高齢者の足のむくみは病気のサイン?原因や解消方法を解説
高齢者の足のむくみは病気のサインの可能性があるため注意が必要です。放置すると、生命に関わるケースも。
むくみの原因や対策、リハビリ体操の方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
むくみとは?
むくみは浮腫(ふしゅ)ともいわれ、体内の不要な水分が皮下組織に溜まることです。
血液は心臓のポンプ機能で全身に送られますが、このときに重力の関係で下肢に水分が溜まってしまいます。その水分を心臓に送り返す役目を果たすのがふくらはぎの筋肉です。しかしふくらはぎの筋肉が何かしらの理由で機能しなくなると、むくみとして現れます。
むくみの有無は足のすねを指で押して確認します。指で押した痕が戻らない場合は、むくんでいる状態です。
高齢者の足にむくみが出る原因
高齢者に起こるむくみには、主に3つの原因があります。原因ごとにケアの方法も異なるため、適切に把握しましょう。
病気
心臓や肝臓などの臓器の病気が原因で起きるむくみは、足のみでなく顔や手にも現れるのが特徴です。その他にむくみ以外にも息切れや体のだるさといった症状も出ます。病気が原因の場合、むくみが両足に出る場合と片足に出る場合がありますが、具体的な病気は下記のとおりです。
片足にむくみが出る病気 | 両足にむくみが出る病気 |
---|---|
深部静脈血栓症 | 心不全 |
下肢静脈瘤 | 腎不全 |
リンパ浮腫 | 肝硬変 |
麻痺がある側の麻痺性浮腫 | 低栄養 |
エコノミークラス症候群 | 甲状腺機能低下症 |
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薬
高齢者はいくつかの薬を内服していることも多く、薬がむくみの原因になる場合もあります。降圧薬や向精神薬、漢方薬などの副作用としてむくみが出るものがあるため、新しい薬を飲んでからむくみが出たときは自己判断で服用を止めず、処方してもらった病院に相談しましょう。
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その他の原因
病気や薬以外の血流が悪くなって起こるむくみもあります。原因としては、以下のようなものがあります。
- 長時間座り続ける、立ち続ける、歩き続けることで足が心臓より下に位置している
- 歩行が十分にできていない
- 塩分の摂りすぎ
- 過労、ストレス
- 加齢による筋力低下
- 身体の冷え
むくみを放置する弊害
むくみを放置すると様々な弊害が起きる可能性があります。中には、命に関わる病気のサインというケースも。気になることがあればかかりつけ医に相談してみましょう。
体調の変化
とくに高齢者の場合、自己判断でもう少し様子を見ようと足のむくみを放置するのは危険です。むくみは生命に関わる病気につながる場合もあります。
また、血流が悪くなって起きるむくみの場合、高齢者は歩きにくさや足の重さを感じて活動量が減り、筋力の低下につながってしまいます。
かかりつけ医への相談とともに、塩分量を考えた食事や長時間座ったままにしないなどの生活習慣を日頃から心掛けましょう。
冷え
身体の冷えは全身の血流が悪くなって起きます。とくに高齢者は手足の冷えを感じる方が多くいらっしゃいます。
血流が悪くなるとむくみが生じて冷えも悪化するという悪循環に。筋肉の動きも悪くなるため、活動量の低下を招く原因にもなります。
歩きにくさ
むくみがひどくなると足首周囲もむくんで、歩きにくさを感じます。足首が動かしにくく歩行が不安定になったり、つまずきやすくなったりした結果、転倒リスクが高くなります。
高齢者の転倒は骨折を起こすことが多く、寝たきりの原因にもなり注意が必要です。
むくみは何科を受診する?
