ヒートショックや感染症|高齢者が冬に注意したい健康管理
気温が下がり乾燥する冬は、ヒートショックやウイルス性の感染症など高齢者の健康にさまざまな影響を与えます。
ここでは冬場に気を付けたい病気や事故について解説し、その予防法をご紹介します。
命を脅かすヒートショック
ヒートショックとは、室温の急激な変化で血圧が著しく変動し、心筋梗塞や脳梗塞、めまい、失神などの症状が現れることです。突然死の原因となることもあります。
冬は暖房を使用することで部屋と部屋の間で温度差が大きくなります。体は気温の変化に合わせて体温を調整しようと、血管を広げたり縮めたりします。そのため血圧が上がったり下がったりして、ヒートショックが起きやすくなります。また高齢者は高血圧などの持病を抱える人が多いため、特に注意が必要です。
浴室やトイレといった気温が低い部屋には、暖房器具を設置するようにしましょう。またしっかりと水分を摂る、熱すぎるお湯には浸からない、長湯をしすぎないといったことにも気をつけましょう。
冬の脱水
脱水とは、体に必要な水分やミネラルが不足した状態です。命に関わる危険な状態になることもあります。
気温が高く、汗をかく夏に起こりやすい印象がありますが、冬も注意が必要です。なぜなら、空気が乾燥していることに加えて、気温が低くて喉が乾きづらいために水分摂取量が少なくなりやすいため。加えて高齢者は喉の渇きを自覚しにくいため、水を飲む機会が更に減ってしまいがちです。
食事のときに加えて、起床時、外出や入浴前後、就寝前など、ひと行動ごとにお水を飲んで水分摂取の機会を増やすと良いでしょう。
インフルエンザ
冬は感染症にも気をつけたい季節。その代表がインフルエンザです。38℃以上の発熱や頭痛、だるさ、関節痛、筋肉痛などの症状が現れます。
高齢者は重症化しやすいため、感染予防が重要です。インフルエンザウイルスは咳やくしゃみと一緒に広がっていきます。流行している時期には人混みを避け、外出するときにはマスクをつけることが大切です。手についたウイルスから感染することを防ぐために、手洗いもしっかりと行いましょう。
この他、インフルエンザワクチンを打つことも感染予防に効果的です。65歳以上であれば接種費用の助成を受けることができます。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
ノロウイルス
もうひとつ冬に注意したい感染症として、ノロウイルスがあります。罹患すると嘔吐や下痢などの激しい胃腸症状を引き起こします。加熱が不十分な二枚貝や、ノロウイルスに感染した人の嘔吐物・便から感染することが多いです。
二枚貝を食べるときは十分に火を通し、食事の前やトイレの後は流水と石けんを使ってしっかりと手を洗いましょう。
家族に嘔吐や下痢をしている人がいる場合には、感染を広げないためにこれらを正しく処理をすることが重要です。周囲に広げないようにペーパータオルで拭き取り、次亜塩素酸ナトリウムで消毒しましょう。乾燥すると中にいるウイルスが浮遊してしまうので、速やかに処理することも大切です。
皮膚トラブル
冬に気をつけたい皮膚トラブルは、乾燥と低温やけどです。どちらも高齢者は注意が必要です。
- 皮膚の乾燥
- 冬は空気が乾いているために、皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥すると皮膚のバリア機能が低下してしまうため傷がつきやすく、褥瘡(じょくそう:床ずれのこと)ができやすくなります。特に自分で体を動かすことのできない、介護が必要な人は注意が必要です。
- 一日一回は全身の皮膚状態を確認するとともに、保湿ケアを習慣にして皮膚の乾燥を防ぎましょう。
- 低温やけど
- 寒い冬は暖房器具を使う機会も増えます。しかし、高齢者は皮膚の感覚が鈍いために熱さに気づきにくく、低温やけどを起こしやすいです。カイロや湯たんぽ、暖房器具を使用するときには注意が必要です。
- 定期的に皮膚を観察して、赤みや痛みが出ていないかを確認しましょう。また長時間同じ場所にカイロなどが触れないように気をつけましょう。
お餅による窒息
お正月になるとお餅を食べる機会が増えます。このときに注意したいのが窒息です。東京消防庁管内では、2014年からの5年間で482人がお餅などをのどに詰まらせて搬送され、そのうちの9割が65歳を超える高齢者でした。
高齢者は噛む力や飲み込む力が弱いことに加えて唾液量が少ないため、窒息のリスクが高まります。お餅を食べるときには十分に注意しましょう。
<のどに詰まらせにくいお餅の食べ方>※
- お餅は小さく切っておきましょう
- 先にお茶や汁物を飲んで、のどを潤しておきましょう
- よく噛んで、唾液と混ぜ合わせてから飲み込みましょう
※必ずしもすべての方が詰まらないことを保証するものではありません。
まとめ
冬に注意したい高齢者の健康管理についてご紹介しました。高齢者の体の特徴を理解して対策することで、寒い冬も元気に過ごしましょう。
イラスト:坂田 優子
この記事の制作者
監修者:矢込 香織(看護師/ライター)
大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。