【一覧で確認】介護保険サービスで控除対象になるもの
「介護サービス費は医療費ではないので、医療費控除の対象にはならない」と思っていませんか?
実は医療費控除の対象となる介護サービスもあります。控除で申告できる介護サービスとは何か、その際の控除の条件についても解説していきます。
医療費控除とは
医療費控除とは、確定申告をすることで支払った医療費により所得控除を受けることができるものです。
医療費の支払いが10万円を超えると、所定の計算式に基づいて計算された額が所得控除の対象になります。ただし、生命保険の入院給付金や、高額医療費の支給を受けた場合は、支払った医療費から差し引く形になるので注意しましょう。
医療費控除の対象
医療費控除を申告する前に、控除対象になるものとならないものがあることを知っておきましょう。
医療費控除の対象となるもの
- 病院で受けた診療、治療費、入院費
- 歯科医院で受けた診療、治療費
- 治療のために支払った薬代(市販薬も含む)
※ビタミン剤やサプリメントなど病気の予防や健康増進に関わるものは含まれない - 治療上必要となった松葉杖や医療器具の購入費用(例、コルセットなど)
- 通院時に利用した電車やバスの運賃、場合によってはタクシー代などの交通費
※タクシー代は、電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合のみ対象となる - 治療や診察のための医師の送迎費用
- 治療としてマッサージなどで支払った費用
- 傷病により、6ヶ月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合のオムツ代
- 介護保険等の制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担分
医療費控除の対象とならないもの
- 美容整形の費用
- 健康診断、人間ドックの費用
- 通院時に使用したタクシー代(公共交通機関が利用できない場合を除く)
- 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場料金
- 病気の予防、又は健康増進のためになるとされるものの購入費用(病気の予防接種を含む)
- 自分で希望して個室を利用したときの差額ベット代
医療費控除の申告期間
医療費控除の対象となる期間は、前年の1月1日~12月31日まで。この期間の医療費について、毎年2月16日から3月15日までの間に、確定申告をする必要があります。もし申告時期に手続きが出来なかった場合も、過去5年間遡って申告できるので、領収書などは大切に保管しておきましょう。
医療費控除の対象となる介護サービス費用
介護サービスのなかでも、控除対象となるサービスは決まっています。自宅において下記の医療系サービスを利用した場合に控除の対象となります。
控除対象となる介護サービス費用
確定申告でいう医療系サービスとは、以下のサービスです。
- (介護予防)訪問看護
- (介護予防)訪問リハビリテーション
- (介護予防)通所リハビリテーション
- (介護予防)短期入所療養介護
- 居宅療養管理指導
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で「訪問看護を利用する場合」に限る)
※出典:国税庁「介護保険サービスの対価にかかる医療費控除について」
施設入所費用
以下の介護施設に入所して、介護サービスを受けた場合も控除の対象となります。対象となる費用の内訳は、「介護サービス費、食費、居住費」で、日常生活費や理髪代といった費用は対象になりません。
<控除対象となる介護施設>
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
<支払った額の2分の1が控除対象となる施設>
- 特別養護老人ホーム(特養)
オムツ代
おおむね6ヶ月以上にわたり寝たきりで、「オムツ使用証明書」を医師に記載してもらった場合、医療費控除の対象となります。
「オムツ使用証明書」は、オムツメーカーのホームページでダウンロードできるので、プリントしてかかりつけの医師に作成を依頼しましょう。
また医療費控除の手続きには、オムツ代の領収書が必要となるので、こちらも大切に保管しておきましょう。
対象とならないものはコレ
ここまで医療費控除の対象となる介護費用について解説してきました。文字通り、医療系サービスについては医療費控除の対象となります。
では医療費控除の対象とならないものは、どのようなものがあるのでしょうか。
以下のような、介護系サービスは控除の対象外
- (介護予防)認知症高齢者グループホーム
- (介護予防)地域密着型特定施設入居者生活介護
- (介護予防)福祉用具貸与
- 訪問介護(生活援助中心型)
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
- 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスに限る)
- 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスに限る)
- 地域支援事業の生活支援サービス
条件が整えば医療費控除となる介護サービス
上記で述べたものでも「医療系サービス」を利用している場合は控除対象になることがあります。
医療系サービスを利用していれば控除対象となる介護サービス
- 訪問介護(身体介護のみ)
- 夜間対応型訪問介護
- (介護予防)訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)
- 地域密着型通所介護
- (介護予防)認知用対応型通所介護
- (介護予防)小規模多機能型居宅介護
- (介護予防)短期入所生活介護、短期入所生活介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る)
- 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
- 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
※出典:国税庁「介護保険サービスの対価に係る医療費控除について」
これらのサービスは「対象にならない」とあきらめるのではなく、医療系サービスを使っているかどうか、確認をするようにしましょう。
イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。