【はじめての方へ】ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のケアと生活上の注意点

ストーマは腸や尿管をお腹の外に出して作った人工肛門・人工膀胱のこと。装着したパウチと呼ばれる袋に排泄物を溜めるなどして、日常生活をほとんど制限なくおくることができます。運動や温泉、海外旅行も可能です。

ここではパウチの交換やストーマ生活で気をつけること、受けられる支援や介護施設の受け入れについてわかりやすく解説します。

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どんな人が使う?ストーマの対象者

ストーマが必要になるのは、消化管や膀胱などが十分な機能を果たせなくなったときや、病気や手術の影響で腸を休ませる必要があるときです。ストーマを造設した人のことを「オストメイト」と呼びます。人工肛門と人工膀胱の2種類があり、どちらも造設するには手術が必要です。

人工肛門の対象となる人

  • がんのために腸を切除した人
  • 潰瘍性大腸炎やクローン病などで、腸にひどい炎症が起きている人
  • 腸閉塞などで腸が詰まっている人
  • 腸の手術後などで、一時的に腸を休ませたい人

人工膀胱の対象となる人

  • がんのために膀胱や尿管を切除した人
  • がんや病気の炎症によって尿の通り道が邪魔されて、うまく排尿できない人

また、人工肛門と人工膀胱では排泄物が異なりますが、どちらもパウチと呼ばれる袋に排泄物を貯めます。ここからはパウチの装着や交換、中身の処理の方法を中心に、ストーマの日常ケアについて解説します。

実際の生活ではどう管理する?ストーマケアでおこなうこと

ストーマをつくると、排泄物やパウチの管理が必要になります。ストーマ造設直後は看護師が行いますが、自分で行えるようになるとストーマ造設前とほとんど変わらない日常生活をおくれるようになります。

一方、ストーマにしたことで皮膚トラブルや臭いへの対策が必要となり、外出や旅行の際に注意したいことも出てきます。それぞれみていきましょう。

排泄物の管理

排泄物はパウチの中に溜まります。普段トイレに行くように、ストーマでもパウチに溜まる排泄物を処理する必要があります。

パウチの先端は穴が開いていますが、普段は栓やクリップで閉じられています。排泄物を処理するときにはそこを開けて、パウチに溜まった分をトイレに流します。就寝前や外出前にはパウチの中身を空にすると良いでしょう。

また公共施設の中にはオストメイト専用トイレがあるところも。パウチ内の排泄物を捨てやすいよう、一般的なものよりも高さのある便器が置かれ、また個室内に水道も設置されています。外出時に利用すると良いでしょう。

パウチ・面板の張り替え

パウチは土台となる面板と合わせて肌に貼り付けます。パウチには面板と一体型のものとセパレートされているものの2種類があり、生活やお腹・皮膚の状態により適切な選択が変わります。

これらストーマ装具は汚れたりはがれたりした場合に張り替えますが、そうでない場合でも3〜5日に1度は交換します。

外出中にはがれてしまったときに対応するためにも、患者さん自身やご家族が交換できるようになりましょう。最初は看護師からレクチャーを受けますし、決して難しくはないので安心してください。

【ストーマの交換手順】

  • ① 排泄物を捨て、ストーマ部分にしわができない姿勢をとります
    ② 剥離剤なども使用しながら、面板とパウチをゆっくりとはがします
    ③ 皮膚に赤み、腫脹(しゅちょう)、熱感、痛み、滲出液(しんしゅつえき)がないかを確認します
    ④ ストーマ周囲をよく泡立てた石けんで洗浄。しっかり洗い流してから乾かします
    ⑤ ストーマのサイズに合わせて面板をカットします
    ⑥ 必要であれば皮膚保護剤をストーマ周囲の皮膚に塗布。シワができないように面板・パウチを装着します

装具の購入は専門の業者を通して行います。かかりつけ医やケアマネジャーに紹介してもらうと良いでしょう。また、面板やパウチなどの装具は医療保険が適用されず、自費となります。

後述する助成や補助などを利用することで、経済的な負担を軽減することができます。専門業者には助成などを受けられるようにサポートする部門を設けているところもあるので、相談してみると良いでしょう。

入浴時の注意点

ストーマがあってもパウチを装着していれば、湯船に浸かることも温泉に入ることも可能です。必ず排泄物を捨て、パウチについた排泄物を拭き取ってから入浴しましょう。パウチが濡れてはがれないように、専用の入浴用シートで覆うこともできるので、心配な人にはおすすめです。

高齢者の中には、毎日は入浴しない人も少なくありません。ストーマ装具の交換と入浴日を合わせることで、皮膚の清潔ケアを同時に行うことができます。スケジュールを工夫すると良いでしょう。

