特別養護老人ホーム(特養)とは?

特別養護老人ホームは、日常生活を営むのに必要な介護やリハビリテーションなどを行う入居型の介護施設です。社会福祉法人や自治体などによって運営され、老化によって介護を必要とする65歳以上の方または、特定疾病により介護を必要とする40~64歳までの方で、要介護度3以上の方が入居対象です。入居の順番は、施設が開催する入居判定会議などで緊急性が高いと判定された方が優先されます。 老人ホーム・介護施設を探す

入居条件

特別養護老人ホームへ入居できる条件は、主に介護度で決まります。
近年、介護保険制度の改正と共に入居できる条件が変更され、より介護度の高い方だけが入居できるようになっています。2015年4月1日の改正からは、原則介護度3以上が対象になりました。「日常生活の場」ですので、感染症を持つ方など、定期的な医療的行為が必要な方も対象外となります。

ただし、介護度1、2 の方も特例として入居が可能です。施設が下記の理由を認めたうえで、管轄する市町村に申請する必要があります。

  • 認知症で、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られる。
  • 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られる
  • 深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態である
  • 単身世帯等家族等の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分である

入居難易度

特別養護老人ホームは、入居待機者が多くなかなか入居できないといわれてきました。2014年度の「厚生労働省 特別養護老人ホーム入居申し込み者の概況」によると、全国で約52万人が待機しているといわれています。しかしこの数字がそのまま待機者の数とは限りません。

特養は申し込みの併願が認められているため、1人が複数の施設に申し込んでいる場合があります。そのため52万人の待機者の中には、同じ人が何度もカウントされている可能性が高いのです。また、2015年より入居要件が介護度3以上に改正されたことにより待機者は減少。この傾向は全国に波及しています。

東京都高齢者福祉施設協議会の調べによると、2013年11月の時点で1施設あたりの平均待機者数は360人でしたが、2015年11月では17.7%減少して296.3人となったと発表。また都内郊外の施設は待機者がほとんどおらず、定員を割っているために生活相談員が入居者獲得のための営業を行っているようです。地域性にもよりますが、すでに一部の特養を除いて、それほど待たずに入居できるようになってきています。

メリット・デメリット

特別養護老人ホームは公共性が高く、利用料が安く抑えられることで知られていますが、入居を検討される際には、デメリットも知っておきたいものです。特養のメリット、デメリットをまとめてみました。

メリット

利用料が抑えられる
有料老人ホームのような一時金はありませんし、所得に応じて利用料が軽減されるなど、誰でも利用できるのが特徴です。
施設に多様性があり、選べる
個別性の重視や個室の多さでは有料老人ホームが有利なものの、最近では多床室(大部屋を複数人で利用)・集団介護を中心とした「従来型施設」だけでなく、少数で個別性を重視する「ユニット型施設」も増え、施設の選択の幅も広くなりました。
経営の安定性
特別養護老人ホームの経営は、地方自治体か社会福祉法人に限られ、公共性と高齢者の生活環境を維持するために税制面で優遇されるなど、安定した経営のための措置が取られています。

デメリット

利用料が人により異なるが、介護サービスや居室のグレードは一律
同じサービスを受けているにも関わらず、利用者の所得によって利用料の自己負担額が2割(将来的には3割に引き上げられる予定)になること、また居室のグレードに差が生じないことは、人によっては不公平に感じるかも知れません。