むくみは基本的には内科を受診します。内科の中には循環器内科や糖尿病内科、神経内科などがありますが、先に挙げたどの内科でもむくみは診察可能です。
行く病院に迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。必要であれば、適切な医療機関を紹介されます。
足のむくみ対策
足のむくみにはいくつかの予防法や対策があります。冷え症を予防できたり、動きやすくなったりと多くメリットがあるため、意識的に生活に取り入れてみましょう。
マッサージ
下肢をマッサージすることで血流がよくなり、むくみ改善にもつながります。下記のようなマッサージを行ってみましょう。
むくみに効果的なマッサージ
- 足首を回す、足首を上下に動かす、つま先から足首をゆっくりさする
- 椅子に座ってアキレス腱を親指と人差し指ではさんで、10秒ほど優しく揉みほぐす
- 椅子に座って膝を両手ではさんで、指全体で優しく押す
- 足の付け根を親指で指圧する
足の位置を高くする
就寝時や座っている時に、クッションを挟むなどして足の位置を高くします。
塩分を控える
塩分の多い食事はむくみの原因になります。高齢者は塩味を感じにくく、知らないうちに塩分を多く摂っている場合もあるため注意が必要です。
また、むくみ解消のために塩分・水分を体外に出してくれるカリウムやビタミンEを積極的に摂取しましょう。
睡眠を十分にとる
睡眠は副交感神経が優位な状態で、日中より血流が良くなるといわれています。また、横になることで下肢が重力から解放されるため、睡眠を十分にとることでむくみ解消にもなります。
【動画でわかる】自宅でできる!むくみ予防体操
むくみを自宅で対処するためには、マッサージやリハビリ体操をすることが大切です。
とくに太ももやふくらはぎといった大きく、血流に関わる筋肉を動かすことや、むくんでいる部分の筋肉を動かして血流を良くすることが重要です。そのための体操を紹介します。
アキレス腱マッサージ
- ① 椅子に座って、アキレス腱を親指と人差し指ではさみます。
② そのまま10秒ほどもみほぐしましょう。
③ 左右10秒×2セット行います。
膝裏のマッサージ
- ① 椅子に座って、両手で膝を挟むようにして持ちます。
② 両手の人差し指から小指全体を使って、10秒ほどマッサージします。
③ 左右10秒×2セット行います。
足のつけ根のマッサージ
- ① 椅子に座って、両手の親指を足(太もも)のつけ根に当てます。
② 指圧の要領で、両親指で足をほぐしていきます。
③ 左右10秒×2セット行います。
足の外側のマッサージ
- ① 椅子に座って、両手のひらを外くるぶしに当てます。
② そのまま手のひらで足の外側を膝に向かってさすります。
③ 左右10秒×2セット行います。
足から腰のマッサージ
- ① 椅子に座って、両手のひらを太ももの外側に当てます。
② 膝から足のつけ根に向かってさすっていきます。
③ 左右10秒×2セット行います。
以上のマッサージのコツは、気持ちが良い範囲でやることです。痛ければ良いというものではないので、気持ち良いと思う範囲で行いましょう。
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- 決して無理はせずに、継続できる範囲内で実施してみてください。もしも痛みなどが生じた際は体操を止め、医師の診断を受けましょう。
かかと上げ
- ① 膝が90度になるように椅子に座ります。
② そのまま両足のかかとをしっかりと持ち上げます。
③ 5回×2セット行います。
足首の運動
- ① 両手で椅子を持ち、片方の膝を伸ばします。
② 伸ばした側の足首を手前に4秒曲げて、その後つま先を4秒伸ばします。
③ 手前に曲げる4秒とつま先を伸ばす4秒を両方×2セット行います。
足を弾ませる運動
- ① 足首を動かしやすいように椅子に座ります。
② ジャンプをするように、リズミカルに両足を弾ませます。
③ 10秒×2セット行います。
足の指の運動
- ① 靴を脱いで椅子に座ります。
② 足の指に力を入れて、指を曲げるグーと指を伸ばすパーを繰り返します。
③ 5回ずつ×2セット行います。
運動のコツとしては、ゆっくり大きな範囲を動かすことです。
狭い範囲で早く動かしても、筋肉のポンプ作用が小さくなるので、血流の改善につながりにくくなります。
目的は筋肉を鍛えることでなく、血流を良くすることなので、ゆっくり大きく動かすようにしましょう。
また、マッサージにしても体操にしても、毎日継続することが重要です。
高齢者の足のむくみには要注意。病気のリスクもあるため早期の検診を
先述の通り、生命に関わる病気が潜んでいることもある高齢者の足のむくみ。放置せずにかかりつけ医を受診するなど早めの対応が大切です。
病気が原因でなければ、血流が良くなるよう、上記で紹介したマッサージや運動、生活習慣を取り入れてみてください。
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イラスト:安里 南美
この記事の制作者
監修者:古賀昭義(医学博士)
所属 医療法人社団永生会 整形外科
日本整形外科学会認定専門医
日本抗加齢医学会認定専門医
経歴
日本大学医学部卒業
同大学整形外科入局
同大学医局長→兼任講師→臨床准教授→医療法人社団トーイシン会市谷八幡クリニック院長を経て現職