50代からの資産形成におすすめのiDeCo・NISAとは?
筆者は多くのマネー相談を受けています。よく50代の方から「年金をもらうまで、まだ時間があるけど資産を増やす方法はないか?」と聞かれます。結論としては、50代の資産形成にiDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)がおすすめです。
今回はiDeCoとNISAの特徴やメリット・デメリット、活用方法、申し込み方法についてわかりやすく解説します。節税効果が高いため、うまく活用して老後資金を増やしましょう。
そもそも資産形成とは?
将来に向けてお金の準備をすることを資産形成とよびます。この資産形成には、「貯蓄」と「投資」の2つの方法があります。「貯蓄」は文字どおりお金を貯めることで、銀行や郵便局の預金などがこれです。皆さんご存知のように、自由に必要な時に引き出しできるお金です。
投資とは利益が出ることを見込んでお金を出すことで、株式や投資信託などの金融商品を購入し、運用することです。投資した資産を売って現金にかえるには手続きを踏む必要があり貯蓄より自由度が低くなります。
50代におすすめのiDeCo(イデコ)とは?
iDeCoは2001年にスタートした「老後資金」を蓄えることを目的とした国が支援する制度です。「個人型確定拠出年金」と呼ばれています。
「公的年金」である国民年金や厚生年金の上乗せとして個人で加入する私的年金制度です。自分で運用商品を選び、毎月決めた額(掛金)を払い運用し、その運用実績により受け取る額が変わる仕組みです。
iDeCoは積み立てる掛金の全額を所得控除として課税されないことと、投資で得られた運用益(売却益、分配金、配当など)は非課税になります。
さらに、運用した資産を受け取る時にも、税金上の優遇があります。
iDeCoのメリット・デメリット
メリット
- 毎月の掛金が全額所得控除の対象となる。
- その年の所得税と翌年の住民税が軽減される
- 運用益(運用で出た利益のこと)に税金がかからない
- 将来年金を受け取るときに税金が優遇される
デメリット
- 60歳までは引き出せない。
- 受け取る額は運用成績による。
- 口座の維持管理費用がかかる。
【Point!】iDeCoの節税メリット
iDeCoと後述するNISAはそれぞれ「節税効果」があります。毎月一定程度の収入があり、所得税や住民税を納めている方にとってはiDeCoの方が「節税メリット」が大きいといえます。
60歳まで引き出せないので、むしろそのことを逆手にとって、資産形成ができる期間ととらえることもできます。iDeCo用の投資信託、定期預金、保険など幅広い種類から投資商品を組み合わせできるところも魅力です。
iDeCoを始めるには
まずは証券会社や銀行など金融機関でiDeCo専用の口座を開設して運用を始めます。一人一口座しか持てません。どんな商品を選び運用するかによって、運用の成果は変わります。運用の成果が良い場合もあれば、積み立てた額より少ない金額しか戻ってこないこともあります。
どんな人が入れるの?
20歳以上60歳未満の日本在住で国民年金被保険者(第1号から第3号まで)
いくらからできるの?
月額5,000円から(1,000円きざみで設定可能)
いくらまで投資できる?
年間14.4万円~81.6万円
職業や、勤務先の企業年金制度により異なります。
例)自営業の方……月々の限度額68,000円
公務員の方……月々の限度額12,000円
専業主婦(夫)の方……月々の限度額23,000円
※国民年金の納付免除を受けていないことが条件
いつ引き出せるの?
原則60歳以降
手数料など負担するお金は?
・口座開設の時の手数料(1回のみ)最低2,829円
・毎月の口座管理手数料 171円~
※金融機関により違いがあります。事前に確認しましょう。
現在の加入者数……210万2千人(令和3年7月現在 )
《ケース》iDeCoにはどのくらい節税効果があるのか?
50歳会社員。年収500万円。毎月23,000円を、受け取り年齢60歳まで10年間運用した場合。利回り1.0%。(他の条件は考慮せず)
拠出時(掛金を払っているとき)の1年間の「節税効果」は?
所得税と住民税に以下のような節税効果が期待できます。
「所得税」の節税額 28,100円/年
「住民税」の節税額 27,600円/年
合計 55,700円/年
NISA・つみたてNISAとは?