提供されるサービス

特別養護老人ホームで提供されるサービスの内容は、「基本方針並びに設備及び運営に関する基準」が厚生省令及び介護保険法、関連省令によって定められています。

入浴
一週間に2回以上の入浴が義務付けられています。浴槽は一般的な浴槽や、銭湯のように広い浴槽、座ったままで入浴できる浴槽や、寝たままで入浴できる浴槽など、心身に応じた浴槽を使用します。施設によっては入浴剤を使用するだけでなく、菖蒲湯やりんご湯、本物の温泉に浸かることができる施設もあります。また、施設によっては同性の介護者が入浴介助をするなど、入居者のプライバシーに配慮している施設もあります。
食事
調理方法や温度、保温方法などは厳しく管理され、家庭と同等の時間に提供することが義務付けられています。おおむね食事時間は、朝食7時30分~ 昼食12時~ 夕食18時~に設定している施設が多いようです。また食欲がなかったり、食事を遅らせたい場合にも臨機応変に対応します。
食事は入居者の楽しみの一つなので、季節に応じた行事食、野外での飲食、誕生日の特別食なども提供されます。また、飲み込みの状態によって刻み食、ミキサー食など形態を変更しています。
排せつ介助
排せつは、失禁したことを恥ずかしがり、濡れた下着を隠しているなど、羞恥心を伴うデリケートな行為です。そのため介助の際は、入居者の自尊心を傷つけないように配慮します。立つことができる場合は極力トイレで、寝たきりの場合はベッド上で排せつ介助を行います。尿意や便意のない人には、定時でトイレに誘導したり、排尿感覚を把握するなど、自立支援を目指したおむつを使わないケアが目標とされています。
リハビリ
理学療法士や作業療法士、柔道整復師などを配置して、リハビリテーションに力を入れている施設もありますが、特養の場合は在宅復帰よりも日常生活動作の維持が中心となるため、「自分で食事ができる」「自分でトイレに行ける」など、現在の機能を維持するための生活リハビリが中心になります。また、レクリエーション的な運動も、リハビリの一環として行われています。
生活相談
生活相談員の配置が義務付けられ、生活相談員は社会福祉士か、社会福祉主事任用資格を保持している者が担当します。入居相談、入居者同士のトラブルや、家族とのトラブル、ケア内容の変更要望、クレームや苦情など、様々な相談を受けます。生活相談員が受理した相談は、施設全体の問題として取り上げられ、会議などを開催して改善が図られます。
掃除・クリーニング
居室及び共有スペースは、施設職員(または委託業者)などが定期的に行います。またリネン交換も最低週2回行われ、皮膚状態などが悪い場合は、複数回行われることもあります。洗濯についてはクリーニングなどが必要な場合は実費ですが、それ以外は無料で行います。
買い物
必要な品は、施設職員が代行して購入します。また、売店がある施設や、定期的に商店が移動販売にくることがあります。自分で現金を管理している場合は、各自で支払いを行い、その他の場合は、預り金や立替金で精算します。
レクリエーション
節分や七夕、クリスマスなどの年中行事や、誕生会、ボランティアによるパフォーマンス、ショッピングや動物園や博物館などへ外出をするなど、多彩なレクリエーションを行い、入居者を楽しませてくれます。

費用・料金のしくみ

介護保険制度において特別養護老人ホームにかかる費用は、「施設サービス費」「居住費」「食費」「光熱水費」「日常生活費」で構成されます。有料老人ホームなどにあるような入居一時金は不要です。

「施設サービス費」は介護度によって決定されます。また、「居住費」「食費」は世帯収入や課税状況に応じて負担限度額が決定されるため、多くの方にとって金銭的な負担が少ない施設と言えます。

この他にも社会福祉法人等利用者負担軽減(※)が認められた場合は、介護保険1割負担額、食費、居住費が25%軽減されるなどの優遇を受けることができます。

また、施設のタイプによって入居費用が異なります。

2~4人部屋中心の「従来型」と個室中心の「ユニット型」があり、ユニット型は従来型より3万円程度高い傾向にあります。また、「従来型」にも個室のものがあり、利用する場合には、個室料金が発生します。

これら全てを考慮すると、月額費用は5~13万円程度を目安にされるとよいでしょう。

※社会福祉法人等利用者負担軽減制度は、社会福祉法人等が社会的役割をかんがみ利用者負担の軽減を行うものです。また、この軽減制度を行っていない社会福祉法人等もあります。

特別養護老人ホームでの看取り

これまで入居者の容態が悪くなると医療機関に入院させ、延命治療の末にそこで最期を迎えることが多かったのですが、最近では本人や家族とともに、医師、看護職員、介護職員などが共同して、随時本人や家族に十分な説明をしつつ、同意を得ながら慣れ親しんだ施設で最期を迎える「看取り介護」が主流になりつつあります。

厚生労働大臣が定める基準に適合する入所者について看取り介護を行った場合、施設は報酬として「看取り加算」を請求することができます。

人員基準

特別養護老人ホームの人員基準は、法令により下記のように定められています。配置人員が指定されている職種が、適切に確保されていない場合は、介護報酬を削減されるなどのペナルティを受けることになります。

