【相場がわかる】介護老人保健施設(老健)の費用と内訳

短期間の入所施設である介護老人保健施設(以下、老健)では、在宅復帰に向けてさまざまなサービスが提供されます。

そのサービス内容や施設の種類、居室のタイプなどによって料金が異なり、サービス内容が手厚いほど高額になるケースもあります。

ここでは、老健の入居にかかる費用の考え方、料金表、内訳、自己負担額の目安、介護サービス加算の種類・内容、費用減免制度などを解説します。

介護老人保健施設の費用の考え方

公的な介護保険施設の1つである老健では、入居一時金などの初期費用は不要です。

入所後に月額費用として「介護サービス費」と「生活費(居住費・食費・その他日常生活費)」を負担することになります。

介護サービス費

食事介助や入浴介助などの介護サービス費は、要介護度が高くなるほど負担額が増加します。

また、職員の配置や体制、対応する処置やサービスなどに応じて、「サービス提供体制強化加算」「経口維持加算」などの加算料金が発生します。

自己負担額は、収入に応じて加算を含む介護サービス費の1割・2割・3割のいずれかになります。

生活費

生活費のうちの居住費は、施設や居室のタイプによって異なり、多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に料金が高くなります。

さらに、ご夫婦で入居できる2人部屋や個室の場合は特別室料が加算される場合があります。

また、食費は3食で日額1,445円(月額43,350円)という基準額がありますが、その金額を上回る施設もあります。

その他日常生活費は施設ごとに電話代(通信費)や理美容代、新聞・雑誌など日用品の項目・料金が設定されており、入所者は利用した分だけ実費を負担します。

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※2021年4月時点の情報です

老健・料金表の内訳

老健に入居したらどれくらいの費用がかかるのでしょうか。下記はある老健の料金例です。

従来型個室 要介護度3 自己負担1割 30日入居した場合
介護保健施設
サービス費
24,630円
(821円×30日)
総額
268,020円
居住費 50,040円
(1,668円×30日)
食費 43,350円
(1,445円×30日)
特別室料(個室) 150,000円
(5,000円×30日)
  • 特別室料(差額ベッド代)は施設により変動します
多床室 要介護度3 自己負担1割 30日入居した場合
介護保健施設
サービス費
26,940円
(898円×30日)
総額
81,600円
居住費 11,310円
(377円×30日)
食費 43,350円
(1,445円×30日)

※2021年4月時点の情報です

<介護保険施設サービス費>

老健で提供される介護サービス費のこと。一人ひとりの状態に合わせて立案した介護・リハビリテーション計画に基づき、日常生活の自立・機能回復・維持支援のために提供するサービスにかかる費用です。

<居住費(家賃)>

居室の利用料金。多床室・従来型個室・ユニット型個室など居室のタイプによって料金が変わります。居住費については介護保険給付の対象外となり、原則として利用者が支払います。

※所得に応じて住民税非課税世帯の場合は減免措置が受けられます。

<食費>

施設で提供される食事の料金。食材費、調理費などが含まれます。食費についても居住費同様、介護保険給付の対象外となり、原則として利用者が支払います。

※所得に応じて住民税非課税世帯の場合は減免措置が受けられます。

<特別室料>

病院における差額ベッド代に該当する、2人部屋・個室などの特別室に対して加算される居室の利用料金です。料金は設備の充実度などに応じて施設ごとに異なります。

タイプ別|介護老人保健施設の費用

老健にも複数のタイプがあり、それぞれ費用が異なります。

下記はそのタイプによる料金表の例(減免措置無し、30日間入居、自己負担1割の場合)です。

※施設がある地域によって「施設介護サービス費」が上乗せされる場合があります。

従来型個室【基本型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 21,420円 50,040円 43,350円 114,810円
要介護2 22,770円 116,160円
要介護3 24,630円 118,020円
要介護4 26,220円 119,610円
要介護5 27,750円 121,140円
従来型個室【在宅強化型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 22,680円 50,040円 43,350円 116,070円
要介護2 24,840円 118,230円
要介護3 26,700円 120,090円
要介護4 28,380円 121,770円
要介護5 30,090円 123,480円
多床室【基本型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 23,640円 11,310円 43,350円 78,300円
要介護2 25,080円 79,740円
要介護3 26,940円 81,600円
要介護4 28,470円 83,130円
要介護5 30,090円 84,750円
多床室【在宅強化型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 25,080円 11,310円 43,350円 79,740円
要介護2 27,300円 81,960円
要介護3 29,220円 83,880円
要介護4 30,900円 85,560円
要介護5 32,550円 87,210円
ユニット型個室【基本型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 23,880円 60,180円 43,350円 127,410円
要介護2 25,230円 128,760円
要介護3 27,090円 130,620円
要介護4 28,680円 132,210円
要介護5 30,270円 133,800円
ユニット型個室【在宅強化型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 25,230円 60,180円 43,350円 128,760円
要介護2 27,450円 130,980円
要介護3 29,340円 132,870円
要介護4 31,050円 134,580円
要介護5 32,700円 136,230円
ユニット型個室的多床室【基本型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 23,880円 50,040円 43,350円 117,270円
要介護2 25,230円 118,620円
要介護3 27,090円 120,480円
要介護4 28,680円 122,070円
要介護5 30,270円 123,660円
ユニット型個室的多床室【在宅強化型】
介護度 施設介護
サービス費
居住費 食費 合計
要介護1 25,230円 50,040円 43,350円 118,620円
要介護2 27,450円 120,840円
要介護3 29,340円 122,730円
要介護4 31,050円 124,440円
要介護5 32,700円 126,090円

