質問

母が転倒し足を骨折して入院しました。リハビリで1カ月以上も入院をするらしく、治療費を母の口座から引き出したいです。
私が銀行で預金を引き出すことはできますか?

回答
桑野 恵子

以前は通帳と印鑑があれば誰でも窓口で預金を引き出せましたが、現在は本人確認がとても厳格になっているので、家族であっても引き出せません。本人以外が引き出すには、委任状などの本人の意思確認が必要となります。

このページでは、親の口座から預金を引き出すときに必要となる、意思確認をする委任状の書き方や、ご本人が意思表示できないときの方法ついて解説します。急に親の代わりにお金を引き出すことになった場合にお役立てください。 桑野 恵子(1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®)

【目次】
  1. 本人の意思であれば預金は引き出せる
  2. 窓口で引き出す際に持参するもの
  3. 委任状が書けない場合は「後見人」という選択肢も
  4. 注意したい 預金引き出しの親族トラブル
  5. まとめ



本人の意思であれば預金は引き出せる

入院している本人の意思が確認できれば、家族が親の預金を引き出すことができます。ただし、窓口とATMでは対応が異なるので解説します。

窓口では委任状が必要

本来、通帳と印鑑があれば預金は引き出せますが、一定の金額(200万円)を超える場合は本人確認が必要です。しかし、銀行が限度額以下の金額でも本人確認を求めて来る場合もあり実際には引き出すことができません。

本人以外の人が窓口に来ていて、本人の同意がある場合でも、それを証明する委任状を求められます。つまり、本人の同意があれば本人以外が預金を引き出すことについて、法律上問題はないのですが、実際には口頭での申告では窓口では引き出せないことになります。


ATMではカードと暗証番号があれば引き出せる

キャッシュカードを使ってATMから引き出す場合はどうでしょう。これも本人の同意があれば問題ありません。お母様がキャッシュカードを作っていらっしゃれば、家族がお金を引き出すのが楽になります。

お元気なうちにキャッシュカードを作っておく事で、以降の無用なトラブルが防げます。ただしATMの場合は、一度に引き出せる金額に上限がありますので、まとまったお金の引き出しには向きません。

ただし、本人が意識不明などで同意を確認できない場合は家族であっても違法(窃盗罪)となりますのでご注意ください。この場合窃盗の被害者は銀行になります。

この点の詳しい説明はこの質問の内容から外れますので割愛いたします。



窓口で引き出す際に持参するもの

では、親の入院費などまとまったお金を親の口座から子供が引き出す時に何をもって銀行に行けばいいでしょうか。これは銀行によって必要書類が異なりますので、事前に確認し必要書類を準備してから銀行へ出向くようにしましょう。

一般的に、「通帳」「印鑑」「委任状」「窓口に行くあなたの写真付き身分証明書」の四点は最低限必要となる場合が多いようです。


また、事前に準備する手順は以下の通りです。


①委任状書式を入手する

銀行指定の委任状用紙がある場合はそれをもらいましょう。ホームページから書式をダウンロードできる銀行もあります。

②委任状を本人に書いてもらう

本人自署・押印のうえ、引き出す金額を書いておけば、病院に払うお金のほかにも生活費として、こまごまかかるお金の引き出しも問題なくできます。また、印鑑は口座の印鑑と同じものか確認しておきましょう。

③払戻請求書の記入

窓口での預金引き出しに必要な「払い戻し用紙(払戻請求書)」も事前に銀行で入手し記入しておきましょう。字が書ける場合は本人が書くことがベストです。

※金融機関によっては、本人が書いた委任状を持参しても、場合によってはその場で本人に電話をして確認することもあります。



委任状が書けない場合は「後見人」という選択肢も


もしも、委任状が書けない病状だった場合はどうしたらいいでしょう。

一般的には自分の意思を表明できない場合は、代わりに事務作業や法律手続きをしてくれる人をお願いします。これは認知症などの場合も同じです。

全く意思表示が出来ない場合、成年後見人をたてることになります。成年後見人は家族でもできますが、裁判所の選任が必要になります。

成年後見人が決まったら、成年後見人が入院費を口座から降ろして病院に支払いをします。本人の意識が回復して意思表示ができるようになれば、成年後見人は解任されます。また、意思表示ができるものの、身体的に文字を書くことができないときは、銀行に事前に相談して必要書類を準備しましょう。

>成年後見制度ってなに?




注意したい 預金引き出しの親族トラブル

親のお金を引き出すというと、他の兄弟や親族から「親のお金を勝手に使い込んでいる」などという思わぬトラブルになることが有ります。

例えば

「介護や医療にお金をかけすぎていないか」

「もっと自分で世話をすれば、ヘルパー代がかからないんじゃないか」

「介護のリフォームも、親ではなく自分たちのために余計なリフォームをしていないか」

といったものです。

こういう場合のために、事前に兄弟へ相談をして了解を得ておいたり、介護にかかった費用と領収書などはきちんとファイリングしたりとお金の動きを明確にし、関係者に共有しておきましょう。

どういうことに使ったか、どういう必要があったかなどを記録して、誰からも文句を言われないような体制を取っておくことが大切です。



まとめ

親の口座からお金を引き出すにも、手間と時間がかかるため、つい自分の家計費から出してしまうことがあります。

手間になりますが、負担軽減のためにも、親の介護や医療など明確な費用だけでもきっちり分けて、親のお金から支出しましょう。

その際に、領収書などの記録を残すことで、親族からの誤解や思わぬトラブルを防ぐことができます。そして、不足がある場合やまとまったお金が必要となるときは、兄弟や親族に必ず相談してください。
介護は一人で抱え込まず、みんなで分かちあうこと
で良い知恵が生まれ、費用を負担しあうことも出来ます。

>親の入院|知っておきたいお金の知識

>遠距離親のサポート方法・介護の前にできることは?


(監修:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士)

イラスト:安里 南美


このQ&Aに回答した人

桑野 恵子
桑野 恵子(1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®)

1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®
ファイナンシャルプランナーとして、1人暮らしの高齢者を定期訪問、見守りサービスをしています。また、任意後見と遺言、相続のお手伝いもしています。
母は92歳の今も元気で認知症グループホームで暮らしています。
毎月現場を見て、ヘルパーさんやケアマネさんとお話をさせて頂いています。
コーディネート (株)優益FPオフィス