有料老人ホームに必要な費用のシミュレーション|料金相場や年間費用を紹介
有料老人ホームへの入居を検討しているけれど、入居に必要な費用や生活にかかるお金がどれくらい必要なのか不安に感じる人が多いのではないでしょうか。こうした不安は有料老人ホームについての基礎知識を押さえておくことで、払拭できるでしょう。
有料老人ホームにかかる費用についての知識を身につけておけば、自分の健康状態や経済状況と比較し、適切なホームを選べるようになります。
ここでは有料老人ホームの種類や費用面、実際のシミュレーションを紹介しています。
有料老人ホームとは
有料老人ホームとは食事・介護・家事・健康管理などのサービスを提供している住まいで、高齢者が心と身体の健康を保ちながら安定的な生活を送ることを目的としています。有料老人ホームは入居者のニーズや健康状態に応じて、以下のような種類があります。
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介護付き有料老人ホーム:生活支援・身体介護・リハビリ・食事サービスなどを提供
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住宅型有料老人ホーム:生活支援・食事サービスなどを提供
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健康型有料老人ホーム:家事サポート・食事サービスなど
有料老人ホームにより、自立者のみが入居できる、要介護認定者のみが入居できる、自立者も要介護認定者もともに入居できる施設に分かれています。自立が条件の施設に入居し、途中で介護が必要になった場合は退去しなければならないケースもあります。
このように有料老人ホームは数タイプに細分化されていて、さまざまなニーズに対応できるようになっています。入居年齢は60歳、もしくは65歳です。自分のライフプランや万が一のことを想定して、元気なうちから入居する人もいます。
有料老人ホームにかかる費用相場
有料老人ホームを利用するために必要となる費用は、大きく分けて以下の2つです。
- 入居時に必要な費用
- 入居後に必要な費用
それぞれの費用について、詳しく解説していきます。
入居時に必要な費用
有料老人ホームに入居することが決まったら、下記のような初期費用が必要です。
- 入居一時金
- 引っ越し費用
- 生活用品
関連記事老人ホームの費用はいくらかかる?介護施設ごとの相場や料金を抑える方法
入居一時金
入居一時金とは前払い家賃のようなもので、数年分の家賃を初めに支払うため、まとまった金額が必要です。公的施設の場合は不要ですが、民間施設である有料老人ホーム入居の際には必要な施設が多くなっています。
入居一時金の相場は0〜数千万円までピンキリです。入居一時金が0円など安く設定されている施設の場合、月額利用料に家賃が上乗せされているケースがほとんどで、その分、毎月の月額費用は高くなります。入居一時金が高額となる理由は、立地の良さやサービスや施設の充実度などが影響しています。
数十年間と長期間入居が想定される場合は、入居一時金を支払い、月額費用を安くした方がトータルでは費用を抑えられるでしょう。
シニアの介護施設への引越し見積もりはどうすればいい?引っ越し費用
選んだ施設や置かれている状況によっては、引っ越し費用がかかるケースもあります。
例えば、入居する施設に自宅の家具や家電を持ち込む場合には運搬費用が必要です。また家具など全てが完備されている場合でも、これまで住んでいた家をそのまま置いておく人、売却する人、一時的にトランクルームに家具を預ける人など、それぞれのケースによってかかる費用は異なります。
家具を有料老人ホームに持ち込む場合の引っ越し費用の目安は、時期などにもよりますが、35,000円程度です。引越し業者によってはシニア向けの引越しプランもあるため、業者選びの際は確認しましょう。
生活用品の費用
有料老人ホームで新生活を始めるには、以下の生活用品が必要になるでしょう。
【入居時に必要となる生活用品例】
- 寝具類
- 衣類
- 履物
- 洗面用具(歯ブラシ、コップ、入れ歯など)
- 衛生用品(マスク、石鹸、タオルなど)
- 洗濯用品
- 介護用品
- 家電(買い換える人の場合)
- 家具(テーブル、椅子、カーテンなど)
施設によって居室に用意されている設備や家具などが異なるため、事前に確認しましょう。また、持ち込みできないものはないかなども確認しておきましょう。
入居後に必要な費用
入居が決まった時の初期費用とは別に、入居後に毎月必要となる費用もあります。
- 月額利用料
- 介護サービスなどの自己負担分
- その他諸費用
月額利用料
有料老人ホームに入居すると、月額利用料が必要です。その内訳は、家賃・管理費・食費などです。施設によって異なりますが、15~40万円前後程度です。
介護サービスなどの自己負担分
介護サービスが必要な場合は、別途介護サービス費がかかります。
有料老人ホームの類型により、介護サービスの利用法や料金体系が異なりますので、確認しましょう。
