- 質問
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私は仕事をしながら要介護2の母を介護しています。知人から「特養のショートステイ」を進められました。
ショートステイの利用方法と注意点。他の介護施設との違いも教えてください。
- 回答
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お一人で介護と仕事の両立はとても大変ですね。ショートステイとは、短期間、介護施設で泊まり介護を受ける介護保険サービスのことです。
介護者の仕事や、体調不良等の理由で在宅介護ができない状態になった場合はショートステイを検討しましょう。「介護疲れで休息がほしい」というときも、ショートステイを利用するのは有効です。
また、特養のショートステイの場合は、自宅での介護が難しい方で、特養の入居待機をしている方が連続でショートステイを利用することもあります。さらに一人暮らしの要介護者の場合、年末年始などに人員不足で訪問介護が手配できないためショートステイを利用する方も多いようです。
ここでは特養のショートステイについて解説していきます。ショートステイの利用を勧められたとき、介護疲れなどが出てきたときに参考にしてみてください。
1.特養のショートステイの特徴
介護保険対象で安価に利用できる
多くの特養でショートステイを実施していますが、最大の特徴は、介護保険を使って安価に利用できることです。
有料老人ホームでもショートステイを利用できますが、「介護保険外の利用」としているところが多く、料金も割高になります。
医療的な処置が必要な場合は、介護老人保健施設や介護医療院(介護療養型医療施設など)に併設されているショートステイを利用することになります。
利用対象者はどんな人?
65歳以上の場合
1.要支援1~2、要介護1~5の認定を受けている
2.在宅で介護をしている
40歳以上65歳未満で「特定疾病」により要介護認定を受けている場合
1.要支援1~2・要介護1~5の認定を受けている
2.在宅で介護をしている
上記の要素を満たす方が対象となります
特養の居室は4タイプ
①従来型個室
居室が一人個室になっているタイプです。
居室の設備としてはベッドのほかに洗面所やトイレが設置されています。共有スペースは食堂、浴室、機能訓練室などがあります。居室にトイレがない場合は共用のトイレを設けています。
②多床室
居室が相部屋となっているタイプです。
病院などでよく見られる、カーテンなどで仕切られた1部屋4床以下の相部屋です。共有スペースは食堂、浴室、機能訓練室などがあります。
③ユニット型個室
10人ほどのグループを1つのユニットとして介護を行ないます。
居室はすべて一人個室のタイプで、洗面所やトイレが設置されています。共通スペースは居室を取り囲むように配置されキッチン、食堂、浴室などがあります。
④ユニット型個室的多床室
一人個室のタイプで、設備は「ユニット型個室」と同様です。ただし、居室は天井と壁の間に隙間があるため完全な個室ではありません。以前は「ユニット型準個室」と呼ばれていましたが現在の「ユニット型個室的多床室」に変更されました。
また、ショートステイで利用できる居室は、ショートステイ専用居室が用意されている場合と、空いているベッドを使用する場合があります。
提供されるサービス内容は長期入居者とほとんど変わりません。老人ホームでの過ごし方、食事やお風呂のスケジュールはその施設のスケジュールに準じ、イベントにも参加することもできます。
ショートステイの利用手順
ショートステイを利用したいときは、まずケアマネジャーに相談しましょう。ケアプランに準じて本人の身体状態にあった老人ホームを探してくれます。大まかな利用の手順をお伝えします。
〈ショートステイ利用の流れ〉
①利用希望を伝える 担当のケアマネジャーに利用したい日付を伝え相談します。 ②申し込み ケアマネジャーが希望施設へ連絡をします。提供してもらえるサービスの内容と居室の空き状況を確認します。 ③面接 特養の担当者がご自宅に訪問し、利用者さまの様子・ご要望などをお伺いします。 ④契約 契約内容や重要事項説明書等を理解した上で契約をします。 ⑤利用 ご利用日に自宅まで送迎に来てもらえます。 |
初めてショートステイを利用する場合は、老人ホームの担当者と事前に面談を行います。
面談は必ずしも本人でなければということはなく、介護している家族だけでも可能です。面談では、家での様子や必要とする介護、投薬内容などを聞かれます。
ショートステイ期間中は、面談内容にもとづいて自宅にいると近い形で生活できるように配慮してくれます。また、2回目以降の利用であれば、同じ施設であれば面談が省略されることもあります。
>特別養護老人ホーム(特養)入居のメリット・デメリットをかんたん解説
2.ショートステイの利用料金
ショートステイにかかる費用は、特養などの介護保険施設の場合は、介護サービス費、食費、宿泊費、そのほか日用品代がかかります。また、居室の種類(※)によりかかる費用は変わります。
年金などの収入が少なく、保有している金融資産も少ない場合は、宿泊費と食費が軽減されます。
※共有スペースであるリビングのある個室(ユニット型個室)、大部屋(多床室)、リビングのない個室(従来型個室)などがあります。
以下は、要介護3の方がユニット型個室で1泊2日のショートステイを利用した場合の大まかな金額です。
