質問

高齢の父が脳梗塞で倒れ、病院でリハビリを受けています。退院後は介護が必要になると思います。主に介護をするのは私になりますが、初めてで不安がいっぱいです。自宅介護が難しかったら施設も考えなければなりません。
在宅介護と施設介護の違いや注意すべき点について教えてください。

回答
髙杉 雅紀子

家族が介護するか、プロのスタッフに任せるかが大きな違いです。
在宅介護では、要介護者と最も接する時間の長い主介護者が一人で抱え込んでしまうことが多く、その状態が長引くと心身が疲弊してしまいます。注意点としては、介護を完璧にこなそうと思う必要はありませんし、ケアマネジャーに相談し、公的な介護保険サービスを利用して、主介護者もしっかり休息することが大切です。

また、介護される側・介護する側双方の理由で、在宅介護を継続することが難しい場合もあります。そうすると、どこかのタイミングで、施設介護に移ることを検討する必要があります。

ここでは、自宅での介護を考え、将来的に施設で介護することも見越して、準備や注意すべきポイントを解説していきます。介護の不安を軽減するためにお役立てください。 髙杉 雅紀子(AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士)

【目次】
  1. 1.在宅介護、施設介護それぞれのメリット
  2. 2.在宅介護をするうえでの心構え
  3. 3.仕事と介護の両立したい!最適な介護サービスを利用する
  4. 4.介護施設を検討する際の心構え
  5. まとめ

1.在宅介護、施設介護それぞれのメリット


在宅介護と施設介護にはそれぞれ異なるメリットがあります。まずはその違いから見ていきましょう。

<在宅介護>

・住み慣れた家や環境で生活できる
・自分のペースで生活できる
・施設に入居するより、経済的な負担は少ない
・家族と一緒にいられるので精神的に安心する

<施設介護>

・介護のプロに任せることができる
・スタッフや入居者など家族以外の人と交流があるため、社会性を保つことができる
・介護をする家族の時間的・精神的・肉体的負担が軽減できる


2.在宅介護をするうえでの心構え


介護者は一人で抱え込まないこと

在宅介護では、介護に費やす時間が増えるにつれ、周囲や社会と接する時間が減少し孤独になりがちです。そして、介護が長期化すると、肉体的な負担だけでなく精神的な負担も増えていきます。

介護者は、介護を自分一人の問題として抱え込まないようにし、相談できる相手(兄弟、親戚、友人、ケアマネジャー、等)を作っておくことが大切です。なかでも、地域包括支援センターでは介護者の悩みや負担軽減のための相談も随時受け付けています。相談や意見交換などを行いリフレッシュする場としても利用してみましょう。

また、他のリフレッシュ方法として「介護者家族の会」や「認知症の人の家族の会」などに参加することがあります。同じ悩みを抱えている仲間が見つかるかもしれません。介護の辛さや悩みを分かち合うことができれば、精神的な負担が軽減するでしょう。

>地域包括支援センターとは?その役割と賢い活用法


老人ホームは家族にとっても強い味方

また、施設介護に対しては否定的なイメージを持っていて、入居させることに対して罪悪感を抱かれる方もいらっしゃいます。

もちろん、自分の手の届く範囲から外して敢えて施設での介護に任せるという選択ですから、心苦しい気持ちになることは十分理解できます。

しかし、ご本人と介護者の双方が少しでも快適な生活を送るために施設を選択することは、決して後ろめたい事ではなく、マイナスにとらえる必要はありません。


介護の負担は共倒れを招くことも

在宅介護において介護する人と介護される人の双方の距離が近くなればなるほど、精神的な負担を感じ関係性が崩れる可能性があります。

在宅介護の介護者が疲弊し、共倒れするという話も珍しくありません。共倒れは極端な事例かもしれませんが、在宅介護によって介護者が精神的・肉体的・時間的負担を負うことは必然といえるでしょう。この負担をどう軽減するかが課題になります。

施設介護を利用することで、介護する側もされる側も精神的負担が軽減できます。それにより双方がほどよい距離感で接することができるでしょう。

>在宅介護の限界はどこ?専門家が判断する「老人ホームの入居どき」


3.仕事と介護の両立したい!最適な介護サービスを利用する


介護離職を避けるために

近年、家族の介護を理由に仕事を辞める介護離職が増えています。介護離職をすることで、「介護と仕事の両立」という精神的な負担からは解放されるでしょう。また、子供が介護することで介護費用を抑えられることもメリットといえます。

