【老後のお金に備える】老後破産しないために注意すべき3つのポイント
平均寿命は延び続け、セカンドライフの期間は長くなっています。かつて当たり前だった人生80年が100年へと変容し、老後破産や高齢者の貧困が深刻な社会問題になっています。
しかし、現役時代からの準備により、最悪の事態を防ぐことができます。特に注意すべきは「貯金を増やす」「働き続ける」「健康を維持する」の3つと言えます。
当コラムでは、定年前の世代を対象に、老後破産しないための準備方法について解説します。
50歳以降にあなたを待ち受けるライフイベント
まずは50歳以降の一般的な年代別のライフイベントと、資金計画のポイントを確認してみましょう。
50代は親の介護が始まる年代?!
そろそろ老後生活のイメージを描き始める50代。仕事も落ちつき定年後に活かせる資格の取得や、起業の準備を始めるのに適している時期です。
また、子育てを終えた世帯であれば、定年退職までが貯金を増やすラストスパートの期間。
時間にもゆとりが生まれ、趣味や旅行などをたくさん楽しみたい時期かもしれません。しかし、安定的な収入が得られる50代のうちに、しっかり貯めておくことを意識しましょう。
また、50代で親の介護が始まる人もいるかもしれません。
介護は突然やってきます。生命保険文化センターが2018年に実施した調査 によると、平均的な介護期間は4年7ヶ月です。
いざという時に慌てないために、どのような介護を希望するのか、医療・介護費用はどこから捻出したらよいかなど、親が元気なうちに話し合っておきましょう。
注意点としては、唐突に介護や財産について聞き出すのではなく、健康状態や人付き合いから気に掛けるように会話すること。親と接する時間を増やし自然と話せる雰囲気をつくることが大切です。
!POINT!
- 50代は老後のイメージを描き始める年代
- 貯蓄を増やすラストスパート期間
- 親の介護も視野に入れ前向きなコミュニケーションを
60代は退職金と年金の受け取り方を考える
60代は多くの方が定年退職を迎え、退職金を手に入れる時期です。
厚生労働省が公表する「2017年賃金事情調査 」のモデル退職金額は、大学卒の総合職では約2,695万円、高校卒の総合職では約2,478万円です。
退職金を手にしてよくあるのが、多額のお金を手にして気持ちが大きくなってしまい、早期に使い果たしてしまうケースや、慣れない投資に手を出して減らしてしまうケースです。
退職金は老後の生活を支えるための重要な原資。老後破産しないためにも、現役時代からマネーリテラシーを高めておき、使い道をよく考えることが大切です。
また、60代はまだまだ現役並みに働ける年代。再就職や継続雇用制度を使って働き続ける人が多いはずです。
一方で、働きながら年金を受け取る上での注意点があります。
60歳以降も厚生年金に加入し、働きながら受け取る老齢厚生年金を在職老齢年金といい、現行の年金制度では、給与と年金を合わせた月額が一定額を超えると、年金の一部か全額が減額されてしまいます。
近い将来、廃止 が検討されているようですが、働き損にならないような働き方を考えておきましょう。
!POINT!
- 退職金と年金の受け取り方・使う際は慎重に
- 再雇用で安定した所得を確保
- 働きすぎて年金が減額されないように注意
70代以降は本格的なセカンドライフが始まる
70代以降はいよいよ本格的なセカンドライフが始まる時期です。大半の人が、公的年金やそれまで備えておいた貯蓄などを取り崩して生活していきます。
この世代になると、孫がいることが多く、孫のイベントにかかわる出費が増えることも想定できます。また、70代といえども、100歳まで生きると仮定すると、余生は20年、30年にも及ぶ場合があります。
その分の生活費はもちろんのこと、住宅のメンテナンス費用や、自分たちの介護費用といった特別支出が必要になるケースもあります。
そのため、60代のうちに貯蓄は増やしておくことや、公的年金以外の老後の収入源を確保しておきましょう。
とはいえ、おそらく現在50歳くらいの人が、70代に入った頃には、今より働き続ける高齢者は増えているでしょう。
一方で、70代は健康面での不安も出てくる年代でもあります。できるだけ長く働くために、健康的な生活を送ることも、重要な課題となります。
!POINT!
