の選びかたや、介護するひとの患者さんに対する接しかた、治療方針に不安を感じているときにはセカンドオピニオンの話をする場合もあります。

薬は正しく使わないと期待する効果も発揮できず、ときには健康被害を招くこともあります。服薬指導は患者さんをサポートをするために設けられた場ですから、不安なことや疑問は薬剤師へ相談してみましょう。

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オンライン服薬指導なら遠隔地でも利用できる

2018年から限定された地域のみで検証実験されてきた「遠隔(オンライン)服薬指導①」を知っていますか。テレビ電話やwebなどの情報通信機器をつかって遠隔で服薬指導をおこなうものです。

医療職の少ない地域で生活する人や、すぐに受診ができない状態にある人にも、安全で効率的に、薬や医療機器が手に入る環境を整備するために始まったものです。これにより、患者さんは自宅にいながら安心して相談することができます。

注意したいのは、2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために時限的にはじまったオンライン服薬指導②とは、その目的や対象など大きくちがいます。以下の表を参考にしてください。

2つのオンライン服薬指導のちがい ※2020年12月時点の情報です
①遠隔(オンライン)服薬指導 ②時限的・特例的なオンライン服薬指導
開始 2020年9月1日 2020年4月10日 
目的 住み慣れた地域で
より安全・迅速・効率的に医薬品や医療機器等を提供するため
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため
対象となる人 オンライン診療、在宅・訪問診療を受けたひと 医療機関から処方せん情報を希望の薬局に送られたひと
対象となる病院・診療所 厚生労働省が定める研修を受講した医師 すべての病院・診療所が対象(研修の規定なし)
対象の薬局 離島やへき地以外の地域では、
あらかじめ服薬指導を受けたことのある薬局のみ。
すべての薬局。希望する薬局は各回一薬局のみ
受け取れる薬 その薬局で調剤した薬と、同一または類似の薬が対象 原則、すべての薬剤
情報通信機器 テレビ電話、スマホアプリ等
(相互に顔や動きを認識できること)
電話やFAX等
(必要な情報が確認できること)
そのほかの決まりなど ・2018年より限定地域のみ検証実験がおこなわれてきた
・薬局は都道府県知事に所定の届出をしていること
・オンラインと対面での診療を組み合せること
・患者情報が少ないときは7日分が上限
・処方せんの備考欄に「0410対応」と記載があること
・処方せんの原本は医療機関から薬局に送付

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

曽川 雅子

著者:曽川 雅子(株式会社リテラブースト代表、薬剤師)

東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。2017年にセルフメディケーションサービスを展開する「株式会社リテラブースト」を設立。処方せん薬に偏ることなく、予防医療やヘルスリテラシーの在り方、そのサポーターと連携の意識を分かち合うため、薬局だけでなく、健康経営を掲げる民間企業へのセミナーも積極的に行っている。

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