一方で、収入の減少や介護離職後の再就職の難しさや、介護する側と介護される側の距離が近くなってお互い精神的負担が大きくなるなどのデメリットがあります。したがって、介護離職は慎重に検討することをおすすめします。

介護者が仕事の時間を調整できるのであれば、時短勤務に変更し早く帰宅できるよう勤務先に相談してみるとよいでしょう。可能であればテレワークに変更し、自宅にいる時間を増やすといった対応も検討してみましょう。

近年、この介護離職を防ぎ仕事と介護の両立ができるよう介護休暇など支援制度を設ける企業も増えています。また、厚生労働省では介護休業給付などの制度をつくりこれを後押ししています。まずは勤務先の総務・人事に相談してみましょう。

>介護離職を回避するために活用したい制度とサービス


介護のプロに任せ家族の負担を減らす

在宅で介護する場合は介護者だけで無理をせず、在宅で受けることができる介護サービス(訪問介護・看護、デイサービス、ショートステイなど)を組み合わせて利用することで、「24時間ずっとそばにいなければならない」という精神的なプレッシャーから解放される時間を作ることが出来ます。

>介護保険サービスの種類と内容


4.介護施設を検討する際の心構え


施設入居を検討してみる

上記に記載したように、介護のために自分の仕事を辞めなければならない状態や、認知症による歩き回り(徘徊)などにより、近所に迷惑をかけてしまうかもしれません。その場合、自宅で介護をすることを諦め、老人ホーム等の施設でみてもらう決断も必要です

施設介護に移行する際、まずは、どういった種類の施設を選択するか検討します。

>老人ホーム・介護施設の種類と特徴


誰しも罪悪感はあるもの

施設入居は、ご本人にとって住み慣れた自宅を離れることの不安を解消できるかどうかがポイントと言えます。ご本人は「面倒を見てもらえなかった」「家族に捨てられた」というネガティブな気持ちを持ってしまいがちです。

また、施設へ入居させることに後ろめたい気持ちもあるかと思います。介護施設への入居が、ご本人とご家族の双方が自分らしく生活出来るための最善策となるためにも、しっかり選ぶ必要があります。

施設へ入居することで、家族にとっては一旦日々の介護から手は離れますが、無理のない範囲で老人ホームを訪問し顔を見せてあげることが、ご本人の安心にも繋がります。

>親の施設入居に罪悪感。どうすれば解消できる?


入居した後の家族の役割

施設に入居したらそれっきりではありません。身体介護や生活に必要な支援は施設にお任せできますが、精神的な支えなど家族にしかできない役割もあります。また、次のようなことも家族の役割です。

・面会による精神的な支え
・嗜好品の差し入れ
・季節の衣替えや消耗品の補充
・サービス担当者会議、イベントへの参加
・施設への不安や不満があったときの対応

まとめ

在宅介護と施設介護のメリットをみてきましたが、それぞれ異なるメリットがあります。

介護される本人の要介護度や性格そして介護についての希望、介護する家族がどのくらい介護にかかわれるのかなどよく話し合ってみましょう。そして、在宅介護と施設介護を併用していくこと、また介護度によっては施設介護に頼ることも介護方法の候補にいれておきましょう。

施設に入居した場合は、家族は定期的に面会に行き、本人や施設介護のスタッフやケアマネジャーと良好な関係を築きながら介護生活を進めることが大切です。

介護がいつまで続くのか、その期間は誰にも分かりません。そのため、在宅・施設問わずにプロに頼りましょう。一人で抱えこまず、地域包括支援センターなど頼れるところには協力してもらい、利用できる介護施設を活用しながら負担軽減を図りましょう。

>介護で疲れる前に知っておきたい負担軽減法


このQ&Aに回答した人

髙杉 雅紀子
髙杉 雅紀子(AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士)

生命保険会社を約8年勤務後、住宅建築の建設会社に16年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを実施。さらに、ファイナンシャルプランナーとしてライフプランをもとに教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなどのアドバイスを行う。親の介護、義父母との同居の経験を活かし、相談業務や執筆活動をしています。また、子育て支援団体やひとり親支援など地域活動にも積極的に参加しています。