介護保険の特定疾病、閉塞性動脈硬化症(ASO)とは?

閉塞性動脈硬化症(ASO)は足の血管が動脈硬化によって細くなったり詰まったりすることで、足先まで血液が届きづらくなる「下肢の虚血(きょけつ)」が起こる病気です。介護保険の特定疾病の対象となっています。

はじめは間欠性跛行(かんけつせいはこう)という、歩行時に足のだるさや痛みで歩けなくなり、しばらく休むと歩けるようになる症状が起こります。病気が進行し、悪化すると足の切断が必要になることもあります。ここでは閉塞性動脈硬化症の症状や治療法、生活上の注意を解説します。
 

閉塞性動脈硬化症(ASO)とは?

閉塞性動脈硬化症(ASO)は、足の血管が動脈硬化によって細くなったり詰まったりすることで、足先まで血液が届きづらくなる病気です。間欠性跛行と呼ばれる症状などが出て、悪化すると足の切断が必要となることもあります。

60歳以上の男性に多く、喫煙習慣、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、慢性腎不全などがある人はかかりやすいと言われています。

心臓の血管が詰まる冠動脈疾患や脳の血管が詰まる脳血管疾患などにもなりやすく、それが原因で亡くなることもあるので注意が必要です。
 

閉塞性動脈硬化症は介護保険の特定疾病

閉塞性動脈硬化症は介護保険の特定疾病です。そのため、40歳以上65歳未満であっても、申請することで介護保険サービスを利用することができます。

閉塞性動脈硬化症の症状

閉塞性動脈硬化症では血管が詰まることで足先まで血液が届きにくくなります。その影響で、さまざまな症状が出現します。

はじめは歩行障害の一つの間歇性跛行(かんけつせいはこう)が現れます。また、安静にしていてもしびれ、痛み、冷感を感じるようになります。

悪化すると、足の皮膚や筋肉が死んでしまう潰瘍や壊疽(えそ)が出来てしまい、最悪な場合は足の切断が必要になります。また男性では勃起障害が生じることもあります。

間歇性跛行(かんけつせいはこう)
一定の距離を歩くとふくらはぎにうずくような痛み、しびれ、疲労感が現れ、歩くことが次第に難しくなります。しばらく休むと症状が治まって歩けるようになりますが、歩き続けると再び症状が現れます。
 

閉塞性動脈硬化症の原因

閉塞性動脈硬化症の原因は、動脈硬化によって足の血管が細くなったり詰まったりすることです。

動脈硬化

血管の壁が硬く、柔軟性がないために、血液が流れる圧力で血管がダメージを受けやすい状態です。
血管の壁の内側には脂質などの塊(プラーク)や血栓が付着しやすいため、血管が詰まる危険性が高まっています。

喫煙習慣、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満は動脈硬化の5大要因と言われています。
 

閉塞性動脈硬化症の検査

閉塞性動脈硬化症は診察で下肢の虚血を疑われ、手足の血圧の差を見るABI検査でも下肢動脈(足の動脈)の血流低下を認めた場合に、CTやMRIや血管造影などの画像検査で血管の詰まり具合を確認して診断されます。

診察で下肢の虚血が疑われるものの安静時のABI検査では正常範囲である場合は、運動の負荷をかけた後にABI検査を再度検査することもあります。

ABI検査
手足の血圧を同時に測定して比べることで、閉塞性動脈硬化症が起きているかを評価する検査です。
診察で下肢の虚血が疑われるものの安静時のABI検査では正常範囲である場合は運動負荷試験を行うこともあります。
運動負荷試験
間欠性跛行の重症度を調べることができます。
まず、ランニングマシンを使って一定時間歩いてもらいます。そして、運動前後のABI検査結果の変化や、間歇性跛行が出現するまでの歩行量、回復までに要する時間、酸素を運ぶヘモグロビンの濃度などを確認します。
画像検査
画像検査は、血管の様子を詳細に確認することができるので診断に欠かせません。特に、足の血管治療を行う場合には必須となります。検査には、以下のようなものがあります。

ドプラ超音波検査

超音波を用いて血管の詰まりや血流異常があるかどうかを調べます。

CT検査、血管造影検査

造影剤を使用して下肢動脈の画像検査を行います。

MRI検査

下肢動脈の画像検査を行います。

造影剤でアレルギーを起こしたことがある人や慢性腎不全を患っている人には、造影剤を用いるCT検査ではなくMRI検査を施行しますが、画像の質が劣ることに注意が必要です。

