【負担を軽減】ご存知ですか?家族介護慰労金|自治体から支給される制度
介護を必要とする方が「他人に世話をしてもらうのは嫌だ」と家族以外の介護を拒んだり、介護を行う家族が「できれば他人を家に入れたくない」と思っている場合は、介護保険サービスを使用せず家族で介護をするというケースもあるでしょう。
そのような介護保険サービスを使用しない家庭に現金が支給される制度が「家族介護慰労金」です。
介護サービスを利用しない家庭に年額10万円程度が支給される
介護保険サービスを利用せず、自宅で1年以上にわたり、要介護4~5に認定された要介護者を介護している家族に対して、自治体から年額10万円~12万円が支給される制度が家族介護慰労金です。
しかし、給付条件がやや厳しく実施していない自治体もあるので、お住いの自治体にこの制度があるかどうか確認しましょう。
家族の介護をしていれば誰でももらえるワケではない
この給付金を受けるためにはハードルがあります。
以下に基本的な支給条件を記載します。
- 要介護4または5の認定を受けている人を介護している同居の家族
- 1年間介護保険サービスを利用していない
- 通算90日以上の入院をしていない
- 世帯が「住民税非課税世帯」であること
自治体によって申請方法に違いがある
要介護者および介護者が1年以上継続して大阪市内に居住している(住所を有する)、要介護者および介護者の世帯が市民税非課税であること。(大阪市の場合)
介護者が高齢者と同居、もしくは隣地に居住するなど事実上同居に近い形で介護している。(新宿区の場合)
介護を受けている人と同居し、かつ生計を同じくしている、1年以上八戸市に居住している、介護する人、介護される人とも、市民税非課税世帯であること。(八戸市の場合)
このように、自治体によっては条件が追加、もしくは緩和される場合もあります。
給付を受けるには申請が必要
申請のタイミングは、特に決まっておらず、要介護の認定を受けてから1年以上経過していれば、いつでも申請を行うことができます。
ただし、自治体によって申請方法や申請先が異なりますので、給付を受けるための条件とあわせて確認しておきましょう。
しかし、基本的な流れは同じであることが多いので、ここでは大阪市の申請方法を紹介します。
【申請手順の例】大阪市の場合
- 1.福祉局に問い合わせを行い、申請書類を入手する
- 2.申請書類が届いたら、申請書類に必要事項を記入し、福祉局に送付する
- 3.書類の内容について審査が行われる
- 4.支給要件を満たした場合、地域包括センターの職員が自宅に来訪し、介護状況の調査が行われる
- 5.報告内容が審査され、支給の決定を行う
- 6.支給決定後、支給決定通知書および請求書が送付される
- 7.支給決定通知書および請求書が届いたら、請求書に必要事項を記入のうえ福祉局に送付する
- 8.福祉局に請求書が届いたら、指定の金融機関口座に慰労金(10万円)が振り込まれる
一見すると、複雑な申請に見えますが、この中で、制度を利用したい方がしなければいけないことは下記三点です。
- 申請書をもらう
- 申請書に記入して送る
- 請求書を記入して送る
申請自体はそこまで難しいものではないので、この制度要件に当てはまるという方は手続きしておきましょう。
頑張って使うべき制度ではない
前述のように、家族介護慰労金は介護サービスを利用せずに在宅介護を行っている家族を支援する制度です。
しかし、要介護認定を受けることは、その後に続くケアプランを作成し、介護保険サービスを使うための第一段階になります。
もちろん、認定だけ受けて介護サービスを利用しない家庭も実際にいらっしゃると思います。
しかし、介護保険サービスを利用しないで、家族だけで要介護4~5の人を介護し続けるというのは、心身の負担が大きいもの。その負担を軽減するために介護サービスは存在しています。
以上のことから、この制度は決して積極的に活用すべきではないといえます。
現状としてこの制度は、慰労金を受けるために在宅介護を頑張るというより、結果的にもらえるならもらっておこうというスタンスで申請を行うとよいでしょう。
介護は家族だけで抱え込まず、介護保険サービスを上手に利用し負担を軽減しましょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:株式会社回遊舎 酒井富士子(フィナンシャル・プランナー)
“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。
お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで担う。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点1 0」(株式会社ダイヤモンド社)など