【表で比較】特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームの違い

特別養護老人ホーム(以下、特養)と有料老人ホーム、どちらも高齢者のための介護施設ですが、特養は社会福祉法人や自治体が運営する「公的施設」であるのに対し、有料老人ホームは主に民間企業が運営する「民間施設」です。

この運営主体の違いが、両者の施設としての性格の違いを形作っており、双方にメリットやデメリットが存在します。

両者の違いを知り、条件に合った施設探しにお役立てください。

多様なサービスが特長の有料老人ホーム、福祉の性格が強い特養

前述したとおり特養は「公的施設」のため、社会福祉の観点から、介護度の重い方や低所得者の保護と支援に重点を置いています。

一方の有料老人ホームは「民間施設」のため、経営の観点から高齢者のニーズを満たすことに重点が置かれ、多種多様なサービスを提供しています。そのため、入居できる条件や、費用、居室やサービス内容が異なります。

以下は、6つのポイントから両者を比較した表です。

有料老人ホーム 特別養護老人ホーム
入居条件 自立・要支援1~要介護5 (原則)要介護3以上
費用 入居一時金:0~数千万円
月額費用:15~40万円

※施設により異なる

入居一時金:0円
月額費用:8~13万円
居室タイプ 個室 個室/多床室
居室面積 13㎡以上(介護付き有料老人ホームの場合) 10.65㎡以上
入居者と介護スタッフの比率 3:1以上(介護付き有料老人ホームの場合) 3:1以上
入居難易度 特養と比べると待機者は少なく比較的入居しやすい。 入居待機者が多く数ヶ月以上待つ場合がある。
有料老人ホームについて詳しく見る 特別養護老人ホームについて詳しく見る

ひとつひとつの違いを順に解説します。

入居条件

特別養護老人ホームは、やはり重介護者の保護に重きが置かれているため、65歳以上で原則的に要介護度が3~5であることが入所条件となっています。

例えば、要介護3を身体状態でいうと、「自分で立ち上がりや歩行ができない。また、排せつや入浴、着替えについて全面的な介助が必要な状態」を指します。

一方、有料老人ホームの場合、施設により入居要件は異なります。

入居年齢は60歳以上もしくは65歳以上としているところが一般的で、身体状態は問わず、元気な方(介護認定非該当)から入居できる施設もあれば、「要支援1以上」もしくは「要介護1以上」と身体状態の要件を設けているところもあります。

また、身の回りのことが自分でできる方は「健康型有料老人ホーム」等、自立者向けの有料老人ホームもありますので入居条件については各施設へ確認するとよいでしょう。

健康型有料老人ホームについて詳しく見る

入居金や月額費用

特養は、運営している社会福祉法人などへ国からの助成金や、税金面での優遇があるため、入居者の費用負担が安いことが最大の魅力です。

まとまった入居一時金等は不要で、月額費用のみで生活することができます。

月額費用の目安は、「家賃、食費、介護保険の自己負担分(所得に応じて1割~3割)」を含め、4人程度の相部屋(多床室)で毎月9万円程度。個室で13万円程度です。

実際の費用は、居室のタイプ(個室/多床室)、や介護度によって異なります。

さらに、所得段階に応じて「食事」と「住居費」の負担軽減があり、低所得者の場合は上記金額から3万5千円~6万円ほど安くなる場合があります。

一方、有料老人ホームは、入居一時金は不要(0円)のところから数千万円かかるところもあり、施設によってさまざまです。

月額費用は、「家賃、食費、介護保険の自己負担(所得に応じて1割~3割)」を含め、15~40万円程度と幅広く、施設の設備や居室面積、提供するサービス内容、施設の立地等により金額設定は大きく異なります。

