- 質問
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同居する義母が転倒して足を骨折しました。車イスが必要になる可能性があり、要介護状態になりそうです。
予期せぬ介護のために、介護離職をしなくてもよい方法を教えてください。(50代・正社員)
- 回答
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介護サービスを活用し、様々なサポートを受けることで仕事と介護の両立をすることができます。まずは、介護認定を受けることから始めてみましょう。
このページでは、介護離職をした場合のデメリットと離職しないために知っておきたい情報や制度、困ったときの相談相手や選択肢をご紹介します。
活用できる制度やサービスを知って、仕事と介護の両立にお役立てください。
介護離職のデメリット
まず、介護離職をした場合のデメリットについて考えてみましょう。
●キャリアの分断・喪失
これまで仕事で積み上げてきたキャリアが離職により分断されてしまいます。変化の早い現代では、復職時にそれまでのキャリアが通用しない可能性もあります。
●ライフプランの不確実性、将来への不安増大
自分の生活がどうなるのか、将来が見えないことから不安が広がります。
将来への不安やストレスからくるメンタル疾患発症の可能性。そして、家族の介護につきっきりになることによるストレスから、鬱病などのメンタル疾患にかかるケースも少なくありません。
●収入源の喪失
仕事を辞めることで収入は無くなります。一時的に親の年金などで生活費を賄うことはできるかもしれませんが、介護が終わった時の年齢を考えると再就職へのハードルが上がる可能性が大きくなります。
介護は情報戦|離職しないため制度を知る
事前の情報収集で介護離職に備える
●介護に関する情報収集を行う
介護に直面した時に、どこまで想定できていたかで、かかるストレスも違います。仕事との両立の事例なども知っておきましょう。
●介護保険制度を理解しておく
介護離職をしないためには介護保険制度のフル活用は欠かせません。内容をしっかり理解しておきましょう。
●いざという時の相談窓口を把握しておく
介護に直面した時は、まずは専門家に相談することが早期解決への道です。各地域の介護の相談窓口となるのが、専門職が常駐する地域包括支援センターです。場所や連絡先を把握しておきましょう。
●会社の支援制度を理解しておく
企業には育児・介護休業法に基づく制度があり、独自の制度を制定しているところもあります。内容を理解し、有効に活用しましょう。
●家族や兄弟と親の介護について話し合っておく
いざ介護に直面すると、家族間で介護の方法やお金の使い方で意見が合わず、関係に亀裂が生じることも。できれば、まだ親が元気なうちから介護について話し合っておきましょう。
>トラブルにならないために│兄弟姉妹における親の介護の役割分担を
早い段階で相談し解決策を探る
2017年3月に公表された調査結果によると、介護離職者は離職前の相談状況について「誰にも相談しなかった」と回答している者が47.8%と半数近くにのぼっています。
介護を理由に転職した人も「誰にも相談しなかった」が31.4%で、介護保険サービスなどを利用して両立できる術があることを知らずに転職・離職を選択している人が少なからずいるのではないかと予想されています。
介護に直面したら、自分が何とかしなければと思い込まず、まずは各方面に相談しましょう。SOSを出すことで、仕事と両立できる方法が見つかる可能性が広がります。
●役所や地域包括支援センターに相談する
介護申請や介護保険サービスについての説明、独居高齢者の見守りなど、心配事に対する解決方法を提示してくれます。特に地域包括支援センターは地域の介護相談窓口として設置されており、ケアマネジャー・看護師・社会福祉士と専門職が常駐し、さまざまなケースを扱っています。
●ケアマネジャーに相談する
介護保険サービスを導入する場合は、要介護認定の申請を行い、その後担当のケアマネジャーがつきます。ケアマネジャーは介護のプロ。質問者様の就業状況や悩みを伝え、仕事との両立が可能なケアプランを作ってもらいましょう。
●職場に相談する
まずは上司に状況を報告・相談し、職場での協力体制構築を依頼しましょう。人事担当者にも相談し、仕事と介護の両立のためにどういった支援制度があるかを確認します。
●家族・兄弟・親族に相談する
「介護に協力してほしい」「一緒に考えてほしい」ということをはっきり意思表示しましょう。SOSをしっかり出すと助けてくれる人が現れるものです。
在宅介護サービスを利用する
仕事との両立を図るためには、介護保険サービス・介護保険外サービスをフル活用することが不可欠です。ケアマネジャーとよく相談し、被介護者本人と介護者の仕事の状況を踏まえたケアプランを立ててもらいましょう。
また、長丁場となる介護生活を踏まえて、しっかり介護者の休息が取れるプランを立てることも重要なポイントです。
老人ホーム・介護施設を検討する
老人ホームや介護施設に入居できれば、仕事との両立は現実的なものになります。
また、介護度が重くなり在宅介護の限界を感じた時には、あくまでも介護離職はせず老人ホーム入居を検討しましょう。
要介護3以上であれば、とりあえず特別養護老人ホームの申し込みをしておくことをお勧めします。待機者が多いことで有名ですが、地域やタイミングによって早期に入居できるケースもあります。
有料老人ホームについては費用や内容がさまざまですので、まずは情報収集をして把握しておくことが大切です。
有料老人ホームはこちらからも検索ができます。
国の支援制度・介護休業法
育児・介護休業法
仕事と介護の両立を支援する法律として「育児・介護休業法」 があります。この法律では、介護を行う従業員が介護休業などを取得する権利を定め、従業員が介護を行いやすくするため事業主に短時間勤務制度などの措置を講じるよう義務付けています。
就業規則に制度がなくても、介護休業、介護休暇、法定時間外労働・ 深夜業の制限の制度は申し出により利用でき、それを妨げることはできません。(勤務先の規定によっては、 勤続年数などで取得できない場合があります)。
平成29年1月には、介護休業の分割取得や介護休暇の取得単位の柔軟化など、仕事と介護の両立が図りやすい内容に改正されています。
<対象>
勤務先の業種や規模に関わらず、原則として要介護状態(※1)の家族(※2)を介護する従業員
※1要介護状態=負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態。介護保険制度の要介護・要支援認定を受けていない場合も取得可能。
※2対象家族の範囲:配偶者(事実婚を含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫
企業の支援制度
上記のデメリットでも挙げたように、中核を担う人材の流出、それに伴う売り上げ・利益の減少、残った社員の業務量増大、労災リスク増大など、介護離職は企業にとってもダメージが大きく、深刻な問題となっています。
それに対して、独自の制度を設けるなど介護離職防止策を講じる企業も増えています。
まとめ
介護離職という選択を取った人で、退職前に「誰にも相談しなかった」と答えた人が47.8%と半数近くにのぼりました。
介護と両立する術があることを知らずに仕事を辞めてしまった人が多いと推測されていますが、それは大変残念なことです。
また、仕事と介護の両立支援制度がありながらその利用率は低迷しており、制度の使い勝手が悪いという声を聞く一方で、そもそも存在を知らなかったということも聞きます。
さらに、在宅介護サービスは支給限度額の6割程度しか使われていないというデータもあります。
それらを考え合わせると、実はまだいろんな制度を使い切っていないことがわかります。
仕事と介護の両立の実現は、その余力の部分をどう使うかにかかっているとも言えるでしょう。