東大が考案!自分の「衰え」を点検できる「フレイルチェック」とは?

年をとれば誰もが身心の衰えを感じることは多くなる。だが、 「年だから、しょうがないか……」と見て見ぬフリをしていると、 知らぬ間に健康状態が失われ、要介護の状態に進んでしまう。 そこで、健康状態と要介護状態の中間の状態を指すという 「フレイル」の状態をチェックし、早期に予防しておくことが重要だ。

そんな中、東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)の飯島勝矢教授ら 研究チームが誰もがすぐにできて、しかもお金も特別な器具も必要としない 「フレイルチェック」を考案した。果たしてどういうものなのか?

誰もがいつでもどこでも簡単にできる「フレイルチェック」

Frailty(虚弱)という言葉に由来する「フレイル」は、日本老年医学会が2014年に提唱した「老い」の新概念。不自由のない健康な状態と、生活に人の手や器具の助けが必要な要介護状態の中間の状態をそう呼ぶ。

高齢者の多くはフレイルの前後に、全身の筋肉量と筋力がガクッと落ちる「サルコペニア」という状態になるのだが、この「サルコペニア&フレイル」から「要介護」に至る流れを遅くしたり止めたり、あわよくば自立した健康状態に戻すには、今の自分の老化がどこまで進んでいるかを高齢者自らが正しくチェックし、その段階に応じた対応をしていく必要がある。

とはいえ、当たり前なことだが、チェックに多額な費用を要する器具が必要だったり、身体への負担が重いものだったりすると、実施するのはむずかしくなる。ところが、東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)の飯島勝矢教授ら研究チームが考案した「フレイルチェック」は、かかる費用はゼロというだけでなく、誰もがいつでもどこでも簡単に実施できる、実に夢のようなチェック方法なのだ。

やってみよう!「指輪っかテスト」と「イレブンチェック」

フレイルチェックは、「指輪っかテスト」「イレブンチェック」の2つからなる。

指輪っかテストは、人差し指と親指を結び、ふくらはぎのいちばん太い部分を囲んで「囲めない」、「ちょうど囲める」、「隙間ができる」という、3グループに分ける調査である。

イレブンチェックは、「栄養」、「口腔」、「運動」、「社会性・こころ」と分類された11の質問に「はい」と「いいえ」で答える。

いずれも対象年齢は65歳以上だが、40代、50代の人にも何らかの気づきがあるはずなので、その場でやってみよう。

これを見てみると、フレイルチェックが、いつでもどこでも、簡単に実施できるものであることがお分かりだろう。

「隙間ができる」人の死亡リスクは、その他の人の3.2倍!!

指輪っかテストは、サルコペニアの危険度を測るためのもの。

後にくわしく述べる千葉県柏市在住の2044人の高齢者を対象に行われた大規模高齢者フレイル予防研究(通称・柏スタディ)の裏づけによると、「隙間ができる」と答えた人のグループは、「囲めない」と答えたグループの人より、サルコペニアにかかっている率が6.6倍も多かった。

もちろん、「隙間ができる」グループの中で、まだサルコペニアにかかっていなかった人もいるのだが、その後の2年間の追跡調査によって、その人たちがサルコペニアを新規発症する率は、「囲めない」グループより3.4倍も多かったという。

さらにショッキングなのは、「隙間ができる」グループの人は、「囲めない」、「ちょうど囲める」グループの人より、3.2倍も多く死亡していたことがその後の4年間の追跡調査によってわかったということだ。

大事なのは筋力の衰えをいち早く気づくこと

東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)の飯島勝矢先生は、サルコペニアの恐ろしさについて、こう説明する。

「サルコペニアは、単に筋力や身体能力が低下しているというだけでなく、基礎代謝やエネルギー消費量の低下、さらには食欲や食事量の低下も引き起こします。この悪循環によって、転倒や骨折の危険が増えるばかりか、認知症になるリスクまだ高まると言われています。『ふくらはぎはスラリと細いほうが美しい』というのは一般的によく言われることですが、65歳を過ぎたら、それは危険信号だと受けとめるべきです」

ここで重要なのは、「隙間ができる」人でも、毎日の食事や運動量、睡眠の質、生活スタイルなどに気をつけることで、「ちょうど囲める」、「囲めない」という状態に戻れるということだ。

指輪っかテストは、自分の筋力の衰えにいち早く気づくことができるテストとして非常に有効なのである。

「イレブンチェック」で自らのフレイル度をさらにくわしく知る

フレイルチェックのもう1つの指標「イレブンチェック」は、「栄養」、「口腔」、「運動」、「社会性・こころ」という4つの面で自分のフレイル度をさらにくわしく見るためのもの。

フレイルは健康と要介護の中間の状態を指すが、サルコペニアなどの身体的要素だけでなく、うつ・認知症などの精神的要素、孤独・閉じこもりといった社会的要素という3つの要因がそれぞれに関係している。イレブン・チェックは、それらを総合的に評価するための質問表だ。

「はい」と「いいえ」が赤と青の欄で囲われているが、青の欄の丸が多ければ多いほどよく、赤は危険信号である。

赤の欄の丸の数が6つ以上になるとフレイルのリスクはぐっと高まり、丸が1つ増えるごとにリスクが2倍増えていくことが飯島先生らの研究によってわかっている。

飯島勝矢教授

主役は医師や自治体職員ではなく、個々の高齢者

現在、全国各地の50以上の自治体で65歳以上の高齢者を対象にしたフレイルチェックが行われているが、すべての項目に赤がつく人は全体の1割弱、青に丸が1個つく人は約2割、あとの約7割が青に3~4個の丸がつく。これは全国的に同じ傾向だという。

指輪っかテストの全国的な傾向は、「囲めない」が5~6割、「ちょうど囲める」が3~4割、「隙間ができる」が1割弱だとか。

飯島先生は、フレイルチェックの意義について次のように語る。

「フレイルチェックは、半年とか1年おきに定期的に行いますが、青に丸がついて人には『次のチェックまでに赤になるように生活を見直しましょうね』とお願いしています。つまり、医師や看護・介護スタッフ、それから自治体の職員などはサポート役を務めますが、高齢者自身が主体的に取り組むことが重要です。フレイルチェックは、自分の衰えにいち早く気づき、それを改善するための指標なのです」

内藤 孝宏
内藤 孝宏 フリーライター・編集者

「ボブ内藤」名義でも活動。編集プロダクション方南ぐみを経て2009年にフリーに。1990年より25年間で1500を超える企業を取材。また、財界人、有名人、芸能人にも連載を通じて2000人強にインタビューしている。著書に『ニッポンを発信する外国人たち』『はじめての輪行』(ともに洋泉社)などがある。

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