- 質問
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地方に住む母(要介護2・独居)を呼び寄せて、私の住む東京で同居介護をしたいと考えています。
引っ越しをしたら要介護認定を受けなおす必要はありますか?また、今までと同じ内容の介護サービスを受けることはできますか?
- 回答
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介護保険は市区町村が保険者になるため、原則として市区町村を越えて転居した場合は「再認定」を受ける必要があります。転居先では14日以内に手続きをすることで切れ目なく介護サービスを受けることができます。
ここでは、転居しても要介護認定を引き継ぐ方法や転居によって変更になってしまうことを解説します。転居先でも介護サービスをスムーズに利用するために、ぜひお役立てください。
- 【目次】
介護保険は市区町村が保険者になるため、介護度の審査は市区町村が行ないます。従って、原則的には市区町村を超えて転居した場合は、再認定を受ける必要があります(在宅介護の場合)。
しかし、一定期間以内に手続きをすることにより、切れ目なく介護サービスを受けられます。詳しく見ていきましょう。
要介護認定は引っ越し先でも引き継げる?
要介護認定を受けている人は、引っ越し先でも要介護認定を引き継げます。転出の手続きの際に介護保険の「受給資格証明書」を受け取り、転入先の自治体に14日以内に提出し転入手続きをます。これによって要介護状態区分を引き継ぐことができます。
14日を過ぎると、介護認定を新たに受けなければならないので、判定内容が同じにならない可能性もありますし、認定が出るまで1、2か月は全額自己負担で介護サービスを受けることになります。必ず14日以内に手続きをしてください。
介護保険被保険者証は住所変更が必要
ご質問者さんの場合、ご自宅に引き取るので、お母様は住民票を移して都民になります。
転出の手続きとして、住民票の転出手続きをすると同時に、介護保険担当部署でも「介護保険被保険者証」を持参し、転出の手続きをします。要介護認定を受けている方は、この手続きの際に「受給資格証明書」をもらいます。
転入先の手続きは、住民票の転入手続きをすると同時に、介護保険担当部署で転入の手続きをします。その際に転出先からもらった「受給資格証明書」を持参します。そして新しい「介護保険被保険者証」を発行してもらいます。
今回は同居されるので、同じ世帯のお子さんでも手続きできます。この他に、国民健康保険や後期高齢者医療制度の公的医療保険についても同様に手続きをします。
「住所地特例対象施設」に入居する場合は手続きが異なる
もし、ご自宅ではなく都内の住所地特例対象施設(*)に入居する場合、介護保険の「住所地特例」となり、今までの自治体の介護保険に加入したまま、施設に入居することになります。
この場合は転出の際に介護施設に入居することを伝え、介護保険の「住所地特例適用届」を提出します。詳しくは自治体の窓口で相談してください。
(*)「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「有料老人ホーム」「軽費老人ホーム」「養護老人ホーム」「サービス付き高齢者住宅」など
ケアマネジャーやケアプランも変わる
自治体が変わると、ケアマネジャーも変わります。これまでのケアマネジャーに引継ぎ書類を作ってもらい、新しいケアマネジャーに渡し、ケアプランを作成してもらうことになります。
ケアマネジャーは自治体の福祉課や地域包括支援センターで紹介してもらえます。早めにケアマネジャーと何人か面談して、相性や得意分野などを判断して決めておくとスムーズです。
もちろんお母様が信頼して相談できる方が良いので、良い方に巡り合うまで、何人か変更することも可能です。この時、今までのケアプランを踏襲してもらいたければ、そのように希望し、ケアプランを作成してもらいましょう。
ただし、以前受けていたサービスと同じサービスが転居先で無い場合もあります。
受けていたサービスが転居先にない場合は?地域密着型の介護サービスについて
地域密着型の介護保険サービスは、その地域に暮らす人だけが受けられるサービスです。
したがって、転出すると同じサービスは受けられません。地域密着型サービスを受けていた場合は、同じようなサービスが転出先にあるかを確認しましょう。
例えば、夜間対応型訪問介護(夜間帯に定期的に訪問、排泄の介助や安否確認などを行う)や24時間対応の訪問看護などはサービスを行っていなかったり、サービス事業者が少なかったりして地域により違いがあります。
新潟県では今のところ長岡市だけしか行っていませんが、東京都では23区中10区とそれ以外の28地域中8市で行われています。新潟から東京に転居する場合は、受けられるサービスが増える可能性があります。
地域密着型サービスは、基本的に3か月以上居住している方が対象となっているため、転居してすぐ受けられない場合もありますのでご注意ください。
しかし、近年はこの要件が見直され転居後すぐに地域密着型サービスを受けられる自治体もあります。転居先の自治体に確認してみましょう。
自治体独自のサービスにも違いが
介護保険サービスとは別に、自治体独自で行っているサービスもあります。こちらも、自治体をまたいでサービスを受けることはできませんので、確認が必要です。
東京に引き取る場合、お住いの市区町村のサービスをあらかじめよく調べておくとよいでしょう。例えば、新潟県新潟市と東京都豊島区で自治体独自のサービスを比べてみます。
自治体独自に行っているサービス
新潟市 | 豊島区 |
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・紙おむつの支給 ・寝具の洗濯、乾燥サービス ・介護サービス利用支援給付 ・訪問理美容サービス |
・高齢者紙おむつ等支給 ・高齢者おむつ購入費等助成 ・寝具の洗濯、乾燥サービス ・出張理美容サービス ・配食サービス ・福祉電話の貸出し ・火災安全機器の設置給付 ・自立支援住宅改修助成(設備改修助成) ・自立支援住宅改修助成(予防的助成) ・緊急通報システム ・徘徊者位置情報サービス利用料助成 ・車椅子短期貸出し |
※上記サービス内容は2018年1月時点の情報です。
今まで受けていたサービスが引っ越し先にない場合は、ケアマネジャーと相談しながら新しいサービスを少しずつ取り入れていくのもひとつの手です。試しにさまざまなサービスを利用してみて、慣れたら増やしていくとお母さまへの負担も少ないでしょう。
まとめ
新潟県で一人暮らしをしていたお母様としては、慣れない環境の土地に移り住むのは、いかに息子の家といえども、不安だと思います。
ご家族も勝手が違ってしばらくは戸惑うこともあるでしょうが、なるべく早く家族に溶け込めるように接してあげることが大切です。
転居の際の一番の相談先は、自治体の高齢者担当部署や地域包括支援センター、現在関わっているケアマネジャーです。不安なことがあれば相談してみましょう。
また、転居に伴う手続きをするには、お母さまの住まいが新潟と離れていますので休暇を取ることになります。
介護サービスを転居先でも引き続きスムーズに利用するためには、事前に必要な書類や、手続きの期間などをしっかり確認してお母さまの転居計画を立てることをおすすめします。
イラスト:安里 南美