※2021年4月時点の情報です

老健の介護サービス加算

介護サービス加算とは、サービス内容によってかかる追加料金のことです。同じ老健でも、より手厚いサービス体制を提供していると入居者の負担も上がります。

自己負担額は、収入に応じて1割・2割・3割のいずれかになります。

主な介護サービス加算一覧表
名称 単位 算定要件
初期加算 30単位/日 入所日から起算して30日以内に限る
夜勤職員配置加算 24単位/日 夜勤職員が20対1以上で2人以上の場合
短期集中リハビリ
テーション実施加算
240単位/日 医師又は医師の指示を受けた理学療法士、
作業療法士、言語聴覚士が、20分以上の個別リハを
1週間に3日以上行った場合(入所日から3ヶ月以内)
認知症短期集中
リハビリテーション
実施加算
240単位/日 認知症入所者に対して、医師又は医師の指示を受けた
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が3日/週を標準として
20分以上 の個別リハを行った場合(入所日から3ヶ月以内)
認知症ケア加算 76単位/日 認知症専門棟において認知症に対応した
介護保険施設サービスを行った場合
在宅復帰・
在宅療養支援機能加算
34単位/日 ・在宅復帰率が30%超であること
・退所後30日以内(要介護4・5の場合は14日以内)に居宅を訪問、
又は指定居宅介護支援事業者から情報提供を受け、退所者の
居宅における生活が1ヶ月以上継続する見込みであることを確認、記録していること
・ベッド回転率が5%以上であること
ターミナルケア加算 死亡日以前31日以上45日以下
80単位/日
一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと
診断された入所者について、本人又はその家族等の同意を得て、
入所者のターミナルケア に係る計画を作成し、医師、看護師、
介護職員等が共同して、随時、本人又はその家族への説明を行い、
同意を得てターミナルケアを行っていること
死亡日以前4日以上30日以下
160単位/日
死亡日前日及び前々日
820単位/日
死亡日
1650単位/日
試行的退所時指導加算 400単位

・入所期間1ヶ月以上の入所者が退所し、居宅で療養を継続する場合に、
入所者及び家族等に対して退所後の療養上の指導を行った場合(1回を限度)
・又は、退所が見込まれる入所期間1ヶ月以上の入所者を試行的に退所させる場合に、
入所者及びその家族等に対して療養上の指導を行った場合
(最初の試行的な退所を行った月から3ヶ月間に限り、1ヶ月に1回を限度)

