ターミナルケア(終末期医療)とは?施設・自宅とケース別に解説

ターミナルケア(終末期医療)とは、余命宣告をされた方が平穏に過ごせるように身体的・精神的苦痛を取り除くケアのことです。病院やホスピス以外に、介護施設や在宅でも行われます。本人やご家族が納得できる最期を迎えるためにも、本記事を参考にしてみてください。

ターミナルケア(終末期医療)とは?

「ターミナル(終末期)」とは、病気などの進行により、余命わずかになった状態を指します。終末期に行われる医療・看護のことをターミナルケア(終末期医療)といい、残された余命を平穏に過ごせることを目的としています。本人の意思や尊厳を尊重しながら、心穏やかな生活や、生活の質(QOL)を保つための処置が行われます。

対象となるのは、医師から余命数ヶ月と判断された患者です。昔は、がんや認知症、エイズなどの患者が中心でしたが、近年は疾患の種類を問わず実施されています。ただし、本人の希望がなければケアを実施しない場合もあります。また、認知症などで本人の意思確認が難しい場合は家族が実施を判断することになります。

ターミナルケアは主に、介護施設や病院、自宅で行われています。さらに近年では看取りケアを行う老人ホームも増加しています。看取りケアとターミナルケアの違いなどは下記の記事で解説しているので参考にしてください。

【専門家が回答】看取りとターミナルケアの違いは?

ターミナルケアを行う主な場所

介護施設

病院

自宅

ターミナルケアの内容

身体的ケア

精神的ケア

社会的ケア

ターミナルケアでは、主に3つのケアが行われます。ケア内容を把握して、ご本人やご家族に合った施設選びの参考にしてください。

身体的ケア

身体的ケアでは、主に痛みや不快感を取り除く・緩和する投薬などが行われます。また、一般的な介護と同様に、食事、入浴、排せつを基本とした介助も行います。口から食べられなくなった場合は、チューブを使って栄養を入れる「経管栄養」や、胃に穴をあけて食べ物を注入する「胃ろう」、高濃度の栄養輸液を点滴する「中心静脈栄養」などを行うこともあります。ほか、自力で動けなくなった場合は、床ずれを防いだり、体を清潔に保つための清拭などを行います。

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精神的ケア

死を目前に控えると「死に対する不安や恐怖」「遺された家族への心配」などから、精神的に不安定になることが多いです。そうした感情に寄り添い、心穏やかに過ごすためのサポートをするのが、精神的ケアです。孤独や寂しさを感じないよう、家族や友人と会う機会をつくったり、趣味の時間を設けたりします。ベッドのまわりを本人がリラックスできる雰囲気にコーディネートするなども、精神的ケアの1つです。

社会的ケア

終末期医療を受ける上で切り離せないのが、金銭的な問題です。入院や介護によって患者本人や家族に経済的な負担がかかります。この負担を減らすため医療ソーシャルワーカーが、医療費の軽減や支援制度に関する情報提供などをサポートしてくれるのが、社会的ケアです。遺産相続や遺品整理のサポートや、家族のストレスを軽減するための悩み相談などを行うこともあります。

JCHO東京山手メディカルセンター

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介護施設でのターミナルケア

メリット

デメリット

費用

特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの施設でもターミナルケアは行われています。メリット・デメリットや費用面などを踏まえて、どこで行うかを検討してみてください。

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メリット

・プロのスタッフに対応してもらえる

・本人が孤独を感じにくい

・家族の負担軽減

介護施設を利用する大きなメリットは、日常生活におけるケアをプロの介護スタッフに対応してもらえることです。24時間体制で対応してくれるので、本人も安心して過ごせるはずです。家族と離れて過ごすことになりますが、施設スタッフや他の入居者とのコミュニケーションが取れるので、孤独を感じづらい環境かもしれません。