NISAとは「少額投資非課税制度」のことです。NISA口座内で購入した株式や投資信託の配当金(分配金)や譲渡(売却)益が非課税、つまり税金がかからない仕組みになっています。通常、取引にかかる税金(20.315%)がかからないので、その分の資産が増やせるという制度です。一般NISAとつみたてNISAについてみていきましょう。
一般NISAとは
2014年に導入されました。私たちが一般的に「NISA」と呼んでいるもので、つみたてNISAと区別する意味で、通常NISAのことを一般NISAとよびます。
1年間に120万円までの非課税枠があり株式や投資信託を中心とした金融商品に投資ができます。非課税期間は5年間です。
一般NISAのメリット・デメリット
メリット
- いつでも引き出せる。
- 本株・外国株・投資信託など投資可能商品が豊富で選択の幅が広い。
- NISAは運用益が非課税のため、利益・配当金は確定申告する必要はない。
デメリット
- NISA口座で損失が発生して、他の口座で得た利益があっても、相殺する「損益通算」ができない。
どんな人が入れるの?
国内在住の20歳以上の方
いくらまで投資できる?
年間120万円まで。非課税期間は5年間
いつ引き出せるの?
いつでも引き出せますが、1年の非課税枠の未使用分は翌年以降に繰り越しができません。
手数料など負担するお金は?
商品ごとに、手数料や信託報酬など諸費用がかかります。
NISAを始めるには
iDeCoと同じく、金融機関でNISA口座を開設します。申請には金融機関所定の届出書のほか、運転免許証などの本人確認書類とマイナンバーがわかる書類が必要になります。
金融機関はNISA口座開設を税務署に申請し、審査をして口座開設完了の通知が届けば
取引が始められます。
つみたてNISAは投資対象商品が、金融庁の定めた投資信託に限られていますので注意しましょう。NISAとつみたてNISAはどちらかひとつしか選べません。「iDeCoとNISA」、あるいは「iDeCoとつみたてNISA」を併用することは可能です。
《ケース》(小見出し)NISAにはどのくらい節税効果があるのか?
つみたてNISAに50歳で加入。60歳までの10年間毎月1万円を利回り1%で運用すると、通常、運用益にかかる税金20.315%がかからないため、10年間の節税額累計は約12,400円となります。
つみたてNISAとは
つみたてNISAとは2018年1月に始まった制度。長期にわたって積立をしながら、投資先を分ける(分散)投資を応援するための非課税制度です。1年間に40万円の非課税枠があり、非課税期間は最長20年間となっています。
つみたてNISAのメリット・デメリット
メリット
- 毎月の積立で購入でき、少額から投資ができる(100円~)
- いつでも引き出しができる。
- 最長20年間の非課税期間があり、長期間利用できる。
デメリット
- 投資可能な商品の種類が限られている。(金融庁が選定した投資信託に限られる)
- iDeCoと違い、投資から得た運用益のみが非課税になる。
どんな人が入れるの?
国内在住の20歳以上の方。
いくらまで投資できる?
年間40万円まで。最長20年間。
いつ引き出せる?
いつでも引き出し可能です。
手数料など負担するお金は?
一般NISAと同じく、商品ごとに手数料や信託報酬など諸費用がかかります。
50代は資産形成のラストスパート世代
預金だけでお金を増やすことは期待できなくなりました。そのため、年収に比例して節税効果が高くなる最長20年間の非課税期間があり、長期間利用できる。iDeCoやNISAをうまく利用して、老後資金を確保しましょう。
最後になりますが、iDeCoは2022年5月から65歳まで加入できるようになる法改正が実施されます。NISAも2024年から新制度が始まります。こうした変更点も確認しながら制度を活用していきましょう。
この記事の制作者
著者:笠原 洋子(2級ファイナンシャルプランニング技能士)
川崎市在住。神奈川県内の私立中学・高等学校で15年間保健体育と家庭科の教職に就き、生徒への金銭教育の必要性を感じFP資格を取得。銀行での営業職を経て旧共済年金の厚生年金への一元化や年金に関するテーマのセミナー講師業を立ち上げました。
趣味は温泉。特に「にごり湯」が好きで箱根によく出かけます。また猫が大好きで岩合光昭さんの写真展に必ず行きます。