【栄養士が解説】咀嚼とは?

咀しゃくとは、食べ物を細かく砕き、すり潰し、唾液と混ぜ合わせて飲みこみやすくまとめる作業をいいます。

咀しゃくについて正しく理解し、安全でおいしい介護食を作りましょう。

咀しゃく中、こんなことが口の中で起きている!

口の中では、咀しゃくにより唾液が分泌され、同時に唾液に含まれる消化酵素により食べ物をからだに取り込むため最初の消化活動がスタートします。

歯の状態をチェックしてみよう

歯は、食べ物をかみ切る、かみ砕く、すり潰すという咀しゃくの重要な役割を担っています。歯の状態、かみ合わせが咀しゃくに影響を与えます。

自分の歯は何本残っているでしょうか

⇒加齢によってあるいは歯周病などで歯茎が弱くなり、かむ力が弱っていませんか。

義歯(入れ歯)があっていますか

⇒義歯(入れ歯)が合わずかむたびに痛みが生じたり、かみ合わせがあっていなければ、かむ力が弱まり唾液の分泌も減ります。

舌の動きをチェックしてみよう

ステップ1

食べ物をかみ砕き、すり潰して唾液と混ぜ合わせ、かたまり(食塊・しょっかいと言います)にするとき

⇒食べ物を舌の横部分と内頬に挟み、頬を内側へ寄せて固定しながら咀しゃくしています。

ステップ2

かたまり(食塊)を取りまとめ飲みこむ準備をするとき

⇒舌で食べ物を左右に移動させ、混ぜながら小さなまとまりをいくつも作り飲みこみやすくしています。

ステップ3

かたまり(食塊)を喉の奥に送り込み、飲みこむとき

⇒ごっくん!するとき舌先から奥へと盛り上がりかたまり(食塊)を喉へ送り出します。

舌に意識を集中してみてください。舌が動かなくては、お食事ができないということがご理解いただけたでしょうか。

おいしさを感じるセンサーがあります

食べ物を前にしたときは、目や鼻(香り)で感じたことを脳では「おいしそう!」と感じ一方、臭いや色で危険を判断しています。

センサー1

食べ物を口に運ぶと無意識に唇で固さ、粘着性、温度などの細かな情報を得ています。

センサー2

次に口の中では、食べ物を瞬時に上顎に押しつけ食べ物の性質を見極めています。

べ物を移動させる舌には、甘味・塩味・苦味・酸味・うま味を感じ取るセンサーがあります。

センサー3

固い時は、臼歯など適所へ移動させます。歯の根っこ(歯根膜)部分に歯ごたえを感じ取るセンサーがあります。

何気なく食べている行為は、無意識に唇も舌も内頬も素晴らしい連係プレーをとり、食事がうまくからだの中へとり入れられるように動いています。
 

咀しゃくはなぜ必要なの?

歯の欠落ややむを得ずかむ食事ができない方を除いては、歯のケアや治療を行い、できる限りかむ環境を整えてご自分で咀しゃくするように工夫してみましょう。

長い期間、かまないでいると舌の筋力低下、唾液が減少してしまいます。使わないことによる機能低下(廃用症候群)も報告されています。

かまずにツルンとのみ込めた方がラクかもしれませんが機能は退化してしまう恐れがあります。

咀しゃく、嚥下が難しい方には専門家の指導のもと訓練やリハビリにより少しでも機能回復が望め食事の楽しみが続くことを願っています。

そのためにも特別でなく、何気ない日常の食事にかむ食事をとり入れて頂きたいと思います。それが介護予防へつながります。
 

咀しゃくを補ってくれる介護食の主なポイント

現存する咀しゃく機能に合わせて、硬さや大きさの工夫をしましょう。

  • 固さの工夫:かみやすい、つぶしやすい硬さに。
  • 大きさの工夫:食べ物の硬さによって、大きさを調整。(すべてを刻んだ食事にしない)
  • まとまりの工夫:口の中でかみ砕いていくとまとまりのある方が食べやすく、喉の奥に送り込みやすい。
  • 調理方法の工夫:蒸す、煮るなど食材に水分を含める調理方法は食材をふっくらとやわらかく仕上げます。

まとめ

高齢者にとって食事は、生きがい・日々の楽しみ・健康増進および生命維持に重要な役割をもっています。

食事が高齢者に食べやすくすることも重要ですが、必要以上では逆効果となります。自らの「食べる機能」を維持できる食事を食卓に盛り込むことは将来の介護予防を遅らせる助けとなります。

食に対する意欲を失うことなく自らで咀しゃくし、飲みこみ、味わうことのできる機能を持ち続ける食事を工夫していきましょう。

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この記事の制作者

徳田 泰子

著者:徳田 泰子(「株式会社ヘルシーオフィスフー」代表取締役。管理栄養士・調理師)

病院での栄養管理業務に約10年間携わり、健康であるためには日々の暮らしにおいて「おいしく、楽しく」食事をとることが重要であると考え起業しました。
家族の在宅での介護・看取りの経験からグループホームをはじめ高齢者施設での栄養サポートを行い、安全・かんたん・おいしい食事づくりのご支援をさせて頂いております。
高齢者食支援専門サイト「スマイリーフード」http://foo.co.jp/管理運営。

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