【栄養士が解決】高齢者の食事と塩分について

減塩食

糖尿病、高血圧、脳血管疾患など生活習慣病の高齢者は、治療のため減塩を必要とする場合が多いです。

高齢者は特に味覚の低下によって気づかぬうちに塩分をとり過ぎているため、減塩食への必要性が高くなる場合などがあります。

日頃から減塩・低塩習慣を身につけていきましょう。

高齢者の食事と塩分について

高齢者食の背景には、糖尿病、高血圧、脳血管疾患など生活習慣病の治療上、減塩を必要とする場合や味覚の低下により気づかぬうちに塩分をとり過ぎているため減塩食への必要性が高くなる場合などがあります。

いずれも過度の塩分摂取が健康へ影響を及ぼすことから日頃から減塩・低塩習慣を身につけていくと同時に減塩・低塩食でもおいしい食事となるよう工夫することで食事の摂取量が少なくなるのを防ぎ、しいては、心配される低栄養状態を予防することにつながります。

病気の治療上、塩分制限が必要となる場合

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 脂質異常症(高脂血症)
  • 脳血管疾患、心疾患
  • 高尿酸血症
  • 腎臓病
  • 肥満

また、高齢に伴う味覚低下や味の濃い食事を好む食習慣のある方は、塩分のとり過ぎに注意が必要です。

なぜ塩分とりすぎはダメ?塩分と血圧の関係

”食事制限”よりもおいしく食べる“工夫”を

病気の治療上やむを得ず厳しい塩分制限が必要となる場合があります。

しかし、それ以外は必要以上に塩分制限を強いるのではなく、調理方法や食材の特徴を活かしたおいしい減塩・低塩食を工夫することで継続した健康習慣を身につけるようにしたいものです。

 うま味成分を引き出す

うま味とは、基本となる5つの味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5種類)のひとつで料理にコクやまろやかさ、深さを与える味で、消化の促進、胃液の分泌にもかかわっています。

うま味のある食材:昆布、かつお節、煮干し、トマト、チーズ、干ししいたけ、味噌・しょう油の発酵食品など

*市販のだしの素には塩分が含まれている場合がありますので、含有量をご確認ください

うま味成分を引き出すおいしい組み合わせ

うま味成分には、昆布や野菜、チーズなど多種類の食材に含まれるグルタミン酸、かつお節などの魚類や肉類に含まれるイノシン酸、干ししいたけなどきのこ類に含まれるグアニル酸があります。

例えば昆布だし(グルタミン酸)のみ単独で味わうよりもかつお節や煮干しなど(イノシン酸)と組み合わせることでうま味が数倍にもアップするといわれています。

そのため、塩分を控えてもおいしさを損なうことなく味わうことができるのです。

例)うま味成分が相乗効果となる組み合わせ

  • [昆布(グルタミン酸)]
          +
    [かつお節、煮干し(イノシン酸)]


    ・[セロリ、玉ねぎ、トマトなどの野菜(グルタミン酸)]
          +
    [鶏肉、豚肉、牛肉など(イノシン酸)]

作ってみよう!超カンタンだし汁(水出し)

市販のだしは便利ですが、かつお節からだし汁を作ってみたい、でも面倒・・・という場合にとても簡単で便利な方法をご紹介します。

かつお節:5g、昆布:5g、水:500ccを煮沸した清潔なビンなどに入れて冷蔵庫で一晩置くだけで翌朝にはだし汁ができます。

グラグラ煮立たせないよう加熱し、かならず作り置きせず使い切りましょう。 また、濃いお出しを好まれる際には、かつお節、昆布の量を調整してください。

酸味を活用する

酢は、料理に活用することで減塩効果をもたらします。酸味が苦手な方は、酢に少量の塩を加えることですっぱさが弱まり食べやすくなります。

また、リンゴ酢などのフルーツ酢を活用されるとフルーティな香りとまろやかな酸味を味わうことができます。

調味料を加えたポン酢、三杯酢、土佐酢、生姜を加えた生姜酢、ゆずやレモン、柑橘類を加えた酢など種類も多く香りと味を楽しみつつ、和え物や焼き物にはしょう油のみを使用するよりも減塩効果が望めます。

このように酢は減塩効果とともにからだに対して食欲増進、疲労回復の役割がありますので暑さで食欲が低下しがちな時期には積極的に活用したい調味料でもあります。

おもな酢の種類:米酢、穀物酢、ワインビネガー、バルサミコ、フルーツ酢(リンゴ酢、ぶどう酢など)、黒酢など

手作り土佐酢

土佐酢とは昆布・かつおで割ったまろやかでうま味のある酢をいいます。和え物や和風サラダにもご活用ください。

[基本割合] だし汁(かつお・昆布):大さじ5、薄口しょう油:大さじ1、酢:大さじ2、みりん(砂糖):大さじ1

*割合はお好みによって調整してください

調理方法で減塩を

加熱調理の調味料は仕上げに

しょう油の香ばしさ、ソースの匂いは食欲をそそります。

フライパンなどの調理器具で料理をする際、仕上げに少量のしょう油やソースを鍋はだに沿って(鍋の縁から加える)加えることで調味料が適度に焦がされ香ばしくなり、材料に直接調味するよりも減塩となり、おいしさも引き出すことができます。

しみ込ませるよりも表面に味付けを

料理を口に運んだ際においしいと感じやすくするために、表面に味を絡ませて調味しましょう。

魚の照り焼きは、たれに漬けて味をしみ込ませるよりも焼いてからたれを絡ませることで照りよく香ばしくいただくことができます。

まとめ

「減塩・低塩=薄味でまずい」という印象をもってしまいがちですが、味を薄めすぎず、塩分自体を控えても代わりに様々な味が際立ち、引き出され別のおいしさを味わうきっかけになります。

味覚の低下によりおいしさをうまくキャッチできない場合もごまや香りのある食材を活用することで嗅覚を刺激することができます。

高齢者のお食事は制限よりもプラス発想でお食事を楽しんで頂きたいと思います。

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この記事の制作者

徳田 泰子

著者:徳田 泰子(「株式会社ヘルシーオフィスフー」代表取締役。管理栄養士・調理師)

病院での栄養管理業務に約10年間携わり、健康であるためには日々の暮らしにおいて「おいしく、楽しく」食事をとることが重要であると考え起業しました。
家族の在宅での介護・看取りの経験からグループホームをはじめ高齢者施設での栄養サポートを行い、安全・かんたん・おいしい食事づくりのご支援をさせて頂いております。
高齢者食支援専門サイト「スマイリーフード」http://foo.co.jp/管理運営。

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