質問

親が入居する老人ホームを探しているのですが、しばしば「ユニットケア」という言葉を目にします。ユニットケアとは何のことですか。特徴や、入居者にはどんなメリットがあるのか教えてください。

回答
武谷 美奈子

ユニットケアとは、入居者一人ひとりに「尊厳のある個別ケア」を目指した介護の手法のことです。具体的には10人程度の少人数のグループを1つのユニットとして、常に同じメンバーで生活をし、決まったスタッフがケアにあたるという形です。

共有スペースであるリビングを囲むように10室程度の居室が配置され、家庭的な雰囲気で生活を送ることができます。

このページでは、ユニットケアの目的や特徴、メリット・デメリットについて解説します。 武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

【目次】
  1. ユニットケアは入居者の個別ケアを実現すること
  2. ユニットケアのメリット・デメリット
  3. ユニットケアは様々な介護施設で提供されている
  4. 認知症の方や介護度の重い方ならばユニットケアがおすすめ
  5. まとめ

ユニットケアは入居者の個別ケアを実現すること


効率優先の「集団ケア」から尊厳を守る「個別ケア」へ

介護保険制度が制定された2000年頃までの特別養護老人ホーム等の介護施設では、多くの要介護高齢者を介護するために効率性が優先され、ともすると入居者の状況に合わせた「個別ケア」ではなくスタッフ側の事情に合わせた「集団ケア」が常態となる場面が多々ありました。

具体的には、個人のペース関係なく次から次へと食事が口に運ばれるベルトコンベアー式入居者が浴室に運ばれ身体を洗われるなどです。

居室も多人数部屋が主流で、プライバシー守られない尊厳が損なわれているなどが問題視されたことから、高齢者の尊厳を保てるサービスが提供されるべきだという考えが主流になっていきました。

その流れから、厚生労働省は入居者の尊厳を重視したケアの実現のために,2001年に特別養護老人ホームを「全室個室・ユニットケアへ整備をしていく」と発表し、現在もなお推奨しています。



個別ケアを実現する住環境

「ユニットケア」とは、できるだけ自宅に近い環境で、一人ひとりの状況に寄り添った個別ケアを行い、他の人との人間関係を築きながら日常生活を営めるようにサポートする介護手法のことを言います。

入居者の部屋は個室となっており、共有部分のリビングスペースを囲うように10室以下の居室が配置されています。それを1つのユニットとして、ユニットごと決まった介護スタッフがケアにあたります。

少人数
で常に同じ入居者が顔を合わせて生活をすることで交流が生まれ、同じスタッフが担当することでスタッフと入居者の相互理解が深まり、居者の個性や生活リズムを保つことができます。また、スタッフが介入することで入居者同士の良好な人間関係を築くことも可能になります。


ユニットケアのメリット・デメリット

「ユニットケア」に対して、ユニットを形成しない古い形を「従来型」と呼びます。
この従来型に比べて個別ケアを実現しやすいユニットケアですが、それぞれにメリット・デメリットが存在します。ユニットケアと従来型の違いをまとめてみました。

ユニット型 従来型
特徴 ・すべて個室である
・ユニットごとにキッチン・食堂・リビングなどの共有スペースがあり、居室と併設している
・介護スタッフはユニットごとの専任である
・ユニット単位(少人数)での共同生活になる
・個室と多床室(4人部屋)がある

・キッチン・食堂・リビングなどの共有スペースは独立している

・介護スタッフの担当は決まっていない

・施設全体(大人数)での集団生活になる
メリット ・一人ひとりの状況に合わせた個別ケアが実現できる
・少人数なので目の行き届いた介護ができる
・寄り添う介護ができるため、認知症の症状が軽減される場合もある
・少人数で毎日同じメンバーで過ごすため、家庭的な雰囲気の中で生活ができる
・リビングで他の入居者と交流が持て、良好な人間関係が築ける
・スタッフは専任なので、家族のような関係が築ける
・全室個室のため、1人の時間を持ちたいという希望も叶えられる
・個室のため、家族が遠慮することなく面会できる
・感染症やインフルエンザなどの施設内感染のリスクが軽減される
・多床室の場合、1人でいることが少ないので孤独感を感じにくい

・ユニットケアに比べると、人間関係が希薄で煩わしさを感じることが少ない

・ユニット型と比べて費用が安い
デメリット ・入居者間やスタッフとの人間関係トラブルが起こった時に気まずい

・建築コストが割高なため、費用面で利用者負担が増える

・人によっては個室にいることに孤立感を感じることがある

・従来型に比べて費用が高い
・個別ケアがしにくく、尊厳が損なわれることもある
・スタッフが担当制ではないので、目が行き届かないことがあっても責任の所在を明らかにしにくい
・大人数で過ごすため、特に認知症の方は気持ちに動揺が起こりやすい
・多床室の場合、プライバシーが保ちにくい
・感染症やインフルエンザなどが発症した場合、施設内感染のリスクが高い



●ユニット型個室(特養:一人当たりの居室面積は13.2㎡以上)

ユニット型個室





●従来型個室(特養:一人当たりの居室面積は10.65㎡以上)

従来型個室




ユニットケアは様々な介護施設で提供されている

高齢者の尊厳を守るケアとして、特別養護老人ホームではユニットケアの整備が推奨されています。また、認知症の方のケアを行うグループホームでは、すべてユニットケアとなっています。

最近では介護老人保健施設(老健)有料老人ホームでもユニットケアを導入するところが増えてきています。このように、ユニットケアを採用する施設は、認知症の方や介護度の重い方を対象にしたところが多いです。


認知症の方や介護度の重い方ならばユニットケアがおすすめ

ユニットケアでは、認知症の方介護度の重い方がそのメリットを多く享受できると言えます。少人数でいつも同じメンバーで生活をすることは、認知症の方にとって気持ちの安定に繋がります。

寝たきりで自分で動けない方にとっては、スタッフがそばにいてリビングから人の話し声が聞こえる環境は、安心感が持て孤独感を和らげることに繋がるでしょう。

逆に、スタッフの世話を多く必要としない自立心の高い方の中には、希薄な人間関係を好み、ユニットケアの濃い人間関係を煩わしく感じる方もいます。

ユニットケアが合うかどうかを、「ユニット型特養」などのショートステイを利用して確認してみるのも良いでしょう。


まとめ

ユニットケアは、尊厳のある個別ケアという理想を、介護をする側される側にとってベストな形で追求したものと言えます。誰もが歳を重ね介護の世話を受ける立場になると考えたときに、自分の将来を安心して委ねられるケアの形であり、メリットも多く存在します。

しかし、誰にとってもユニットケアが良い訳ではなく、ユニットケアを居心地が悪いと思う方もいるし、身体状況によっても感じることに違いがあるでしょう。また、施設における介護は、ユニットケアに切り替えただけで良いものになるとも限りません。

施設を検討するときは、ユニット型に限定せずいろいろな施設を見学し、入居する人のライフスタイルや家族の要望に合う施設を選ぶことが大切です。


このQ&Aに回答した人

武谷 美奈子
武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。