ショートステイ利用料の目安(要介護3 ユニット型個室 1泊2日の場合)
費用の内訳 |
特別養護老人ホームなど (介護保険サービス利用) |
有料老人ホームなど (介護保険外サービス利用) |
---|---|---|
介護サービス費用 | 1,800円 |
1泊2日 8,000円~20,000円 |
宿泊費 | 1,970円 | |
食費 | 1,380円 | |
合計 | 5,150円 | 8,000円~20,000円 |
※市区町村や有料老人ホームによって実際の料金は異なります。
有料老人ホームなどが行っている、介護保険外のショートステイの場合は、全額自己負担となります。1泊2日など利用日数で料金設定がされていて、1泊あたり8,000円から20,000円程度となり、老人ホームにより金額は異なります。
この費用の中には、宿泊費、管理費、食費、介護サービス費が含まれています。利用できる日数の限度は老人ホームごとに設けています。
特養などの介護保険施設での利用は、費用が安いこともあり予約が取りづらいことが多いようです。支払えるお金や緊急度、本人の状態などで利用できる老人ホームが変わってきます。ケアマネジャーとよく相談するとよいでしょう。
>特養以外でも利用できる?ショートステイについてもっと詳しく!料金や活用法
3.ショートステイは事前予約が必要
特養に限らず、ショートステイは利用者が多く2~3か月先まで予約がなかなか取れない施設もあります。介護者の旅行、冠婚葬祭といった予定がわかっている場合は、早めにケアマネジャーに連絡をして予約を入れてもらいましょう。
ただし、介護者の急な出張や、病気やケガなどにより緊急にショートステイの利用が必要になることもあります。
その場合の受け入れベッドは、自治体ごとに確保しています。緊急ショートステイといい、利用の要件は自治体ごとに定められています。
例えば東京都杉並区の場合、以下の3つの要件すべてに当てはまる場合に利用できます。
1.介護する家族の病気やケガ、葬儀への参列などの休養により、介護が受けられない方 2.介護保険サービスのショートステイに空きがなく、他に介護する人がいない方 3.区内在住で、介護保険の要介護1以上に認定されている方 |
4.当日の持ち物
衣類
・下着(入浴回数分) ・靴下 ・普段着 ・パジャマ ・内履き(かかとのあるもの。転倒防止のためスリッパはNG) |
書類等
・介護保険証 ・介護保険負担割合証 ・負担限度額認定証 ・医療保険証 ・診察券(かかりつけ医のもの) ・処方箋(お薬手帳でもOK) |
内服薬・目薬・湿布など
・日数分を分包にて持参します。 透明の小分け袋に名前・日付・服用時間を記入しましょう。 |
その他日用品
・箱ティッシュ ・電動ひげそり ・歯磨きセット・コップ(うがい用)・入歯洗浄剤など ・くし(ヘアブラシ) |
5.利用時に注意したい4つのポイント
①予約しても体調次第では利用できない場合もある
利用予定日の数日前から当日まで風邪などの感染症にかかっていたり、特養で対応できない医療処置が必要になったりした場合は、利用できない場合があります。
また滞在中の体調の変化によっては、途中で迎えに行かなければならない事もあります。利用時に面談時より明らかに心身の状態が違う場合は、利用できないこともあります。
②ショートステイ用の持ち物に記名をしておく
ショートステイを利用するときは、本人の着替え等荷物が必要になります。持ち物にはすべて記名が必要です。緊急ショートステイを利用するケースもありますので、着替えは家族のだれもがわかるよう、記名済みのものをショートステイ用としてまとめておくとよいでしょう。
③お気に入りの施設を利用する
短期間でも宿泊して介護を受けるのですから、本人や介護者にあった施設を選ぶことが大切です。自宅から遠い施設であれば介護者の送り迎えや緊急呼び出しの対応が大変です。
本人と相性の良い介護職員がいたり、食事がおいしかったり本人が快適に過ごせることも重要です。また、サービス内容や料金など事前に説明が十分であるかも大切です。本人や介護者が気に入れば継続して利用できます。
1つの施設だけでなく予約が取れないこともありますので、複数のお気に入りの施設があるとよいでしょう。ただし、すべての特養などの老人ホームでショートステイが行われているとは限りません。余裕があれば見学をしてみるのもよいでしょう。
④利用日数には制限がある
特養に限らず、ショートステイは、利用日数が制限されています。介護認定期間(次の更新までの間)のおおむね半数は超えてはいけないことと、連続した利用は、30日までです。
引き続き利用したい場合は、31日目を、介護サービスを使わない全額自己負担とすることにより、翌日から30日間はまた1割負担(所得により2割~3割)で、連続で利用できることになります。
また、要介護度や利用している他の介護サービスによりショートステイを利用できる日数は限られます。
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質問者さまのように、働きながらの在宅介護は気の休まる時間がなく疲労がたまりやすいかと思います。ショートステイは、介護する方も介護される方にとっても有効に活用できる介護サービスです。
そうであるがゆえに、予約が取りづらいという問題もあります。上手に活用するには、ケアマネジャーと密にコミュニケーションを取り、お気に入りの施設をいくつか作っておくこと。介護者の先々のスケジュール管理も重要といえます。