【はじめての方へ】ケアプランとは?作成方法や注意すべき点
介護保険を使ってサービスを受けたい時は、ケアプランが必要になります。ケアプランとは、介護サービスをどのように利用するかを決めた介護サービス計画書のことです。
ここでは、ケアプランの作り方と、作る上での注意点について解説します。
ケアプランとは何か
在宅介護の場合も、施設介護の場合も、要介護または要支援の認定を受けると、介護保険を使ったサービスを利用することができます。
その際に介護状態の機能悪化防止や自立を促進するための計画(ケアプラン)を作成し、その計画に沿ってサービスを受けます。
ケアプランは、一人ひとりの利用者がどのような介護サービスを受ければ自立した生活が送れるようになるかを考えて、介護サービスを組み合わせた計画書のことです。
老人ホームのケアプランはどう運用されているの?介護サービスを受けるにはケアプランが必須
介護保険サービスを受ける場合、要介護者、要支援者のどちらにもケアプランは必須です。要介護者の場合は「ケアプラン」、要支援者の場合は「介護予防ケアプラン」と呼びます。
要介護者のケアプランは、民間事業者である居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーが作成し、要支援者の介護予防ケアプランは利用者が住む地域を担当する地域包括支援センターが作成します。
なお、2015年の法改正により、要支援者が利用してきた介護予防サービスのうち、医療系を伴わない訪問介護やデイサービスなどのサービスは、介護保険から離れて各市区町村による「地域支援事業」の中の「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に移行されました。
この総合事業のプランを提供するのは地域包括支援センターです。要支援者は引き続き地域包括支援センターから総合的なケアマネジメントを受けることができます。
ケアプランの作り方
ケアプランは、居宅介護支援事業者に依頼し、そこに所属する介護保険の専門家であるケアマネジャーに作成してもらうのが一般的です。
ケアマネジャーへの報酬はすべて介護保険でまかなわれているため、ケアプラン作成による利用者の自己負担はありません。(2022年9月現在)
ケアプランを作成するために、ケアマネジャーは利用者の状態を把握して介護サービスを提供する事業者を選び、サービスを組み合わせてケアプランの原案を作成します。そして、利用者と一緒に検討しながらケアプランを完成させます。
ケアプラン作成の詳しい流れ
1.利用者の状態把握
ケアマネジャーは、このアセスメントを行う時に、個人的な判断による偏りを避けるため、厚生労働省が示した「課題分析標準項目」というチェック様式を通常は用いています。
2.必要な介護サービス内容をチェック
3.利用者・家族に確認
4.介護サービス事業者と契約
5.ケアプランのチェックと見直し
ケアプランの記載内容
名称 | 記入する内容 |
---|---|
第1表:居宅サービス計画書(1) | アセスメントをもとにまとめた利用者と家族の意向、総合的な援助の方針 |
第2表:居宅サービス計画書(2) | 利用者の課題(ニーズ)、それに伴う長期と短期の目標、課題の改善に向けた具体的な介護サービスの内容 |
第3表:居宅サービス計画書(3) | 介護サービスを組み合わせた1週間のタイムスケジュール表 |
第4表:サービス担当者会議の要点 | サービス担当者会議で話し合われた内容の記録 (ケアマネジャーが所持) |
第5表:居宅介護支援経過 | ケアマネジャーとの相談内容が記載された記録(ケアマネジャーが所持) |
第6表:サービス利用表 | サービスを提供する各事業者の実施計画の月間表 |
第7表:サービス利用表別表 | 1ヶ月の介護サービスの利用単位数と費用 |
なお、要支援者の介護予防ケアプランの書類は「介護予防サービス・支援計画表」と「週間サービス計画表」の2種類で構成されています。
セルフケアプランという方法もある
ケアプランは利用者や家族が作成することも可能で、これを「セルフケアプラン」といいます。
なお現時点(2022年9月現在)ではケアプラン作成により自己負担はありませんが、他の介護サービス同様に自己負担導入の議論がされており、利用者負担増加が予想されます。
その際にこの「セルフケアプラン」を選ぶ方もいるかもしれません。メリットとデメリットを把握しておきましょう。
- セルフケアプランのメリット・デメリット
- 自分の希望するサービスを自由にプランに反映することが可能。
