【知らなきゃ損!】入院・医療費の負担を抑える公的制度

誰しも急な体調不良や、突然のケガで入院することもあるでしょう。しかし、治療を受けたものの、高額な医療費が払えない場合にはどうしたらよいのでしょうか?

そんなときのために知っておきたいのが、医療費の負担を軽減する制度です。中には早く手続きをしておくことで制度の対象となるものもあります。

詳しくみていきましょう。

入院費とは

入院費とは、文字通り入院にかかる費用全般を指します。その内訳には、公的医療保険の対象となるもの・ならないものがあります。違いをしっかり理解して、知識を深めていきましょう。

入院費の内訳

入院費には、以下のようなものが含まれます。

医療保険の対象となるもの
・医療費(治療費)
医療保険の対象外
・食費
・日用品
・電気代(TVカード代)
・差額ベット代
・先進医療などの公的医療保険対象外となる医療費

このように、医療保険の対象は基本的に医療費(治療費)のみとなります。医療保険が使えないものも多くあることを理解しておきましょう。

入院費の相場

では入院した場合、どのくらいの入院費を支払うのでしょうか。生命保険文化センターの調査結果を見てみましょう。

年代別の入院時の自己負担額は以下のようになっています。

年齢別 入院費平均額
18-19歳 30万円
20歳代 27.3万円
30歳代 24万円
40歳代 26.7万円
50歳代 36.3万円
60歳代 31.5万円
  • 出典:生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」

全体の入院費平均額は、「30.4万円」。入院をすると高額な医療費を支払っていることがわかります。

利用できる公的制度

入院費の支払いが難しい場合や、負担を抑えるために利用したい公的制度があります。

ここで言う入院費とは、医療保険の対象となる治療費のこと。治療費以外のものは対象外となるのでご注意ください。

高額療養費制度

高額療養費制度は、医療費の減額制度のことです。通常、病気やケガで治療を受けた場合、医療保険証を病院に提示することで1~3割負担の支払いですみます。しかし、1~3割負担とはいえ積み重ねで高額になった場合に備えて医療費の上限金額を設け、負担を抑えるのが高額療養費制度です。

この制度は、月ごとに医療費の上限が決められており、その上限を超えて支払った分が、2~3ヶ月後に戻ってくる仕組みになっています。この自己負担の上限金額は、所得や年齢によって異なります。

限度額適用認定証

上記の高額療養費制度では、医療費の1~3割負担を支払い、上限金額を超えて支払った医療費が後日戻ってくるもの。これが、限度額適用認定証を取得して病院に提示することで、窓口では自己負担上限金額までの支払いで済みます。超過分を支払わなくてよいため、医療費の窓口負担が少なくなります。

例:70歳未満、標準報酬月額26万円以下の方の場合
  • 医療保険適用後の支払い額(限度額適用認定証がない場合):30万円
    高額療養費制度の自己上限負担金額:57,600円
    病院の窓口で支払う金額:30万円
    うち、高額療養費制度で2~3か月後に戻ってくる金額:300,000円-57,600円=242,400円
  • 病院の窓口で支払う金額(限度額適用認定証がある場合):57,600円

高額療養貸付制度

前述の高額療養費制度では、上限を超えていた場合、手続きをすることで2~3ヶ月後に戻ってきます。しかし、医療費が戻ってくるまでの間、一時的に医療費を建て替え支払うのは負担が大きいもの。このときに利用したいのが、高額療養費貸付制度です。

これは高額療養費の払い戻しとなる金額の8~9割相当の金額を、無利子で貸し付けてくれる制度です。

高額療養委任払い

前述の高額療養費貸付制度を利用しても、支払いが難しい場合に利用したい制度が高額療養費委任払いです。この制度は、高額療養費として戻ってくるお金が、保険者から直接医療機関に支払われる制度です。患者は、自己負担上限金額のみを病院に支払えばよいので、費用負担が軽くなります。

ただし、健康保険料などを滞納していると利用できない場合がありますので注意しましょう。

またこの制度は、保険者と医療機関が協定を締結していないと利用できません。まずは医療機関の会計窓口に、「高額療養費委任払いを使いたい」と相談してみましょう。

傷病手当金制度

病気やケガなどで仕事ができず、会社から十分な報酬を受けられないとき、生活を保障することを目的に手当金が支給される制度です。この制度を利用するには、4つの条件があります。

  1. 業務外の事由よる、病気やケガによる療養のための休業である。例えば、業務中や通勤中の病気やケガについては、労災が適用になるため、それ以外での病気やケガが業務外の事由となります。
  2. 仕事をすることができない状態である。
  3. 病気やケガによる療養のため仕事を休んだ日から、4日間以上仕事ができなかった。
  4. 病気やケガによる療養のため仕事を休んでいる期間、給与の支払いがない。

このような条件を満たす場合、標準報酬日額の3分の2の金額が支給されます。

生活保護制度

病気などの事情で働くことができず、収入が極端に少ない場合、最低限の生活ができるように金銭的にサポートして自立を助長する制度です。入院などの医療費は「医療扶助」を受けることとなり、その費用は直接病院に支払われます。窓口での自己負担はありません。

入院した時に所持金が少なく、入院費が支払えないという状況のときには、早急に病院の医療ソーシャルワーカーに相談をしましょう。医療ソーシャルワーカーを通じて、生活保護制度の相談を市区町村に行ってくれます。生活保護制度の申請日から医療扶助の対象になってきますので、申請が遅れしまった場合、その間は自己負担になりますので注意しましょう。

医療ソーシャルワーカーとは

入院費が支払えない場合の対処法

上述した複数の方法を利用しても支払えない場合や、制度を利用できなかった場合にはどのようにすればいいのでしょうか。

病院に分割払いの相談をする

まずは病院に医療費が支払えないことを相談しましょう。場合によっては、分割の相談や支払時期を先延ばしすることも相談できます。無理のない支払いスケジュールを病院側と相談するようにしましょう。

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それでも入院費が支払えないとどうなるのか

入院費が高額で、制度を利用しても支払いができない場合にはどうなるのでしょうか。病院側の対応としては以下のようなことが一般的です。

支払いの催促がくる

支払えない場合は「いつまでに支払います」というような、念書を病院側と取り交わすことがあります。この内容通りに支払いができない場合には、病院から電話や書面、場合によっては患者宅に訪問し、入院費の支払いに関する催促をする場合があります。

入院時の保証人に連絡が入る

院時に記載する書類の中に、保証人を記載するものがあります。入院費を滞納し、病院側の支払い催促に対して応じない場合には、この保証人に入院費支払いの連絡が入ります。保証人に迷惑をかけることになりますので、十分注意しましょう。

弁護士から連絡がくる

病院からの電話や、文書による催告や督促状に応じない場合は、病院側で委任された弁護士とのやり取りになっていきます。弁護士との協議後、場合によっては民事訴訟などに移行する場合もあります。

金銭的に余裕がなくても病院に行くことを躊躇しない

体調が悪く病院に行きたいけど、お金がないため病院に行くことを躊躇している方もいるかもしれません。

しかし、日本の社会保険制度の中には、医療費について利用できる制度が複数あります。何かしらの制度を利用して、支払いを軽減できる方法があるでしょう。

治療をうけたあと支払いに困っている方や、お金がなくて病院に行くことを躊躇している方は、諦めずに利用できる制度がないか医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

森 裕司

著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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