質問

認知症の母がおります。ここのところ何度も同じことを話したり、一人で外出しては道に迷ってしまうため、介護サービスを利用しようと思い介護認定を受けました。ところが、認定調査員の方がいらっしゃると母はいつもよりしっかりとした言動を行い、想定していたよりも介護度が軽く認定されました。介護認定のやり直しは可能ですか?また、実態に合った介護度の判定を受けるには、どうすればよいのでしょうか?

回答
浅井 郁子

介護サービスを必要としているのに、家族の予想よりも軽い介護度の判定が出たという話はよく耳にします。
ここでは、そうなってしまう原因と、介護認定の判定に不服なときはどうすればよいかを解説します。さらに、短い時間の中で実態を正確に伝えられる認定調査の受け方を解説します。 浅井 郁子(介護・福祉ライター)

【目次】
  1. 要介護認定はどのように判定される?
  2. 介護認定の判定に不服なときは?
  3. なぜ起きる?家族の認識と判定結果の食い違い
  4. 要介護認定の判定が厳しくなっている背景も
  5. 認定調査員に正確に普段の様子を伝えるためには?
  6. 普段の様子を的確に伝えるための準備
  7. 医師の意見書を正確に書いてもらうためには
  8. 認知症の人の認定調査で気を付けること
  9. まとめ

要介護認定はどのように判定される?

要介護認定とは、どの程度介護が必要な状態にあるかを決めるものです。

認定は全国一律の基準を用いて行われており、認定調査員による訪問調査と主治医の意見書を基に介護認定審査会での審査を経て決められます。

重要なのは、最初に行われる認定調査員による訪問調査です。この調査は介護を必要とする本人と家族などへの聞き取り形式で行われます。

身体機能、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応、特別な医療といった幅広い分野から全部で74項目の質問がなされ、本人の動作や理解度が確認されます。ときには調査員から「歩いてみてください」とか「足を上げてみてください」などと実際に行動が促されることもあります。

質問の答えは選択肢の中から選ばれますが、調査員はその答えの根拠や聞き取りをしている際に重要と判断した事柄を「特記事項」に記入します。

そして訪問調査の結果をコンピュータに入力して算出されたデータと、「特記事項」主治医の意見書の3つを基に、保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が総合的に判断して申請者の介護度を判定しています。

介護認定の判定に不服なときは?

上記のような調査を経て決められた認定結果であっても、質問者のように納得できない場合が出てきます。そのときは、市区町村の介護保険課認定審査係に行って認定結果の理由の確認と相談をしてみましょう。

説明を受けても納得できない場合、都道府県に設置されている「介護保険審査会」への「審査請求」をすすめられるでしょう。

これは下された要介護認定を取り消してもらうための申し立てですが、取り消しの判定が出るまでに数カ月かかりますし、取り消されたとしても、結局、また最初から介護申請をすることになります。

早く介護サービスを使いたい人にはあまり現実的な方法とは言えないでしょう。

そこで、要介護認定の「区分変更の申請」ができることを相談の場で教えてくれる市区町村もあるようです。もし窓口で教えられなくても、不服がある場合はこちらを活用するのが現実的でしょう。

再調査を依頼してみる

「区分変更の申請」は、認定調査を再度行い、再度介護認定審査会で判定をしてもらうもので、本来は認定の有効期間中に本人の状態などに変化があった際に行うものですが、認定結果を不服とする利用者にも用いられています。

「区分変更の申請」を行いたいときは、ケアマネジャーもしくは地域包括支援センターに相談してください。

なぜ起きる?家族の認識と判定結果の食い違い

そもそも家族の予想よりも低い介護度の判定が出てしまうのはなぜでしょう?

その原因の多くは、本人の症状と必要な介護の手間、家族の介護力や生活環境などの情報が正確に調査員に伝わらなかったためです。

認定調査の所要時間は通常30分~1時間程度です。その短い間にたくさんある質問項目のうち、本人に深くかかわる項目について実態が伝わらないと、正確な結果につながりません。

特に認知症の人の場合は、認知症の種類や症状によっては調査員が短時間で実態を見極められないことがあります。また、「主治医の意見書」に必要な認知症の情報が正しく記載されていなかった場合も、正確な判定結果につながらないことがあります。

要介護認定の判定が厳しくなっている背景も

ただし、認定調査がきちんと行われていても、最近では家族の予想よりも低い介護度になるケースが多くあると言われています。

その要因として、増え続ける高齢者に対して介護保険の費用を抑制するため、市区町村における判定基準自体が厳しくなっていることが挙げられます。

国は要介護の重度化防止につながる取り組みを一層推進しようと「身体機能の回復実績など、効果のある『自立支援を促す取り組み』を高く評価する」という策を打ち出しています。

例えば、要介護者がリハビリなどの自立支援で成果を上げて介護度が下がったら、国はその市区町村を評価し、介護サービス事業者に報酬を支払うという改正案が進められているのです。

要介護の重度化を防いだり、改善を目指したりする自立支援は好ましいことですが、そのために市区町村における介護認定の判定がより厳しくなるのではないかと懸念もされています。

認定調査員に正確に普段の様子を伝えるためには?