皮膚血流(toPO2、SPP)
重症な閉塞性動脈硬化症の場合に行います。
重症度の確認、潰瘍がどの程度治りそうかの評価、足を切断する場合にどの部分で行うかの決定のために、足に機械を取り付けて皮膚の血流を調べます。

ここまで、閉塞性動脈硬化症の原因や検査について解説しました。ここからは生活上の注意点や治療法について見ていきましょう。

閉塞性動脈硬化症の生活上の注意点

日常生活でいくつかのことを心掛けることで、閉塞性動脈硬化症の悪化を防ぐことができます。

足の観察
血管が詰まると足の脈の触れが弱くなり、しびれや冷感を感じたり、皮膚の色が悪くなったりします。
1日に1回は足の甲で脈の触れを確認するようにしましょう。
脈の触れがわかりにくい人は、皮膚の状態を観察して、悪化の兆候がないかをチェックしましょう。
足の保温、保護、清潔
足が冷たくなると血管が収縮し、血流が悪くなってしまいます。靴下などで保温しましょう。
また閉塞性動脈硬化症では血流が悪いため、健康な人に比べて傷や皮膚病の治りが悪くなります。一年を通して靴下を着用し、深爪をしないように気をつけて、足の保護に努めましょう。
また皮膚病予防のために、足を清潔にしておきましょう。
食事
閉塞性動脈硬化症の原因である動脈硬化は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などで悪化します。塩分や脂質の摂りすぎに注意し、バランスのよい食事を心掛けましょう。
水分摂取
体の水分が不足すると血液が濃くなり、血管が詰まりやすくなります。毎食の水分摂取に加えて、起床時や就寝時、入浴・外出・運動の前後などには水分を摂るようにして、脱水に気をつけましょう。
運動
体を動かすことで血流が良くなります。特別な運動が難しくても、歩くだけで十分な運動になります。散歩を習慣にするなどして、積極的に体を動かしましょう。
人工血管の保護
手術で人工血管を使用した人は、その部分を強くぶつけたり、圧迫したりしないように注意しましょう。ゆったりとした服装を心掛け、あぐらや正座は避けるようにしましょう。

閉塞性動脈硬化症の治療

閉塞性動脈硬化症の治療では、動脈硬化の予防と血流の維持・改善がポイントとなります。

禁煙

閉塞性動脈硬化症の原因は動脈硬化です。喫煙は動脈硬化を進行させる大きな原因となるため、閉塞性動脈硬化症を悪化させないためにも、禁煙はとても大切です。

禁煙治療は条件を満たせば、健康保険が利用できます。まずはかかりつけ医に相談しましょう。

運動療法

運動療法を行うことで血流を増やすとともに、血液中の酸素を効率よく利用できるようになります。

ランニングマシンの上を歩きつづけ、足の痛みが出たら休憩し、治まったら歩行を再開するのを30分間繰り返します。週3回、最低3ヶ月間行います。

薬物療法

血流をよくして症状の改善を図るとともに、心臓や脳血管疾患を予防することを目的として、生活習慣病の治療や血栓を予防する内服治療を実施します。

また、間欠性跛行の症状改善のために血管を広げる治療を行うこともあります。

生活習慣病の治療薬

高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある場合は、それらをコントロールするための薬が処方されます。

抗血小板薬

血栓とは、血管の内側に血小板が付着することでできた血液の塊のことで、血管が詰まる原因となります。そのため、血小板の付着を防ぐための薬を内服することがあります。

内服中は出血しやすく、止血しにくくなるので、けがをしないように注意が必要です。

血管拡張薬

血管を広げることで、血流の改善を目指す薬です。

手術

運動療法や薬物療法を行っても改善が見られない場合には、手術が検討されます。

カテーテル治療

血管の中にカテーテルと呼ばれる管を通して、詰まったところにステントと呼ばれる金網でできた筒を置くことで、再び血液が通るようにする治療法です。

バイパス術

狭くなったり詰まったりしたところを、体の他の部分から切り取った血管や人工血管に置き換えることで、血流をよくする方法です。

カテーテル治療よりも体への負担が大きいため、カテーテル治療が不向きな場合に考慮されます。

閉塞性動脈硬化症は循環器内科などで診察・治療を行います。心配なことがある場合にはかかりつけ医に相談するか、近くの循環器内科を受診しましょう。

イラスト:坂田 優子
 

この記事の制作者

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監修者:柴山 謙太郎(東京心臓血管・内科クリニック 院長)

厚生労働省 臨床研修指導医
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・内科指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本超音波医学会 超音波専門医・超音波指導医

HP東京心臓血管・内科クリニック

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