- 貯蓄を取り崩して生活する世代。可能な範囲で節約を
- 短時間のアルバイトなど年金以外の収入も確保
- 医療・介護が必要にならないために健康であること
老後破産を防ぐ|今からできる準備方法
豊かな老後を迎えるか、老後破産するか、多くの高齢者を見ていると、その分かれ目は事前準備の有無と知識の違いにあると感じます。
ここでは、老後破産を防ぐための4つのポイントをご紹介します。
1.貯蓄を増やす
筆者が書いたコラム「どうする!?老後の収入|定年後の収入アップ方法」で述べた通り、老後の生活費として用意しておきたい金額は2000万円以上にもなります。
また生活費以外にも、住宅のメンテナンス費用や車の買い替え費用、介護施設の入居費用などを加えると3000万円くらい必要になることが考えられます。
貯蓄を増やすために、以下の制度や商品を活用して、効率的に増やしていきましょう。
財形貯蓄制度
給与からの天引きで行う貯蓄制度で、「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3つがあり、勤務先を通じて加入することができます。一定の貯蓄額まで利子が非課税となる優遇措置があります。
つみたてNISA
投資をすると、利益の約20%が税金として引かれますが、金融機関でつみたてNISA口座を開設しその中で運用すると、無税になるのがつみたてNISAです。
投資上限額は年間40万円、投資できる期間は2037年までとなっています。ただし元本保証はないため、投資の基礎知識を身につけてから始めましょう。
銀行の積立式定期預金
勤務先に財形貯蓄制度がなく、投資は心配という方におすすめの商品です。毎月決まった日に、一定額が自動的に引き落とされ、定期預金として運用してくれる商品です。
2.老後に受け取る年金を増やす
現在、高齢者世帯の多くが、公的年金だけでは生活費は足りず、預貯金などを取り崩して生活しています。
しかし、確定拠出型年金(iDeCoを含む)、国民年金基金などの私的年金に加入しておけば、その分預貯金の取り崩しが少なくて済むようになります。
これらの制度については、筆者が書いたコラム「どうする!?老後の収入|定年後の収入アップ方法」 をご参照ください。
3.健康寿命を伸ばす
健康と働くことは直結する
老後も元気に働き収入を得ることは老後破産防止に効果的ですが、一方で、健康を理由に退職するという高齢者の現状があります。
厚生労働省が実施する「第13回中高年者縦断調査の概況 」によると、調査対象者の中で離職経験がある人に限定し、その人たちが仕事を辞めた理由を回答している結果が表示されます。
男性の回答を見ると、「定年のため」「契約期間満了」に次いで、3番目に多いのが「健康がすぐれなかったから」。
女性においては、「その他」を除くと、「健康がすぐれなかったから」の回答が「定年のため」に次いで、2番目に多い回答となっています。
つまり、働くことと健康は直結している、ということがよく分かります。
人付き合いが健康維持のポイントに!?
健康寿命を伸ばすには適度な運用や食生活に気をつけること、睡眠を取ることが重要なのは言うまでもありません。ほかにも、健康を維持するための意外な方法があります。
同調査では、「近所づきあい、友達づきあい、家事、自分の孫や子どもの世話をいつもしている人は、しない人より、健康状態が良いと思っている割合が高い」と述べています。
人とのコミュニケーションが、健康状態を良くするポイントとなるのです。とはいえ、男性の場合は女性と異なり、現役時代は仕事を通じた人間関係が中心で、いざ老後を迎えた際に、地域のコミュニティに溶け込むのが難しいとも言われています。
けれども、そこは考え方を変えて、老後も健康でいられるよう、現役時代のうちに、近所を含めた地域とのかかわり方を見直してみてはいかがでしょうか。
4.困った時の相談先を知っておく
どんなに準備をしたとしても、不測の事態が起きることもあるものです。そんな時は1人で抱え込むのではなく、専門の窓口に相談しましょう。
名称 | 概要 |
---|---|
地域包括支援センター |
保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等が、介護サービスや介護予防サービス、 |
消費生活センター | 消費生活全般に関する苦情や問い合わせ、相談ができる。また多くの自治体では、消費生活センターを 多重債務の相談窓口としている。消費者ホットライン「188」に相談。 |
日本司法支援センター (法テラス) | 「借金」「離婚」「相続」など、法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスを受けられるほか、 無料の法律相談や、必要に応じて弁護士・司法書士費用などの立替えなどをしてくれる。 |
自立相談支援窓口 | 生活困窮者のための相談窓口。専門の相談員による、就労や家計の立て直しなどの支援が受けられる。 窓口は、自治体の福祉担当部署や社会福祉協議会、社会福祉法人、NPO団体などに設けられている。 |
おわりに
老後破産を防止するカギは、貯金を増やすこと、働き続けること、健康を維持することの3つに絞られてくると思います。
また、困った時の相談先を知っておくことも重要なポイントです。
準備は早ければ早いほど、その効果を発揮します。みなさんの気付きが、老後破産の防止策につながります。
イラスト:上原ゆかり
この記事の制作者
著者:小沢 美奈子(ファイナンシャル・プランナー/ライター)
K&Bプランニング代表
大学卒業後、損害保険会社にて社員教育、研修講師などを経験。約12年間勤務後、外資系損害保険会社で営業に従事。2012年ファイナンシャルプランナーとして活動開始後は、Webや書籍などで記事執筆、セミナー講師、家計相談などを行う。シニアや生活困窮者のライフプランにも力を入れる。フォトライターとしても活動。
ホームページ http://kandbplanning.org/