デメリット

・費用がかかる

・容体が悪化すれば、最終的に病院に入院しての看取りとなることがある

・施設によって医療サービスの質に大きな差がある

・家族との面会が限られる

・特養の場合、入居までに時間がかかることが多い

デメリットとして、費用面や家族との面会が限られる点などがあります。また、容態が悪化して病院へ搬送され、介護施設での看取りが実施されないケースも。施設によって医療機関との連携や介護レベルの差が大きいため、それらを踏まえた施設選びが肝心です。

費用

施設での終末期医療の費用は、特養や老健、有料老人ホームなど種類や部屋のタイプ、受けるサービスなどによって様々です。特養など介護保険が適用される施設であれば1~3割の自己負担で利用できます。

病院でのターミナルケア

メリット

デメリット

費用

病院でのターミナルケアは、主にホスピスや緩和ケア病棟で行われます。また、一般病棟でも、医師、看護師、ソーシャルワーカー、理学療法士などからなる「緩和ケアチーム」により終末期医療を受けられることがあります。

メリット

・医師や看護師が24時間態勢でケアしてくれる

・家族の負担が少ない

・ソーシャルワーカーがいれば、医療費や手続きのこともサポートしてもらえる

病院でターミナルケアを受ける場合、医師や看護師が24時間態勢で本人の状態を管理してくれるのが最大のメリットです。容体が急変しても、医療スタッフに対応してもらえます。ソーシャルワーカーのいる病院を選べば、医療費負担の軽減や手続きのサポートを受けることも可能です。

デメリット

・費用負担が大きい

・家族との面会が限られ、本人が不安や孤独を感じやすい

・本人がリラックスしにくい

病院でのターミナルケアは適切な医療処置が受けられる一方、治療内容や期間によって費用負担も大きくなります。家族と離れて暮らしたり、面会時間が限られたりするためご本人が不安や孤独を感じることも。なるべく頻繁に面会に訪れるなど、家族による精神的ケアが大切です。

費用

病院での終末期医療も、基本的には医療保険制度に準じます。75歳以上の後期高齢者であれば、窓口医療費負担は原則1割(現役並所得者は3割、2022年10月より一定以上所得者は2割)となっています。また、高額療養費制度の対象でもあります。

したがって、入院治療の場合75歳以上の後期高齢者で医療費が100万円かかったとする場合、窓口での負担額は10万円、そこから高額療養費4万2,400円が支給され、実質的なひと月の負担額は5万7,600円となります。なお、個室を使った場合の差額ベッド代などは健康保険の適用外となり、全額自己負担となります。

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自宅でのターミナルケア

メリット

デメリット

費用

在宅でのターミナルケアでは、住み慣れた自宅で家族のケアを受けながら、必要に応じて医師や看護師の訪問を受けます。介護施設の不足などの社会的背景からも、今後ますます在宅でのターミナルケアが増えていくと予想されています。

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メリット

・残された時間を家族と過ごせる

・住み慣れた環境でリラックスして過ごせる

・本人が孤独や不安を家族が心配しないですむ

・訪問診療などによって酸素吸入や点滴なども自宅で行える

・費用が抑えられる

在宅でターミナルケアを行う最大のメリットは、住み慣れた環境で最期まで家族と過ごせる点です。リラックスできることに加えて、家族と過ごせるので、本人がもっとも孤独や不安を感じにくい環境といえるでしょう。また、施設や病院と比較して費用面もある程度抑えられます。

デメリット

・家族にかかる負担が大きく、退職や引っ越しを余儀なくされる場合もある

・急変してもすぐ医師に診察してもらえない

・医療ケアを利用する頻度が増えると費用がかさむ

自宅でのターミナルケアは、どうしても介護者側の負担が大きくなります。また、容体が急変した場合、すぐに医師に診てもらえない点にも不安が残ります。訪問での医療ケアや介護サービスを上手く活用すると良いでしょう。

費用

在宅でターミナルケアを行う場合、医師の往診や訪問看護の回数で医療費は変わります。 往診費は1回につき2万円から3万円程度、訪問看護費は1回1万円程度が目安で、健康保険や高額療養費の対象です。年齢や病状により費用負担の上限が異なります。医療費の上限がある場合、入院時の上限よりも金額は低く抑えられています。