退所前連携加算 400単位 入所期間1ヶ月以上の入所者が退所し、居宅サービス又は地域密着型サービスを
利用する場合、退所に先立って入所者が利用を希望する居宅介護支援事業者に対して、
入所者の 診療状況など必要な情報を提供し、かつ、居宅介護支援事業者と連携して
サービス利用に関する調整を行った場合(1回を限度)
栄養マネジメント強化加算 11単位/日 ・常勤の管理栄養士を1名以上配置
・入所時に栄養状態を把握し、医師、管理栄養士その他の職種が共同して栄養ケア計画を作成
・個別の栄養ケア計画に従い栄養管理を行い、入所者の栄養状態を定期的に記録
・個別の栄養ケア計画の進捗の定期的な評価、必要に応じて見直しを実施
経口移行加算    28単位/日 医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士、その他の職種が共同して、
食事を経管摂取している入所者の、経口摂取を進める経口移行計画を作成し、
医師の指示を受けた管理栄養士又は栄養士が栄養管理を、言語聴覚士又は看護職員が
支援を行った場合(計画作成日から180日以内)
経口維持加算 (Ⅰ)
400単位/月
医師又は歯科医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士その他の職種が共同し、
摂食機能障害・誤嚥がある入所者の経口維持計画を作成し、
医師又は歯科医師の指示を受けた管理栄養士又は栄養士が、
特別な管理を行った場合(計画作成日から180日以内、1ヶ月につき)
(Ⅱ)
100単位/月
(Ⅰ)を算定し、入所者の経口による継続的な食事の摂取を支援するための
食事の観察及び会議等に、医師、歯科医師、歯科衛生士又は
言語聴覚士が加わった場合 (計画作成日から180日以内、1ヶ月につき)
口腔衛生管理加算 90単位/月 ・歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、
介護職員に対し口腔ケアの技術的助言及び指導を月1回以上実施
・入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画を作成
療養食加算 18単位/日 ・疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づき療養食を提供した場合
・管理栄養士又は栄養士によって管理
・年齢・心身状況等によって適切な栄養量・内容の食事を提供
在宅復帰支援機能加算 10単位/日 ・在宅復帰率が30%超であること
・退所後30日以内に居宅を訪問、又は指定居宅介護支援事業者から情報提供を受け、
退所者の居宅での生活が1ヶ月以上継続する見込みであることを確認、記録している
・入所者の家族との連絡調整を実施
・入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に、
必要な情報提供、退所後の居宅サービス利用に関する調整を実施
認知症情報提供加算 350単位 認知症のおそれがあり施設内での診断が困難である入所者について、
診療状況等の情報を添えて、認知症疾患医療センター等に
紹介を行った場合 (入所中1回を限度)
地域連携診療
計画情報提供加算
300単位 大腿骨頸部骨折又は脳卒中で退院した入所者に対し、
地域連携診療計画に基づいた治療等を行い、
病院に診療情報を提供した場合(1回を限度)
褥瘡マネジメント加算 10単位 継続的に入所者ごとの褥瘡管理をした場合(3ヶ月に1回を限度)
排せつ支援加算 100単位/月 排せつに介護を要し、適切な対応を行うことで要介護状態の軽減が
見込まれる入所者に対し、医師、看護師、介護支援専門員その他の
職種が共同して支援計画を作成、継続実施した場合(支援開始月より6ヶ月以内)
サービス提供
体制強化加算
(Ⅰ) 
22単位/日
介護職員の総数のうち、介護福祉士の占める割合が80%以上
かつ質の向上のための取り組みを実施している
(Ⅱ)
18単位/日
介護職員の総数のうち、介護福祉士の占める割合が60%以上
(Ⅲ)
6単位/日
短期入所療養介護又は老健の利用者等を直接処遇する職員の総数のうち、
勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上

老健の費用軽減制度

特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)

特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)とは、世帯全員が住民税非課税で預貯金等が1,000万円以下(夫婦であれば2,000万円以下)の方を対象に、居住費と食費の負担額が減免される制度です。

負担限度額は所得段階、施設の種類、部屋のタイプによって異なります。第4段階(住民税課税世帯)の方に負担限度額はありません。

なお、特定入所者介護サービス費の利用には、市区町村にて手続きを行い、負担限度額認定を受ける必要があります。

<第1段階>

生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で本人及び世帯全体が市民税非課税
居住費(滞在費)の負担限度額 多床室 0円
従来型個室 14,700円
ユニット型個室的多床室 14,700円
ユニット型個室 24,600円
食費の負担限度額 9,000円

<第2段階>

本人及び世帯全体が市民税非課税で合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の方
居住費(滞在費)の負担限度額 多床室 11,100円
従来型個室 14,700円
ユニット型個室的多床室 14,700円
ユニット型個室 24,600円
食費の負担限度額 11,700円

<第3段階>

本人及び世帯全体が市民税非課税で第2段階に該当しない方、市民税課税層における特例減額措置の適用を受けた方
居住費(滞在費)の負担限度額 多床室 11,100円
従来型個室 39,300円
ユニット型個室的多床室 39,300円
ユニット型個室 39,300円
食費の負担限度額 19,500円

高額介護サービス費

月々の介護サービス費の自己負担額(1割・2割・3割)の合計が、世帯又は個人の所得によって設定された上限額を超えた場合に、その超えた分が介護保険から支給される制度です。

高額介護サービス費の支給を受けるためには、市区町村に申請が必要です。

設定区分 対象者 負担の上限額(月額)
第1段階 生活保護を受給している方等 15,000円(個人)
第2段階 前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
第3段階 世帯全員が市区町村民税を課税されていない方 24,600円(世帯)
第4段階 市区町村民税課税世帯 44,400円(世帯)

まとめ

老健では、リハビリをはじめ在宅復帰に向けたさまざまな介護サービスが提供されています。

現在の介護保険制度は高齢者の自立支援を重視する方向性となっており、老健の役割がますます重要視されています。

そのため、自立支援に向けたサービスを提供した際の「加算」の種類も増えており、利用者の負担も増加傾向にあるといえるでしょう。

費用の面で注意したい点はいくつかありますが、二人部屋や個室などに加算される特別室料は、収入に関係なく追加されます。

多床室が空くまでの期間限定で個室を利用する場合でも、かなりの負担増になることを想定しておきましょう。

老健の費用減免制度については、手続きをしない限り支給や減免はされません。

担当のケアマネジャーや役所の介護保険担当などに内容をきちんと確認し、対象となる場合は速やかに手続きを行いましょう。

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

森 裕司

監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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