【専門家監修】認知症予防の脳トレで大切なポイントとは?
認知症とは、認知機能が低下して日常生活や社会生活に支障をきたすことを指します。認知機能は加齢に伴い低下しますが、それぞれの認知機能を意識して脳トレを続けることで、進行予防、重症化予防につながる可能性があります。
このページでは、認知症予防に繋がる脳トレのコツを現役の理学療法士がご紹介します。
脳トレの前に、認知機能のチェックを!
認知機能は8つに分かれている
まず、認知機能は大まかに以下の8つに分類できます。
- ①記憶力
②注意力
③計算力
④見当識 (現在の年月や時刻、自分がどこに居るかなど基本的な状況把握)
⑤遂行能力
⑥判断力
⑦言語能力
⑧社会的行動能力
加齢に伴い認知機能は低下しますが、どの機能から衰えていくかは人それぞれです。ご自身が苦手になってきていることを見極めて、適切な脳トレを行うことが大切です。
脳トレの意味と必要性
認知機能を維持するためには、脳の血流が良い状態にしておくことが大切です。っているので、行う脳トレの種類によって部位ごとに脳血流量も変化します。ですから、脳トレは鍛えたい認知機能を意識して、脳の隅々まで血流を促すことが重要です。
脳トレで大切な3つのポイント
脳トレを行う前に、以下の3つのポイントを押さえましょう。
①以前よりも衰えてきている「記憶力・計算力」などを感じること
②衰えてきた認知機能に対して、早期から脳トレをすること
③継続的に脳トレを続けること
認知症は早期発見、早期対応が大切です。普段からこの3つのポイントを意識して生活し、認知機能の変化を捉えていきましょう。
日常生活でも出来る脳トレ
日常生活で脳トレ
脳トレは、専門の書籍やゲームソフトを用意しなくても手軽に行うことが出来ます。
たとえば、将棋やオセロなどのボードゲームは、注意力や判断力を複合的に刺激する脳トレになります。対人ゲームであれば、対戦相手とのコミュニケーションを通じて、言語力や社会的行動能力など複数の機能を刺激する脳トレになります。
また、買い物などの際に合計代金を暗算することで、計算力や記憶力の脳トレになります。2つの機能を同時に使用することを「デュアルタスク」と呼び、認知症予防に効果があると言われています。
日常生活には様々な脳トレが含まれているので、ぜひ意識してチャレンジしてみてください。
脳トレ | 刺激される認知機能 |
---|---|
将棋・オセロ | 注意力・判断力 |
買い物代金の暗算 | 計算力・記憶力 |
【動画】おすすめの脳トレ体操
認知症予防におすすめの脳トレ体操をご紹介します。
動画を見ながら、ぜひ毎日やってみてください。
医療機関や介護施設ではどんな脳トレが行われている?
医療機関やリハビリ病院でも、日常生活に基づいた総合的な脳トレを行います。
本や新聞などを音読したり歌を歌ったりすることことは、記憶力や注意力、遂行力を養います。音の刺激を用いた脳トレは医療機関でもよく取り入れられています。また日記を書いたり、新聞記事を書き写したりすることは、記憶力や見当識を養います。
このように何気ない毎日の習慣をつくることが、認知症の予防に効果的かもしれません。脳トレはターゲットとしていた機能以外にも波及効果があり、認知機能向上に貢献するという報告も出てきています。ご自身で末長く、継続的にできる課題を見つけていきましょう。
日頃から誰かと一緒に、興味を持てることを、日課として楽しんで取り組めることを探し続けましょう。
1人で悩まないことが大切
悩みを抱えきれなくなる前に
認知機能は、多くの人が加齢に伴い低下していきます。脳トレによる認知機能の維持・向上にはいずれ限界が訪れます。
認知症になったとしても抱え込むのではなく、公的サービスや周りの助けを最大限に活用することで、豊かな余生を過ごすことも大切です。その際は、お住まいの地域包括支援センターや役所、またはかかりつけ医などに迷わずご相談してみてください!
イラスト:坂田 優子
認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?早めのご相談を
認知症により判断能力が不十分とみなされると、ご本人にもご家族にも預金がおろせない、不動産を売却できないなど、「資産凍結」に陥るリスクがあります。
備える方法を詳しくみる
この記事の制作者
著者:新田 智裕(理学療法士)
横浜市青葉区の青葉さわい病院にて3歳〜105歳までのリハビリの担当を経験し独立。現在は、同じ青葉区内で、理学療法士と管理栄養士がつくる デイサービス「バレーナ」を運営。理学療法士が考案した、YouTubeで「バレーナチャンネル」を運営。シニア向けのホームエクササイズ動画を配信中。
監修者:内海 久美子(砂川市立病院 副院長・認知症疾患医療センター長)
NPO法人中空知・地域で認知症を支える会理事長、一般社団法人認知症疾患医療センター全国研修会代表理事も務める。
長年にわたり、医師として認知症の診断、治療の傍ら、地域に向けた啓発や関係者とのネットワークづくりに尽力。
「砂川モデル」として全国からも注目され、講演、取材、TV出演など多数。