職種 人員基準
施設長 1名(常勤の者でなければならない)
医師 入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数
生活相談員 入所者の数が百又はその端数を増すごとに1名以上(常勤の者でなければならない)
介護職員及び
看護職員
総数として、常勤換算方式で、入所者の数が3又はその端数を増すごとに1人以上(利用者3人に対して介護職員及び看護職員が1人以上)
栄養士 1人以上
機能訓練指導員 1人以上(当該施設の他の職務に従事することができる)
入所者の日常生活やレク、行事等を通じて行う機能訓練指導については当該施設の生活相談員又は介護職員が兼務可
介護支援専門員
(ケアマネジャー)
1人以上(入所者の数が百又はその端数を増すごとに一を標準)(専らその職務に従事する常勤の者でなければならない)
ただし、入所者の処遇に支障がない場合は、当該施設の他の職務に従事することができる
調理員、事務員
その他の職員
当該特別養護老人ホームの実情に応じた適当数

設備

居室種類

居室は下記の3種類があり、それぞれ居住費やサービスの料金が異なります。

従来型個室
利用者一人につき一部屋が用意される
多床室
個室がなく、一部屋を複数人で利用する
ユニット型個室
一人一部屋の個室に加えて10人程度の生活単位「ユニット」ごとに共同生活室が用意される

居室にはベッド、クローゼットなどが備えられ、個室では洗面台やトイレも設置している場合もあります。テレビなどの家電は自分で用意することが多いですが、備品として設置している施設もあります。理美容については専用の部屋が設けられ、実費で利用することができます。浴室は共有であり、身体の状態によって「一般浴槽」と「機械式の特別浴槽」に分けて週2回ほど入浴します。

現在、多床室や従来型から、1人で過ごす個室と仲間との交流が図れる共同生活室を備えたユニット型への切り替えが進められています。それに伴い、従来型より料金が高くなるため、入居者の負担が大きくなっているという問題も起きています。

なお、ユニットケアが多床室などと比較して料金が高いのは、ケアの質の向上に対する報酬であり、居室のグレードによる料金の違いではありません。

以下よりそれぞれの居室の仕様について詳しく説明します。

ユニット型個室(一人当たりの居室面積基準:10.65㎡以上)
図表:ユニット型個室

一人一室の個室が用意された上で、10人以下をひとつの生活単位(ユニット)とし、ユニット単位で台所・食堂・リビング等の共有スペースが併設されている居室タイプです。共有スペースを囲むように個室が配置されています。集団介護よりも個別性が重視され、固定したスタッフがケアにあたるため、心身の状況を把握しやすく、入居者に安心を与えます。

ユニット型準個室(一人当たりの居室面積基準:10.65㎡以上)
図表:ユニット型準個室

一人一室の個室と、10人以下の生活単位(ユニット)に台所・食堂・リビング等の共有スペースを併設している部分はユニット型個室と変わりません。ただし、個室同士に完全な仕切りがなく、天井との隙間があるパーテーションなどで仕切られています。なお、居室の仕切りは、家具など可動できるものではなく、固定していなくてはいけません。

従来型個室(一人当たりの居室面積基準:10.65㎡以上)
図表:従来型個室

従来通りの運営の仕方の特別養護老人ホームです。多くの施設は個室と4床室が混在しています。

多床室(準ユニットケア加算)(一人当たりの居室面積基準:10.65㎡以上)
図表:多床室(準ユニットケア加算)

従来型の施設において、少数ケアを行うために、おおむね12人以下をひとつの生活単位(ユニット)とし、リビング等の共同生活ルームを設置するなどの改築を行った居室構成です。

多床室(一人当たりの居室面積基準:10.65㎡以上)
図表:多床室

ひとつの部屋に、複数人のベッドやクローゼットなどを配置した居室構成です。家具やカーテンなど、可動なもので仕切られているため、プライバシーが保たれにくいという特徴があります。

広域型特別養護老人ホームと地域密着型特別養護老人ホームの違い

地域密着型特別養護老人ホームとは、介護保険法改正に伴い2006年に新設された地域密着型サービスの一つです。入居定員が29名以下の小規模な施設で、原則として施設がある市町村に居住する人だけに利用が限定しています。サービスの内容は、従来の特別養護老人ホームと同じで、地域密着型サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話が行われます。敷地は小規模で済みますので、住宅街などに建設しやすく、地域とのつながりを維持しやすいという特徴があります。

広域型特別養護老人ホームは従来の入居定員29名以上の特養で、入居要件は設置する市町村に限定せず、どこの居住者でも可能です。つまり地域密着型特別養護老人ホームに対して便宜上区別するために、広域型特別養護老人ホームの名称を用いていると考えてよいでしょう。

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