ストーマで気をつけたい食事

尿や便の排泄量を抑えるために、水分摂取を控えることは避けましょう。感染や脱水予防には、しっかりと水分をとることが大切です。

また人工肛門の場合、食事内容によって便の状態が変わり、トラブルの原因となることも。とくに食物繊維が多く含まれる食事を一度に多く食べると、繊維がストーマに引っかかって便の排出が滞る「フードブロッケージ」が起こりやすくなります。さらにガスも発生しやすいため、食べ過ぎには気をつけましょう。

このほか、炭酸飲料やタバコ、チューイングガムなどもガスを発生させやすいといわれています。そのようなときには食事内容を見直してみましょう。

臭いの対策

パウチの内容物を捨てたとき、排泄物がパウチに付着したままでいると臭いが発生しやすくなります。しっかりと拭き取るようにします。

またフィルター付きのストーマ装具、消臭効果のあるパウチやパウチカバー、パウチの中に入れる消臭剤など、さまざまな消臭グッズが販売されていますので、自分に合ったものを使用すると良いでしょう。

外出・旅行時の注意

外出中に排泄物が漏れてしまったり、ストーマ装具がはがれてしまったりすることもあります。外出時には張り替えに必要な物品を持ち歩くようにしましょう。飛行機には刃物を持ち込めませんので、あらかじめ大きさを整えた面板を機内に持ち込むようにします。

また海外に行く際にはオストメイトであることがわかる、英文で書かれた診断書や携帯カードを携帯すると、トラブルがあったときにも安心です。

ストーマで起こりやすいトラブル

ストーマで起こりやすいトラブルにはヘルニア・脱出、テープや装具かぶれ、感染症などがあります。悪化した場合は治療が必要になりますので、毎日ストーマを観察して、異常の早期発見に努めましょう。

ヘルニア・脱出
加齢や肥満、繰り返すせきなどが原因となり、腸が必要以上に腹壁や皮膚から出てしまうこと。腹痛や便秘がなく、もとに戻せるのであれば問題ありません。予防にはヘルニアベルトなどの装着が有効です。
テープかぶれ
テープの粘着剤が刺激となって皮膚炎を起こしたり、勢いよくテープをはがすことで皮膚に傷がついたりすることがあります。刺激の少ないテープへの変更、テープを小さめに切る、皮膚保護剤や剥離剤の使用で、トラブルを予防します。
装具かぶれ
ストーマ装具が皮膚にあたり、摩擦やずれが生じて皮膚が傷つくことがあります。ガーゼやタオルを装具と皮膚の間に入れて防ぎます。
感染症
テープや装具によるかぶれ、汗によって皮膚の水分量が増えて脆弱になることで、とくにカビによる真菌感染が起こりやすくなります。かぶれなどの皮膚トラブルを防ぐため、定期的に洗浄して清潔を保ちましょう。

ストーマで受けられる支援

ストーマ装具は医療保険の適用とならないため、金銭的な負担が大きくなります。公的な支援を利用して、負担を軽減させることも大切です。

装具代は医療費控除の対象となります。領収書は大切に保管し、確定申告の際に申告するのを忘れないようにしましょう。

また身体障害者認定を受ければ、ストーマ装具代の補助を受けることができます。お住まいの市区町村の障害福祉担当の窓口で手続きを行ってください。さらに国民年金や厚生年金などに加入していれば、障害年金の受給対象にもなることもあるので、市区町村の年金窓口で相談しましょう。

ストーマ装具のメーカーや販売会社には、これらの助成などを利用できるようにサポートしているところもあります。わからないことがあれば行政だけでなく、そのようなサービスを利用するのも良いでしょう。
 

介護施設の受け入れ

パウチ内の排泄物を捨てる、パウチを張り替えるなどは医師や看護師、家族のほか、介護福祉士でも行うことができます。一方、トラブルが起きたときには看護師による受診判断や処置が必要になることも。看護師がいない介護施設では受け入れが難しい場合もありますので、入所前にしっかりと確認するようにしましょう。

イラスト:坂田 優子
 

この記事の制作者

矢込 香織

著者:矢込 香織(看護師/ライター)

大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。

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noteKaori Yagome*看護師

Twitter@KaoriYagome

岩本 大希

監修者:岩本 大希(WyL株式会社/ウィルグループ(株)代表取締役)

大学卒業後、北里大学病院救命救急センター従事。その後、ケアプロ(株)で訪問看護事業の立ち上げ・運営を行う。
2016年ウイル訪問看護ステーション江戸川を開設。東京・沖縄・岩手・福岡・埼玉で展開。
2019年在宅看護専門看護師を取得。(社)オマハシステムジャパン理事、(社)東京都訪問看護ステーション協会研修委員長

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