介護老人保健施設(老健)とは?費用や入居条件、特徴などをわかりやすく解説

介護老人保健施設(老健)は、要介護者の自宅復帰を目的とした介護保険施設です。自宅復帰というはっきりとした目的があるため、入居条件や対象者も明確に定められています。ここでは、費用や特徴、サービス内容などにも触れているので、ぜひ参考にしてください。

介護老人保健施設(老健)とは?

介護老人保健施設(老健)とは、要介護高齢者(要介護1以上)が自宅復帰を目指すための介護保険施設です。具体的なサービス内容は後述しますが、医学的管理の下、看護や介護をはじめとした様々なサービスを提供しています。

自宅復帰を目標とするため、入居期間も原則3~6ヶ月ほどに限定されますが、状況により延長されることも。また、特別養護老人ホーム(特養)の入居待ちの間に利用する人もいます。

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老健について動画で知る

老人保健施設(老健)について、LIFULL 介護編集長・小菅が動画でご説明します。

介護老人保健施設の費用

初期費用 月額費用
必要なし 9~20万程度※

※ 弊社情報にて試算

介護老人保健施設(老健)は初期費用がかかりません。月額費用は施設や要介護度により異なりますが、9〜20万円ほどです。

内訳については下記にまとめた通りで、その他費用は洗濯代、娯楽費、理美容代などが該当します。費用面に関しての詳細な情報や相場については下記の記事で解説しているので、参考にしてください。

関連記事介護老人保健施設の費用

費用の内訳

  • 居住費
  • 食費
  • 介護サービス費
  • その他費用

介護老人保健施設の入居条件

介護老人保健施設(老健)の入居基準は65歳以上で要介護1以上の高齢者と定められています。40歳以上64歳以下の場合でも、特定疾病により要介護認定を受けている方は入居可能。逆に、基準を満たしていても入居できないケースもあります。

老健は、特養と比べると医師や看護師の配置基準が明確で充実していますが、医療機関ではないためどうしても対応に限界があります。具体的には、看護師が24時間常駐していない老健で夜間のたん吸引や点滴などに対応できない場合が挙げられます。

介護老人保健施設はずっと入所できる?

入居期間を原則3~6ヶ月ほどに限定された自宅復帰を目標とした施設のため、ずっと入所し続けることはできないとされています。一方で、厚生労働省の調査によると平均入所期間は「約10か月(299.9日)」。原則より長期間に入所しているケースもあるようですが、施設により大きな差があります。

入所期間については、以下で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

関連記事老健はずっと入所できる?平均入所期間や退所後の選択肢、代わりの施設まで

介護老人保健施設のメリット

在宅復帰を目指せる
機能訓練が充実している
手厚い医療体制
民間施設よりリーズナブル

介護老人保健施設のメリットについて解説します。メリットを把握することで、大切な人を安心して預けられます。

在宅復帰を目指せる

多職種が連携し、家庭環境や状況に合わせた個別プログラムで在宅復帰を目指せます。福祉用具や住宅改修などについても具体的にアドバイスがもらえ、在宅復帰後まで考えたサポートが受けられます。

在宅復帰が可能かどうかを検討する猶予期間として老健を利用するという方法もあります。

機能訓練が充実している

理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が常駐し、個別の計画書に基づいた機能訓練が受けられます。機能訓練のための器具や用具も充実しており、生活全体が機能訓練につながるような工夫もされています。

手厚い医療体制

医師が常勤、看護師が24時間常駐する施設も多く、医学的管理のもとに安心した生活を送ることができます。たんの吸引、経管栄養などの医療的ケアにも対応し、薬も施設から処方されます。

民間施設よりリーズナブル

公的な施設のため、初期費用は無料です。月額費用も15万円前後のところが多く、有料老人ホームなどの民間施設と比較するとリーズナブル。所得の少ない方には、住居費や食費が減免されるなどの費用軽減措置が適用されます。