実態に合った介護認定を出してもらうには、認定調査できちんと実情が伝わることと、主治医の意見書にきちんと実情が書かれていることが大切です。そこで、家族ができることを解説します。

認定調査の際に、高齢者は緊張してよく見せようとするため、普段できないことでも「できる」と答えたり、普段できない動作をがんばり、結果としてできてしまったりすることが往々にしてあります。

認定調査は、調査時の状況よりも普段の状況を確認して評価するものです。普段のありのままを伝えることが最も大事ですので、家族や普段の本人の実情をよく知る人が必ず同席するようにしましょう。

普段の様子を的確に伝えるための準備

限られた時間内で実情を的確に伝えるには、全国一律の基本調査項目をあらかじめチェックして答えを検討しておくとよいでしょう。

調査項目についての参考はこちら→「要介護認定の申請方法」

例えば、本人がひとりでできることも以前より時間がかかっているとか、ひとりでトイレには行けるが手すりがないと立ち上がれないなどのように、具体的に答えることが大事です。そのためには、答えの根拠となる原因や介助方法をあらかじめメモにしておくとよいでしょう。

メモには以下の項目も整理しておきましょう。

・現在の病状と通院の有無、

・既往歴、

・必要な介助の状態、

・認知症の症状による行動、日によって変動があればその様子、

・本人と家族それぞれが現在困っていること、

・入院やけがなど大きな出来事「いつ、どのようなことがあったのか」

そして、これらの情報を「10年前にリウマチを発症してから膝が曲がらなくなった」とか、「2年位前から認知症の症状が見受けられるようになった」のように「介護を必要とするまでのいきさつ」として時系列にすると、説明しやすいですし、調査員にも伝わりやすいと思います。

また、家族の介護力についても忘れずに伝えましょう。フルタイムで働いている、子育てをしている、などのために実際に介護に割ける時間がどれくらいあるかを具体的に伝えます。

医師の意見書を正確に書いてもらうためには

「主治医の意見書」は、調査員の調査結果と照らし合わせて検討される貴重な判断材料です。全国一律の様式が用いられており、心身の障害の原因となる疾病、心身の状態や生活するうえでの機能や特記事項などが記されます。

この意見書を書いてもらう主治医は、普段から本人の状態をよく知る「かかりつけ医」が適任です。

かかりつけ医には、本人の病状だけでなく日常生活における自立度や認知症による症状、精神や神経に関することなども含めて総合的な状態を日頃から把握してもらうようにしましょう。

そのためにも、本人や家族が他にかかっている医者や病院での診療情報をかかりつけ医に伝えて一元化しておく必要があります。

認知症の人の認定調査で気を付けること

認知症の人の認定調査では、特に実態がうまく伝わらなかったことで介護度が軽めに判定されるケースがあります。その原因の一つは、認知症の人のなかには改まった状況になると比較的きちんと対応できてしまう人がいることと、日によって様子が大きく違う人が多いことです。

また、認知症の症状は人それぞれに個性があるため、短い調査時間では普段の状態が正確に伝わりにくいことで実態と合わない判定が出てしまうことがあるのです。

そこで、認知症がある場合は家族が本人の普段の様子と介護の手間を正確に伝えることが特に大事になります。

道に迷う、買い物で支払いがうまくできないなど、暮らしの中で起こっている本人のミスと介護者が困っていることを、実例を挙げて説明するようにしましょう。また、介護が必要な時間帯が日中が中心なのか、それとも夜間中心なのかも伝えるようにします。

なお、家族が本人の前で調査員に話すことで本人のプライドが傷ついてしまうことがあります。言いにくいことがある時は、その旨を事前に調査員に伝えておいて、後でメモにして渡すなどの配慮をするようにしましょう。

まとめ

「主治医意見書」と「特記事項」が左右するのだとか、やはり調査員の調査結果でほぼ決まるらしいなどと、介護認定にまつわる噂はいろいろ聞かれます。

しかし、妥当な介護度を出してもらうには、普段のありのままを伝えることと、そのために準備をすることが最も重要です。

調査員の質問に答えるときは、本人の様子も介護の状況も、実際よりも控えめに言わず、逆に実際よりもオーバーに言わず、正直に伝えるよう心がけましょう。それが一番納得できる判定が出る方法だと思います。

このQ&Aに回答した人

浅井 郁子
浅井 郁子(介護・福祉ライター)

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。
高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。
東京都民生児童委員
小規模多機能型施設運営推進委員
ホームヘルパー2級