介護付き有料老人ホームは入居すれば24時間介護を受けられますが、住宅型有料老人ホームは、必要な介護サービスを個別に契約して利用するタイプの有料老人ホームです。健康型有料老人ホームは自立時に入居し、介護が必要になると退去しなければなりません。
介護サービスの自己負担額は所得に応じて、1割・2割・3割と決められていて、地域によっても金額が異なります。
介護度 | 1割負担額 | 2割負担額 | 3割負担額 |
要支援1 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
※2021年4月
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その他諸費用
このほかに、介護保険対象外のオプションサービスや医療費、日常生活費(消耗品代など)が必要です。費用は施設や個人によって異なります。
自立の方で、趣味やスポーツなどを行なっていればその費用がかかりますし、要介護の方であればオムツ代など個別の費用がかかります。
【パターン別】有料老人ホームの費用シミュレーション
ここでは、有料老人ホームに必要な費用を下記のパターンでシミュレーションしてみます。
- 【自立】単身者
- 【要介護1】単身者
- 【要介護4】単身者
- 【自立】夫婦
自立単身者の有料老人ホーム費用例
【入居者プロフィール】
■身の回りのことは自分でできる
■76歳女性
■独身
■今後のことを考えて介護付き有料老人ホーム入居時自立型を利用
■一人でも楽しめる設備が充実した施設を選択
入居一時金 | 3,000万円 |
引っ越し費用 | 10万円 |
生活用品の費用 | 10万円 |
※家具の持ち込み有、引っ越しに伴う買替え多少有
月額使用料 | 18万円(年間費用:216万円) |
介護サービス費用 | 不要 |
その他諸費用 | レジャーや趣味の費用、サークル活動参加費用 |
要介護単身者の有料老人ホーム費用例
要介護認定を受けている方の介護費用は、要介護度と所得に応じた自己負担割合で費用が異なります。
要介護1
【入居者プロフィール】
■要介護1
■81歳男性
■独身
■住宅型有料老人ホームを利用
入居一時金(敷金) | 1,000万円 |
引っ越し費用 | 5万円 |
生活用品の費用 | 3万円 |
月額使用料 | 15万円(年間費用:180万円) |
介護サービス費用 | 1割負担:16,765円、2割負担33,530円、3割負担50,295円(※) |
その他諸費用 | 通院付き添い代、医療費 |
(※)居宅介護の料金体系なので、こちらは区分支給限度額の上限まで利用した場合の金額です。
要介護4
入居者プロフィール】
■要介護4認定
■84歳女性
■夫は他界
■介護付き有料老人ホームを利用
入居一時金 | 800万円 |
引っ越し費用 | なし(家族が運搬) |
生活用品の費用 | 4万円 |
月額使用料 | 19万円(年間費用:228万円) |
介護サービス費用 | 割負担:22,140円、2割負担44,280円、3割負担66,420円(※) |
その他諸費用 | おむつ代、通院付き添い代、医療費 |
自立夫婦の有料老人ホーム費用例
自立の夫婦が入居できる有料老人ホームもあります。介護付き有料老人ホーム入居時自立型、混合型、住宅型有料老人ホームや健康型有料老人ホームがこれに該当します。先々のことを考えて介護が必要になった際に介護を受けられる施設の代表は介護付き有料老人ホームですが、混合型の場合は自立している人向けのプラス料金がかかることがあります。
契約前に必ず確認しましょう。
夫婦で利用 | 1室ずつ個別利用 | |
入居一時金 | 1,800万円 | 1,000万円×2 |
引っ越し費用 | 6万円 | 4万円× 2 |
生活用品の費用 | 13万円 |
夫婦で利用 | 1室ずつ個別利用 | |
月額使用料 | 27万円(年間費用:324万円) | 19万円×2(年間費用:456万円) |
介護サービス費用 | 不要 | |
その他諸費用 | 趣味やレジャー費用 |
夫婦で入居する場合、個別に居室を契約するより、広めの居室に夫婦2人で入居するほうが費用が抑えられます。
夫婦で利用できる有料老人ホームを探すまとめ
有料老人ホームは、入居者のニーズや状況に合わせて多種多様の施設があります。費用面では、施設によって入居一時金に大きな差があります。これは立地や設備・サービス内容が大きく関わっています。
自分にとって必要なサービスが揃っているかどうかを確認しながら、収支のシミュレーションをしてみましょう。いくつかの候補となる施設でシミュレーションをしているうちに、妥協できるポイントなどが明確になってくるでしょう。
専門家に相談したい人はこちらこの記事の制作者
監修者:岡本典子(ファイナンシャルプランナー/CFP、1級FP技能士)
FPリフレッシュ代表。
シニアライフを安心して暮らせる高齢者施設・住宅への住み替えコンサルに注力。
セミナー講師・講演、執筆、監修も行う。著書に『イザ!というとき困らないための 親の介護と自分の老後 ガイドブック』(ビジネス教育出版社)などがある。