介護老人保健施設のデメリット

入居期間が限定される
多床室が多い(特養と比べて)
生活支援サービスが充実していない
レクリエーションやイベントが充実していない

介護保険施設のデメリットについて解説します。デメリットを把握することで、併用するサービスなども固まってくるでしょう。

入居期間が限定される

前述の通り、在宅復帰を目的としている施設のため、入居は原則3〜6ヶ月の期間限定です。一部では看取りまで対応した老健もありますが、基本的には終身利用は望めません。

多床室が多い

居室は多床室(4人部屋)が多く、個室や2人部屋は特別室料が加算されます。

生活支援サービスは充実していない

入浴介助や排せつ介助などの身体介護サービスは受けられますが、洗濯や買い物代行などの生活支援サービスはあまり充実していません。洗濯物は家族が持ち帰るか、実費で外部業者に依頼します。

レクリエーションやイベントは充実していない

レクリエーションはあくまでも機能訓練につながるもので、楽しさを追求したものやイベントはあまり充実していません。レクリエーションの充実を軸に施設への入居を考えている場合は有料老人ホームも検討するとよいでしょう。

有料老人ホームの種類とサービス

関連記事有料老人ホームとは?介護付・住宅型・健康型の違いや定義、料金、人員基準など

介護老人保健施設のサービス

リハビリ 在宅生活へ戻るためのリハビリを行います。
日常生活の基本的な動作が行えるように個別にメニューが組まれます。
看護・医療的ケア 常勤医師や看護師による医療的ケアを受けられます。
インシュリン注射や経管栄養、たんの吸引などに対応しているところも多いです。
身体介護 食事・入浴・排せつを基本とした三大介助を中心に、
移乗介助や身だしなみを整える整容介助など生活全般を支援します。
生活援助 定期的な居室の清掃やシーツ交換などが行われます。
着替えの洗濯については、家族が持ち帰るか、別途費用で外部業者に委託するケースが一般的です。
食事の提供

栄養やカロリーについて栄養士によって管理された食事を提供。
塩分制限の治療食や嚥下能力に対応した介護食など、個別に対応しています。

介護老人保健施設(老健)ではリハビリや看護・医療的ケアに加えて、身体介護や生活援助、食事の提供など、生活を支えるためのあらゆるサービスが提供されます。

医師の指示のもと、利用者の状態や目標に寄り添った個別の機能訓練プログラムを組みます。看護師だけでなく、理学療法士や作業療法士など、各所に専門スタッフを配置している点も老健の特徴といえます。

介護老人保健施設の人員配置

職種 人員配置の基準 役割
医師 常勤で入所者100人に対して1人以上 入所者の医学的管理を行う施設の管理者を兼ねていることもある
看護師(准看護師)、
介護職員
看護・介護職員合わせて「入所者3人に対して1人以上」。看護職員人数は、看護・介護職員総数の7分の2程度を、介護職員人数は7分の5程度を標準とする 看護職員は医療行為などを担当。身体介護、生活援助などは状況に応じて看護・介護職員が担当
理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士 入所者100人に対して1人以上 入所者の状況に合わせたリハビリテーション計画を作成、実行
介護支援専門員 1人以上 入所者の介護、看護、機能訓練、栄養管理、投薬管理など総合的な施設サービス計画を作成
栄養士 入所者100人以上の場合は1人以上 献立の作成、入所者の栄養管理、食事量のチェックなどを行なう
支援相談員 1人以上 入退所における相談、日頃の入所生活における相談援助
薬剤師 施設の実情に応じた適当数 入所者の投薬管理

介護老人保健施設(老健)では自宅復帰を目指して様々なスタッフが連携し、入居者の生活支援や健康管理、機能訓練に取り組んでいます。

常勤の医師や看護師の配置など医療体制も充実。理学療法士や作業療法士など、リハビリ専門職の配置も義務付けられています。医療従事者の多さも介護老人保健施設(老健)の特徴です。

介護老人保健施設の設備

居室
共有スペース

入居者は基本的に居室か共有スペースで過ごします。家族としては、本人が快適に過ごせるのか気になるかと思います。設備についてスペースごとに解説していきます。

居室

居室の広さは、定員4人以下の多床室では1人当たり8㎡以上、ユニット型個室など個室の場合は10.65㎡以上と決められています。

加えてベッド、タンスなど入居者の身の回り品を保管できるものとナースコールの設置が義務付けられています。

個室化については長期入居が前提の特養では推進される一方、入居期間が限定される介護老人保健施設(老健)では2~4人の多床室が主流。個室化への動きはあまり活発ではないのが現状です。