- ケアマネジャーを入れた場合と比べて担当者会議・モニタリング等が不要になり時間が短縮となる。
- 情報収集や煩雑な事務手続きを自分で行うことになる。
- ケアマネジャーの専門性を欠いたプランになる可能性がある。
セルフケアプラン作成の流れ
- 1.市区町村の介護保険課でケアプランを自己作成する旨を届け出て提出書類をもらう
- 2.必要なサービス事業者などの情報を集めてケアプランの原案を作成する(各サービスの利用単位数と自己負担額の計算を含む)
- 3.関係者を集めてサービス担当者会議を開いてケアプランを完成させる
- 4.市区町村にケアプランを提出して受付印をもらう
- 5.各サービス提供事業者に必要な書類を送付してサービス開始
- 6.サービス利用期間中はサービス提供事業者と直接連絡調整を行う
- 7.毎月サービス利用実績をまとめて市区町村に提出する
※詳細は各市町村窓口や担当地区の地域包括支援センターへお問い合わせ下さい。
ケアプランを作成、運用するうえでの注意点
ケアプランは利用者のためのものですから、ケアマネジャーに任せ切りにしないことが大切です。面談では、ケアマネジャーの質問に、できるだけ具体的に話すことが大切です。
例えば、調理はできるが台所に長い時間は立てないとか、歩くことはできるが買い物帰りに荷物を持つことはできないとか、一日中一人でいることが多いのでどこかに通いたいなど、状態と気持ちをケアマネジャーに率直に伝えることが肝心です。
面談でケアマネジャーに伝えるポイント
- 利用者の療養上の問題と生活するうえで困っていること
- 利用者と家族が今後どのような生活をしていきたいか
- 医師から受けている指示やアドバイス
- 言える範囲内で経済的な状況や家庭の事情
また、面談を踏まえ上がってきたケアプランの原案も、しっかりチェックしましょう。
ケアプランの原案で確認したいポイント
ケアマネジャーはそのために毎月1回以上利用者宅を訪問して面談を行い、各サービス事業者と連絡を取り合い、提供サービスが作成した計画の目標通りに実施されているか、またその内容が適切であるかを確認します。
この活動を「モニタリング」といい、モニタリングから新たな課題分析を行い、必要に応じてケアプランを新しく作り直します。
- 療養上の不安が改善されるサービスが含まれているか
- 困っていることを解決するための具体的なサービスがはいっているか
- 利用者の自己負担額について
- 介護サービス以外の福祉サービスなどの情報は必要に応じて入っているか
ケアプラン見直しにつながる具体的なケースは、例えば、リハビリテーションサービスを続けたことによって歩けるようになった、認知症の症状が出始めた、介護をしていた家族に事情が起こり介護の手が足りなくなったなど、利用者の状態や家族の介護力に変化が起こったときです。
また、サービスを実施してみたら、ケアプラン自体に過不足があることがわかり、サービスの内容や回数、時間などの変更が必要になることもあります。
利用者の状態の変化から要介護認定の区分変更を行い、介護度が変更された時は、それに伴いケアプランは必ず作り直されます。
なお、一時的な理由でサービス利用の回数が週1回程度増減したときや、サービスの時間や曜日を変更したときは、「軽微な変更」となるので、ケアプラン自体に変更の必要はありません。
まとめ
それゆえにケアマネジャー主導でお任せのケアプランでも、利用者主導で専門性に欠けるケアプランでもいけないと思います。
一人ひとりの状態や希望により、必要な介護サービスは違ってきます。いかにその人に合ったケアプラン、またそのバランスが取れたケアプランをつくるかが、在宅でよりよい介護が行われるための重要なポイントになります。
【PR】「その方らしさに、深く寄りそう」ベネッセの有料老人ホームケアプランとは?ケアマネジャーは何をするの?
イラスト:安里 南美
認知症による資産凍結のリスクをご存知ですか?
認知症を持つご本人も、ご家族も預金が下ろせなくなる「資産凍結」。専門家が、備える方法を初回無料でサポートします。不安を感じたら早めのご相談を。
詳しくはこちら
この記事の制作者
著者:浅井 郁子(介護・福祉ライター)
在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。
高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。
東京都民生児童委員
小規模多機能型施設運営推進委員
ホームヘルパー2級
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。