75歳以上が加入する後期高齢者医療制度とは

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の全ての高齢者が加入する医療保険です。ここでは対象となる人や医療費の窓口負担、保険料や加入手続きについて解説します。

後期高齢者医療制度とは

後期高齢者医療制度とは、75歳以上または64〜74歳で一定の障害があると認定された人が加入する医療保険です。

持病や加齢の影響で、高齢者の医療費は他の世代と比べて高額です。高齢化が進むことで、その額はさらに大きくなります。

そのため後期高齢者医療制度では、高齢者の医療にかかる費用を高齢者自身が支払う窓口負担や保険料だけで賄うのではなく、国からの公費や現役世代からの支援金も利用することで、高齢者の医療を社会全体で支えています。

後期高齢者医療制度の対象者

後期高齢者医療制度の対象となる人は、次の条件に当てはまる人です。

  • 75歳以上の人(75歳の誕生日当日から対象)
  • 65〜74歳で、一定の障害があると認定された人(認定された日から対象)

一定の障害とは、次の手帳または年金の受給権を取得していることです。

  • 身体障害者手帳1・2・3級を取得している
  • 身体障害者手帳4級のうち、音声機能または言語機能の障害がある
  • 身体障害者手帳4級のうち、下肢障害で、1号(両下肢の全ての指を欠くもの)、3号(1下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの)、4号(1下肢の機能の著しい障害)のいずれかに該当する
  • 養育手帳Aを取得している
  • 精神障害者保健福祉手帳1・2級を取得している
  • 障害年金1・2級を受給している

これらに該当する人で後期高齢者医療制度の加入を希望する場合は、申請が必要です。市区町村の担当窓口に問い合わせましょう。

窓口負担は原則1割

後期高齢者医療制度の加入者は、医療費の窓口負担は原則1割です。ただし、現役並みの所得がある人は3割負担となります。

具体的には、まず課税所得が145万円以上であること。そして単身世帯の場合は年収が383万円、夫婦2人世帯の場合は520万円を超える場合です。

また2022年度の後半をめどに、窓口負担が原則1割から2割に引き上げられることが議論されています。(2021年2月現在)

対象となるのは、課税所得が28万円以上あり、なおかつ年収が200万円以上の人です。ただし変更後3年間は、外来にかかるひと月分の負担額が最大でも3,000円に収まるような措置を導入することになっています。

保険料の決め方・納め方

後期高齢者医療制度に加入している高齢者は、所得に応じて設定された保険料を、一人ひとりが支払うことになります。

保険料は保険者である各都道府県の後期高齢者医療広域連合が、地域の実情に合わせて2年ごとに決定します。

広域連合は、後期高齢者医療制度を円滑に運営するために設置された特別地方公共団体です。

保険料の納め方は、公的年金から引き落とされる「特別徴収」と、納付書または口座振替を利用した「普通徴収」の2種類があります。基本的には特別徴収で納めますが、次の条件に当てはまる場合は普通徴収となります。

普通徴収となる場合

・公的年金の受給額が年額18万円未満

・介護保険料と合わせた保険料が、年金受給額の2分の1を超える

・年度の途中で他の市区町村から転入した

・年度の途中で後期高齢者医療制度の対象となった

さまざまな負担軽減策

後期高齢者医療制度でも他の医療保険と同様に、いくつかの負担軽減策が設けられています。上手に使って、経済的な負担を軽くしましょう。

窓口負担などの軽減

高額療養費
ひと月に負担する医療費が高額となる場合、所得に応じて定められた自己負担上限額を超えた分の費用が払い戻されます。
特定疾病
特定疾病(血友病、血液透析が必要な慢性腎不全、血液製剤によるHIV感染症)がある場合、1つの医療機関にかかる医療費の上限が毎月1万円になります。
高額介護合算療養費
医療費と介護費を合わせた費用が自己負担限度額を超えた場合、その分の費用が払い戻されます。
入院時食事療養費、入院時生活療養費
入院した場合、食費と居住費にかかる費用のうち、定められた額を超える部分は広域連合が負担します。
移送費
移動が困難な高齢者が医師の指示によって緊急で移送された場合、広域連合が認めた場合に限り移送費が支給されます。

そのほか

葬祭費
亡くなったときに、葬儀を行なった人に葬祭費用の一部が支給されます。

後期高齢者医療制度の加入手続き

後期高齢者医療制度の加入手続きは、対象となったときに自動的に行われます。保険証が手元に届くので、医療を受ける際には必ず提示しましょう。
ただし、これまで入っていた医療保険の脱退手続きは、自分で行う必要があります。

また、限度額適用・標準負担額減額認定証、限度額適用認定証、特定疾病療養受療証を取得していた場合は再度、窓口での申請が必要です。

手続きにはマイナンバーや本人確認書類が必要な場合があるので、あらかじめ準備しておきましょう。

問い合わせ先に注意

後期高齢者医療制度は、都道府県ごとに設置された広域連合と市区町村が連携して事務を行なっています。そのため、内容によって問い合わせ先が異なります。

制度についての問い合わせは広域連合の窓口を、保険料の支払い方法や個人情報を含む問い合わせは市区町村の担当窓口を利用しましょう。

イラスト:坂田 優子

この記事の制作者

矢込 香織

著者:矢込 香織(看護師/ライター)

大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。

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