居室面積 居室設備
  • 個室:10.65㎡以上
  • 多床室(定員2~4人):8㎡以上

ベッド、タンス
ナースコール、エアコン

共有スペース

老健は居室の他に下記施設の設置が義務付けられています。

機能訓練室は入居定員数によって最低面積が決定。マッサージのためのベッド、歩行訓練のための平行棒や階段、筋力強化や関節可動域改善を目的とした運動療法機器などが設置されています。

居室以外に設置が義務付けられているもの

診察室、機能訓練室、リビング、食堂、浴室、レクリエーションルーム、洗面所、トイレ、サービス・ステーション、調理室、洗濯室又は洗濯場、汚物処理室

介護老人保健施設と特別養護老人ホームとの違い

介護老人保健施設 特別養護老人ホーム
目的 自宅復帰 居住・生活
利用可能期間 原則3~6ヵ月 終身
提供サービス 医療的ケアやリハビリ 自立支援
対象 要介護1~5 要介護3~5

介護老人保健施設と特別養護老人ホームの大きな違いに目的が挙げられます。

先述の通り、介護老人保健施設では自宅復帰を目的として医療的ケアやリハビリを行います。一方、特別養護老人ホームの目的は居住や生活で、そのために必要な介護や支援を受けることに。

他にもさまざまな違いがあり、詳細は下記の記事で解説中なので参考にしてください。

関連記事【表で比較】特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)の違い

介護老人保健施設の入居までの流れ

1.介護認定を受ける
2.入居申し込み
3.面談
4.書類提出
5.入居判定
6.契約入居

介護老人保健施設(老健)への入居手続きは、上記の流れで進めます。入居までは一定以上の時間を要しますので、早めの準備を心がけましょう。

1.介護認定を受ける

老健に入居するには要介護1以上の介護認定が必要です。認定がまだの場合は、市区町村にある地域包括支援センター、または役所の高齢者福祉窓口に必要書類を提出します。

次の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

関連記事要介護認定とは?認定基準や区分、申請~通知の流れ、有効期限まで

関連記事地域包括支援センターとは

2.入居申し込み

要介護認定を受けたら、希望する施設に直接入居の申し込みをします。

その後の手続きをスムーズに進めるためにも、病院に入院中の場合は医療ソーシャルワーカーに、在宅介護の場合はケアマネジャーに相談して進めるのがよいでしょう。

JCHO東京山手メディカルセンター

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「LIFULL介護」がお届けするウェブメディア | tayorini

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3.面談

入居者本人や家族が施設担当者との面談を行います。要介護度や本人の身体状況、生活の様子、医療的ケアの有無などを確認します。入居前と後のギャップを埋める意味でも大切な面談です。

4.書類提出

面談後に必要書類を提出します。具体的には、施設利用申込書、診療情報提供書または健康診断書、看護サマリー(病院や他の施設から転院などの場合)などです。

施設側が本人の健康状態や介護状況を正確に確認し、入居判定をするために必要となります。

5.入居判定

施設側が面談内容や書類をもとに入居判定を行います。細かい判定基準などは施設によってさまざまですが、本人の健康状態や介護状態なども踏まえて判断されます。

6.契約・入居

判定の結果、入居可能であれば入居契約を行い、具体的な入居日を決定します。契約書の内容は何度も目を通し、不明点があれば適宜施設に確認することが大切です。

関連記事【老健の退所時の流れ】いつまでいられる?行先は?などの疑問にも回答

介護老人保険施設(老健)を適切に利用して在宅復帰を目指そう

医療的ケアやリハビリを行いながら自宅復帰を目指す介護老人保健施設(老健)。

各部門に介護・医療プロフェッショナルが配置されており、自宅復帰という目標に向かって機能改善できるようにサポートしてくれます。施設の特性を理解し、適切に利用することで、本人や家族の心強い味方になってくれる施設です。

「LIFULL 介護」では全国の介護老人保健施設(老健)の情報を掲載中。ひとりひとりの状況に合わせた様々な条件から最適な施設を検索できます。介護老人保健施設(老健)をお探しの方は、ぜひチェックしてください。

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

山本 武尊

監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)

地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。

公式おかげさま社労士事務所

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