【栄養士が解決】糖尿病でもおやつは食べていい?
糖尿病のために菓子類を控えるというのは必要なこと。しかし、日常的に食事以外の時間にちょっとした間食をつまむ機会はたくさんありますよね。
近所のお友達からお菓子のおすそ分けをいただくとか、習い事やサークルでお土産を持ち寄ったり、フルーツ狩りにお出かけしようと誘われるなど。
糖尿病を患っていても、甘いものが食べたくなるのはごく普通のことです。
治療に必要なカロリー制限
みなさんはどんなおやつが好きですか?
春はいちご大福や桜餅、夏はかき氷やアイスクリーム、秋には焼き芋やおはぎ。
冬はこたつでみかんやお汁粉など、甘いものをめぐる食の思い出は心をいやしてくれるものばかりですよね。
糖尿病治療のための栄養指導のテキストにはこのように記載されています。
- 「嗜好飲料(果汁ジュース、炭酸飲料など)、アイスクリーム、ジャム、煮豆、菓子パン、菓子類。これらの食品は砂糖を多く含みますので血糖値や血液中の中性脂肪が高くなりやすいなど、糖尿病の治療上好ましくありません。できるだけ飲食しないよう心がけるべきです」
(日本糖尿病学会 編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」)
治療のために菓子類を控えるということは必要なことではありますが、日常的に食事以外の時間にちょっとした甘いものをつまむ機会はたくさんあるかと思います。
陽子さんのエピソード
宮崎陽子さん(仮名)は、義理のお母さんの自宅のそばに住んでいます。このたびケアマネジャーさんから、お義母さんが新たに通うことになったデイサービスの説明を受けました。
このとき、15時におやつがでることを聞き、持病である糖尿病のことを気にして自宅でほとんど甘いものを食べていないお義母さんのことが心配になり、そのことについて本人に聞いてみることにしました。
陽子さん:お義母さん、来週からデイサービスに行くことになったと伺いました。どんなところか聞きましたか?
お義母さん:そうね、行ってみないと分からないけれど、体操とかやってくれるみたい。大きなお風呂もあるみたいね。
陽子さん:パンフレットを見るとご飯がすごく美味しそうですね。
お義母さん:そうなのよ。おやつもでるらしくて、私ひとり食べないってわけにいかないよねぇ。ちょっと困ったなと思ってね。
陽子さん:少しくらいいいんじゃないですか?
お義母さん:いいのかしらねぇ。でもお菓子は控えるように言われていたし、朝ごはん減らしていけばいいかしらね。
上記のようなやりとりのように、糖尿病の療養を続けている方にとって間食の問題は時によって悩ましいものとなります。
冒頭で紹介した「糖尿病食品交換表」にはもう一つ添え書きがあり、「飲食する場合には主治医とよく相談し、その指示を受けましょう」とあります。
よって、菓子類や嗜好食品は療養に好ましくないのは明らかですが、飲食に際し主治医に相談するよう示唆されていることがわかります。
陽子さんは、おやつのことを心配しているお義母さんについてケアマネジャーさんへ相談しました。
すると主治医に確認をとってみるように促されたので、久しぶりに受診に付き添い、デイサービスでの間食について相談したのでした。
主治医の先生は「検査値も安定しているし、週に1、2回なんだから皆さんとお茶の時間を楽しんでください。」と言ってくださいました。
昨今高齢者の糖尿病の療養では、病気の程度にもよりますが、合併症の発症予防はもちろんのこと、個別性を重視した療養となるように留意されていることが周知されてきました。
このため普段気を付けているなら、たまのおやつタイムは楽しんでもらいたい、季節の行事も楽しんだ方がいい、そのような考え方の先生も多くいらっしゃるのです。
同じくクリニックの管理栄養士さんからは「おやつのために食事を減らして、お菓子がご飯代わりにならないように気を付けてくださいね。デイサービスに行くのはエネルギーを使うことだし、主食を減らしてしまっておなかが空きすぎるのもよくないです」とアドバイスをもらいました。
こうしてお義母さんは安心してデイサービスに行くことができました。
陽子さんは今まで「わざわざ先生や看護師さんに聞くのが億劫」と思っていたけれど、たまには受診に付いて行き、日常のことを相談するのも大事だな、これからは少しお義母さんとお茶の時間を楽しめるといいな、と思ったのでした。
管理栄養士からのアドバイス
糖尿病を患う方やそのご家族から「どんなおやつなら食べてもいいの?」と聞かれることがあります。甘味を抑えたお菓子ならいいの?低カロリーの食品?果物ならどう?などです。
個人差もあるため、おすすめのおやつを選ぶことは本当に難しいです。町のお菓子屋さんの中には低エネルギーの和菓子を提供しているところもありますし、自宅で低カロリー甘味料を使用したおやつを作るのも一案です。
私は上記のような質問を受けた場合は「どんなおやつが食べたいですか?」と質問をしています。
美味しいおやつを食べるためには病状が安定していることが大切です。
お楽しみのおやつと運動やリハビリした時のエネルギー補助のための補食では意味合いも違ってきます。
お薬をきちんと飲めているか、間食をとる状況はどうか、栄養指導で一緒に相談しながら生活の中の楽しみであるおやつについて患者さんとともに考えていくことが大切だと思います。
また、ご本人だけでなくご家族も間食が許容できる病状かどうかを共に把握することで、療養に関する心配が軽減できると思います。
お菓子を通じた季節の行事や家族の御祝い事、お友達との会話など楽しい思い出が心の栄養となります。
療養中であっても上手に付き合っていきたいですね。
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この記事の制作者
著者:花本 美奈子(「栄養ケアサポートLINKのぼりと」管理栄養士)
1995年に管理栄養士の資格を取得し、主に病院での患者指導、給食管理業務に携わっていました。
2014年に川崎市で「栄養ケアサポートLINKのぼりと」を立ち上げ、訪問看護ステーションや介護事業所等で栄養コンサルテーション業務、クリニックで訪問栄養食事指導を行っています。患者様の多様な食の背景に共感しつつ療養に即した最適な支援となるよう心がけています。