有料老人ホームのなかでも特養並みに安く料金を設定しているところもあるので、一概に「特養は安く、有料老人ホームは高い」と言い切れません。

しかし、特養は全国どこでも比較的低額で入居できるのに対し、有料老人ホームは施設により費用の設定がさまざま、ということが最大の違いといえるでしょう。

居室の広さと設備

特養の居室タイプは、大きく分類すると個室と多床室(※複数人で使用する大部屋のこと)があり、多床室の定員は2~4名までとなっています。

プライバシーの観点から、国の方針で個室化が進んでいるものの、まだ、特養全体の3割程度が相部屋(多床室)です。

そして、1人あたりの居室面積基準は10.65㎡以上という法律上の決まりがあります。居室内に洗面台やトイレはなく、居室と同フロアにある共同設備を利用するところが多いようです。

有料老人ホームの居室のタイプは、一人用の個室が主流で、居室面積基準は13㎡以上(介護付き有料老人ホームの場合)と、特養よりも少し広めです。

近年は18㎡が主流となり、居室内には洗面台とトイレが設置され、25㎡程度になるとミニキッチンや入浴設備が付いているところもあります。

さらに、1LDKや2DKなどのマンションタイプになると、30㎡程度から90㎡以上のところもあり、居室の広さや設備は施設によりさまざまです。

サービス内容

特養では、入浴・排泄・食事などの介護、日常生活の介助、機能訓練、健康管理、療養上の世話を行いますが、生活支援と介護サービスが中心で、リハビリや看護・医療ケアに関しては積極的ではない施設もあります。

有料老人ホームの場合、食事の提供、入浴・排せつなどの介護、洗濯・掃除などの家事支援や健康管理などに加え、入居者の快適性を重視し、より充実したサービスを提供する施設もあります。

例えば、「食事のこだわりを売りにするところ」や、「リハビリテーションに力を入れるところ」、「24時間看護師が常駐するところ」、「日中は施設内クリニックに医師が常駐し、夜間でも何かあれば医師がすぐ駆けつける体制を整えているところ」などさまざまです。

特養も有料老人ホーム(介護付き有料老人ホームの場合)も、最低でも「入居者3人に対し1人の介護スタッフを配置する」という点は同じですが、有料老人ホームでは、それ以上の人数の介護スタッフを配置し、「手厚い介護体制」を売りにしているところもあります。

終の棲家となる施設かどうかは、介護だけでなく看護師や医師との医療連携、体制が整っているかが重要なポイントになります。サービス内容については、しっかり確認しておきましょう。

まとめ

特養と有料老人ホームを比較してみましたが、違いがお分かりいただけましたでしょうか。

「公的施設」である特養は、一定の生活支援や介護サービスを低価格で提供してくれますが、「入居待機者が多い」「原則要介護3以上が対象」と入居条件が厳しいため、入りたくてもすぐに入れない可能性があります。

そのため、特養の入居が決まるまでの一時的な住み替え先を探しておくことも大切です。

一方、「民間施設」である有料老人ホームは、軽度の介護状態やお元気な方でも入居できる施設があり、ある程度好きなタイミングで住み替えが可能です。

また、特養と比較すると費用は高めですが、希望に沿う充実したサービスを選べる点では、快適かつ満足度の高い施設を選ぶことができるといえるでしょう。

ただし、有料老人ホームでも人気のところは入居待ちになっている施設もあります。特養、有料老人ホームともに居室が空くのは、入所者の転居や長期入院、ご逝去などの場合に限られ、どれだけ待つかということの想定は難しいでしょう。

特養、有料老人ホーム問わず住み替えてから、「こんなはずでは無かったのに」と後悔しないように事前準備が大切です。

予算、住み替えのタイミング、入居先に求める条件などを具体化し、気になる施設については、資料を取り寄せ数ヶ所見学に行くなどして比較し、自分の目や耳でしっかり確かめておきましょう。

特養や、届け出のある有料老人ホームは、市区町村のホームページにも掲載されています。また、入居についての相談は市町村の窓口や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーにしてみるのもいいでしょう。

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イラスト:安里 南美

この記事の制作者

森 裕司

監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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