訪問介護の場合は、利用する介護サービスによって料金は変わりますが、介護保険が適用されるため、1〜3割の自己負担で利用可能です。このほか、ベッドや車いすのレンタル費用や、自宅の状況次第ではバリアフリー化のリフォーム費用などがかかります。

ターミナルケアの現状と問題点

厚生労働省 人生の最終段階における医療の 普及・啓発の在り方に関する検討会資料より
 

図表からもわかるとおり、自宅での看取りを希望する人は、全体の5割以上ですが、実際には7割以上の人が病院で最期を迎えています。希望と実情の乖離がターミナルケアの大きな問題点といえるでしょう。問題の背景には、家族に迷惑をかけたくない思いから在宅でのケアを希望できなかったり、同居や近居をしていなかったりするなどの事情があります。

以上のような現状の改善策として、国は医療・介護政策を「施設から在宅へ」という方針を打ち出しています。ターミナルケアのガイドラインの改定や、全国の市区町村自治体で「地域包括ケアシステム」の構築を推奨。下記の記事でさらに詳しく解説しています。

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ターミナルケアと類似したケア

緩和ケア

看取りケア

ホスピスケア

エンドオブライフケア

緩和ケア

厚労省では「緩和ケアとは、病気に伴う心と体の痛みを和らげること」と定義しています。投薬により苦痛を緩和してQOL(生活の質)の改善を図るものです。ターミナルケアの要素に加え治療も平行して進める点に違いがあります。がん患者の場合は診断された時点から、がん治療と同時に行われます。

関連サイト「緩和ケア」と「がん治療」--生活の質だけでなく余命も伸ばす治療法

「LIFULL介護」がお届けするウェブメディア | tayorini

看取りケア

無理な延命措置などは行わず、自然に最期を迎えるまでの過程を見守ることを「看取り」といいます。心と体のケアをして苦痛を緩和させつつ、人の尊厳を守ったまま日常の支援を行います。

【専門家が回答】看取りとターミナルケアの違いは?

ホスピスケア

1967年にロンドンに創設された施設に由来し、終末期の患者やその家族の苦痛を取り除くことを目的とした施設で行われるケアです。病院の緩和ケア病棟でのケアもホスピスケアにあたります。

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エンドオブライフケア

命の終わりに、病気に視点を置くのではなく、人生に視点を置いて、最期までその人らしく生きるための支援を行うケアです。緩和ケアが、がん患者などを対象としてきたのに対し、診断名や健康状態、年齢を問わずに行われています。

ターミナルケアで大切なポイント

・本人とのコミュニケーション

・話せない場合は触ってコミュニケーションを取る

・本人がリラックスできるように配慮する

どこで行う場合でも、ターミナルケアは本人に寄り添うことが重要です。会話ができる状態であれば、こまめにコミュニケーションを取りましょう。話せない場合は、触れるだけでも気持ちが和らぐといわれています。また、本人がリラックスできる環境を整えることも大切です。好きな音楽をかけたり、思い出の品を目に入るところに飾ったりするなど、心が安らぐ工夫をしましょう。

様々な選択肢を把握して、納得のいくターミナルケアを

残りの命を平穏に過ごすためのターミナルケア。どこで、どのようなケアを受けるかなど、選択肢は多岐にわたります。それぞれ費用面も異なりますので、選択肢の中から、本人やご家族が納得できるターミナルケアを行ってください。

記事内でも解説した通り、介護施設でターミナルケアを行う方法もあります。プロのスタッフの対応を受けられたり、介護負担の軽減につながったりなどのメリットがあります。「LIFULL 介護」では、ターミナルケアが相談できる介護施設の情報を掲載中。施設入居に関する無料の相談窓口もあります。施設利用をご検討の方は、ぜひチェックしてみてください。

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